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神々しく美しいサーキットマシン パガーニ・ウアイラ Rへ試乗 850psの新NA V12

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神々しく美しいサーキットマシン パガーニ・ウアイラ Rへ試乗 850psの新NA V12

サーキット専用の美しいハイパーカー

イタリアのパガーニが新たに発表したウアイラ Rは、世界で最も崇高で、最も非実用的なモデルの1台といっても過言ではないだろう。そのお値段も驚くほどだが。

【画像】神々しいサーキットマシン パガーニ・ウアイラ R ヴァルキリーほか競合モデルも 全131枚

イタリア北東部の小さな町から生み出されるハイパーカーは、普段使いしやすいわけではないものの、少なくとも一般道を走ることができた。相応の勇気があれば。だがウアイラ Rは、閉ざされた私有地かサーキット以外を走ることはできない。

それでいて、芸術作品のように神々しく美しい。安全が確保された走行可能な場所であっても、限界まで攻める気にはなれないほど魅惑的だ。

筆者がフィアット・パンダのレンタカーでローマ郊外の空港からヴァレルンガ・サーキットへ近づくと、まったく異なる世界感が待っていた。鼓膜を激しく震わせる、古いF1マシンのような咆哮が周囲を満たしていた。

グランドスタンドやコントロールタワーに、V型12気筒エンジンのノイズがこだまする。1995年のグランプリマシン、フェラーリ412 T2がクオリファイ走行へ挑んでいるかのようだった。

ピットレーンへ出ると、パガーニ・ウアイラ Rが走行していた。桁外れのボリュームは、世界中のサーキットで許される数値を超えているという。静かなエグゾースト・システムも選べるようだが、今回のデモ車両にはストレートパイプが組まれている。

サーキット側も、今回は直管マフラーを許可したという。なんともイタリアらしい。

自然吸気6.0L V12エンジンは850psを発揮

モデル名はウアイラを名乗っているが、公道用モデルと共通する部分は殆どない。フォルムは似ているが、共有部品はドアミラーだけとのこと。

基礎骨格をなすカーボンファイバー製フレームは、FIA(国際自動車連盟)の安全基準を満たした新開発。とはいえ、ファクトリーチームでレースに参戦する予定はない。

6.0L V型12気筒エンジンを組み上げたのは、ドイツのHWA社。メルセデスAMGによるフォーミュラEのチーム運営に関わるほか、レーシングマシンも開発している。メルセデス・ベンツが買収しなかった、サーキット専門部隊だ。

パガーニを創業したオラチオ・パガーニ氏は、重量削減とレスポンス向上のために、通常のウアイラが搭載するV12ツインターボからの変更を希望したという。自然吸気となった新ユニットの最高出力は850psで、レブリミットは9000rpmに設定された。

ヒューランド社が製造する6速シーケンシャル・マニュアルを介して、後輪が駆動される。車重は乾燥状態で1050kg。燃料と必要なオイルを加え、ドライバーが座った状態では約1200kgと考えて良いだろう。

デザイナーでもあるオラチオは、プロダクトへのこだわりが強い。細部まで高水準に作り込まれ、小さな部品1つとっても工芸品のよう。削り出されたサスペンション・アームや、ヘッドにパガーニの刻印が入るボルトまで美しい。

繊細なカーボンファイバーの織り目が露出した、ボディのクリア仕上げはオプション。ステアリングホイールは、飛行機の操縦桿のようなヨークタイプが組まれていた。

レーシングカーより運転体験はフレンドリー

ウアイラ Rに内蔵されたエアジャッキの圧力が落とされ、ドライバーズシートに腰を掛ける。V12エンジンが始動し、一気に緊張感が高まる。

ウアイラ Rはサーキット専用マシンだが、レーシングカーとは異なる。プロドライバーがまくしたてるマシンより、われわれが近づきやすい性格付けが与えられている。ドライビング体験は、比べればフレンドリーなものだった。

エンストを防ぐアンチストール機能と電子制御クラッチが内蔵され、発進は思いのほか簡単。ピットレーンの出口を過ぎ、V12エンジンへ送るガソリンの量を増やすと、全身へ伝わる感覚が増大する。過大なほど。

高らかに響き渡るエグゾーストノートは、聴き応えがあるものの、ヘルメットをかぶっていてもうるさい。動力性能は想像したとおり甚大。圧倒されそうになる。

スリックタイヤが徐々に温まり、グリップ力が増す。アンチロックブレーキとトラクション・コントロールの有能ぶりを確認し、安心感が少し湧く。

ウアイラ Rは息を呑むほど速いが、GTマシンほどアグレッシブではない。筆者は偶然にもランボルギーニ・ウラカン・トロフェオ・エボを同じサーキットで以前に運転しているが、サスペンションはよりハードだったと記憶している。

こちらの方がソリッドで、ターンイン時のマナーも落ち着いている。ドライバーのミスも多少は許してくれる。コーナー内側の縁石へ乗り上げても、歯を食いしばる必要はない。舗装の古いサーキットでも楽しめそうだ。

サーキットの主役になる超大作

速度の上昇とともに、巨大なウイングとディフューザーの効果が表れ出す。ダウンフォースを最大に設定すれば、320km/h時に1000kgの力を生成するらしい。

サーキットでウアイラ Rの真の速さを体験するには、相応の筋力や体力も求められる。加減速や旋回時に発生するGは、相当なものだからだ。

オプション抜きで約230万2000ポンド(約3億6831万円)を支払えるオーナーが、そんな身体能力を備えているのか、余計かもしれないが心配してしまう。筆者は5周目で首が痛くなった。もちろん、ウアイラ Rは平然とした様子だった。

カーボンセラミック・ブレーキのタッチもまったく不変。強力な制動力を発揮し続けていた。

オラチオは、公道用のウアイラとは根本的に異なるウアイラ Rが高い評価を得られるか、確信を持てなかったという。だが、そんな心配は無用だったらしい。予定の30台は完売している。沢山のオプションとともに。

ウアイラ Rの1台分のコストで、本物のレーシングカーを用意して数シーズンはレースに出られる。しかし、この価値はそれ以上というべきか、別のところにある。

サーキットを攻めるだけのマシンではない。見る人の心を震わせる、孤高のハイパーカーだ。ピットレーンでは、多くの眼差しが向けられるに違いない。

本物を目にするチャンスが得られそうなら、ぜひ時間を割いて直接感じて欲しい。魅了されるフォルムや、荘厳なサウンドを。サーキットの主役になる超大作だ。

パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用)のスペック

英国価格:約230万2000ポンド(約3億6831万円)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:321km/h
0-100km/h加速:3.0秒以下
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1050kg
パワートレイン:V型12気筒5998cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:850ps/8250rpm
最大トルク:75.9kg-m/5500rpm
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル

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