WRXの別格感が強まり一括りにすることが難しくなった
現在、「インプレッサ」と「WRX」はそれぞれ独立した別のクルマとして販売されているが、現行型WRXのことを「インプレッサ」あるいは「インプ」と呼ぶ人はいまも多い。WRXはデビューしてから18年間も「インプレッサWRX」として販売されていたから、車名がわかれてからも「WRX=インプレッサ」と認識し続ける人が多いのは当然だろう。
「WRX」から「インプレッサ」の名がなくなったのは、2010年の7月。3代目WRXのマイナーチェンジでWRXにセダンボディが追加された(復活した)タイミングで、WRXのカタログからインプレッサの名がシレッと消えている。メーカーとしても、WRXとインプレッサをわけることをとくにアピールしなかったので、かなり熱心なマニアでなければ気がつかない変更だった。
歴史を簡単に紐解くと、インプレッサというモデルが誕生したのは1992年。そのトップスポーツグレードとして設定されたのがインプレッサWRXだ。WRXの下にはNAの1.5~1.8リッターを搭載する実用グレードを展開。WRCにも参戦するハードな高性能車から、100万円そこそこから買えるエントリーモデルまで、幅広いラインアップを持つというのが歴代インプレッサの特徴だった。基本的には同じボディに搭載するエンジン違いでグレードをわけるのは、ドイツ車的な手法ともいえる。
そんなインプレッサシリーズも、つねに一番人気で注目度も高いWRXの「別格感」が世代ごとに強まるにつれて、すべてを一括りにするのは無理を感じさせるようになった。3代目モデルでは、WRXとそれ以外のグレードの性能や価格の格差がさらに広がり、内外装はもちろん、メカニズム的にも共通する部分が少なくなったことから、社内で「インプレッサとWRXは名前をわけるべき」という議論が活発化する。実際、3代目モデルからは、WRXとそれ以外のグレードは開発チームも別々にわかれるようになっていた。
顧客を思い車名わけは徐々に進めていこうという考えだった
3代目WRXの開発を取りまとめた森宏志氏は、次のように開発当時を振り返る。
「3代目モデルはWRCでの戦闘力向上のためにハッチバックボディを選択し、NAモデルに対するボディ拡幅の度合いも大きくしたので、WRXは3代目の最初から独立したモデルにしようという案がありました。しかし、同時に『WRX=インプ』としてイメージが広く浸透し、親しまれていることから、従来型のお客様に違和感を抱かせないためにも、車名はインプレッサWRXを踏襲。マイナーチェンジの段階で、まずはカタログからインプレッサの名をとったのです。車名わけは徐々に進めていこうという考えですね」。
3代目モデルは外観デザインの雰囲気が一変し、リヤサスのマルチリンク化などで走りの質も大きく変わったなど、何かと変化の度合いが大きかったことも、名前の変更を先送りにした背景になったようだ。
2010年7月からWRX STIのカタログにはインプレッサの名がなくなったが、型式認証などは途中で変えられないため、正式な商品名としてはインプレッサWRXのままだったという。名実ともに「WRX」と「インプレッサ」が正式に分かれたのは、4代目モデルからである。
いまだにWRXのことをインプと呼ぶ人は少なくないが、現行型のWRXとインプレッサは開発チームも開発時期も異なっており、まったく別のクルマになっているので、混同している人は、そろそろ認識を改めてほしい。
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