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形は違うのに車種名は同じ? モデルチェンジでガラリと変わる車が存在する理由

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形は違うのに車種名は同じ? モデルチェンジでガラリと変わる車が存在する理由

■車名は変えずにボディタイプは毎回変更される訳

 クルマの名前の付け方に対する考え方は、メーカーによってさまざまです。最近ではマツダ「アクセラ」の後継車が、海外で使われている「マツダ3」という車名で国内発売したことも話題となりました。

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 一方、フルモデルチェンジするごとにボディタイプが変わったにも関わらず、同じ車名を使い続けたクルマも存在します。車名を変えなかった理由は一体何でしょうか。

 クルマがモデルチェンジを受ける場合、デザインの刷新や性能向上を狙ってボディの形が若干変化することはよくある話ですが、ハッチバックからセダンへ変化する、というようにクルマのボディタイプまで変わるケースは稀です。

 しかし、車名を変えずボディタイプを2回も変えた国産車が現行モデルで存在します。それはホンダ「インサイト」で、現在は3代目が販売されています。

 1999年に発売された初代モデルは、2人乗りのクーペとして登場しました。アルミボディが採用され、車重は軽自動車並の820キロ(5MT車)を達成するなど、ホンダの先進技術が集約されたクルマだったといえます。

 そして2006年に販売を終了した後に、インサイトは2009年に2代目へフルモデルチェンジして登場しましたが、この際にボディタイプが5ドアのハッチバックへ変更されました。

 乗車定員も5人に拡充されたことで、ファミリーカーとしては使いやすいものとなりましたが、先代と同じ車名であるにも関わらずクルマとしてはまったくの別物となっていました。

 2代目が2014年に販売終了した後に2018年に登場した3代目モデルでも、インサイトはボディタイプを変更しました。定員は5人と変わらないものの、トランクの独立したセダンタイプのボディが採用され、全長・全幅の拡大により車格も上がっています。

 モデルチェンジごとにボディタイプや車格がまったく異なるクルマへ変化したインサイトは、なぜ車名を変更しないのでしょうか。

 3代目インサイトの商品企画を担当した間俊輔氏は、歴代インサイトのポジショニングを振り返りつつ、次のようにコメントをしています。

「『インサイト』というクルマは、ホンダにとってその時代時代にメッセージを投げかけてきたクルマです。

 初代が“世界No.1低燃費”、2代目は“ハイブリッド・フォー・エブリワン(みんなのためのハイブリッド)”というテーマで登場しています。この時代はやはり、環境性能が重宝された時代でした。

 一方で、いまの時代はハイブリッドが当たり前になっています。提供するクルマの本質的な価値をもう一度見直して、時代に合った価値を『インサイト』という名前の意味も含めて提案するのが意図でした」

 ※ ※ ※

 ホンダによると、インサイトという車名は英語の「洞察力」「眼識」という意味の言葉に由来しているといい、「『ハイブリッドカーの本格的な普及という新しい時代の到来を洞察するクルマ』としての思いをこめて命名しました」といいます。

 開発する側も、モデルごとにクルマの性格が大きく異なっていることは認識しているものの、根底に「時代にあわせてメッセージを投げかける」という大きなテーマが流れていることから、インサイトのブランドを大切に育ててきたことがうかがえます。

■コンセプトの違いから車名が変わったケースも

 一方、ホンダ車のなかには、クルマの形に大きな違いがないにも関わらず、車名を変更したクルマも存在します。

 現在、ホンダから「S660」という軽自動車が販売されていますが、このクルマによく似たタイプの車種として、1991年から1996年に同社から「ビート」が販売されていました。

 両車は共に、MRレイアウトが採用されたオープン2シーターの軽自動車という特徴がありますが、なぜ車名が変わったのでしょうか。その理由は、両車の発売直後に公表されたホンダのコメントからうかがい知ることができます。

 S660が発売された2015年に、ホンダは同車のコンセプトについて次のように説明しています。

「新型2シーター・オープンスポーツの『S660』は、見て楽しい、乗って楽しい、あらゆる場面でいつでもワクワクする、心が昂ぶる本格スポーツカーを追求して誕生しました。開発のキーワードは『Heart Beat Sport』としています」

 車名にはホンダのスポーツモデル伝統の「S」が付けられており、ここからも本格スポーツカーとして開発されたことが感じられます。

 一方ビートの発売時には、ホンダは同車のコンセプトについて次のように説明しています。

「全く新しいコンセプトにもとづいて開発した『ビート』は、軽乗用車として初めてMRレイアウトと2シーター・フルオープンボディを採用しました。

 斬新でキュートな内外装デザインとしたほか、軽4輪初のSRSエアバッグシステムの装着車を設定するなど、ホンダの先進技術が数多く盛り込まれました。

 従来のクルマのどのジャンルにもあてはまらない、新鮮で個性的な魅力を持つ“見て、乗って、走って”楽しいクルマとなっています」

 発売当時のホンダの発表内容では、搭載されるエンジンにF1の技術が応用されていることが紹介されていますが、それ以外でスポーツカーの要素を感じさせるようなアナウンスはありませんでした。

 実際にホンダはビートを「ミッドシップ・スポーツ」とは呼ばず、「ミッドシップ・アミューズメント」と表現していました。

 このことを考えると、S660とビートでは開発のコンセプトが完全に同じとはいえず、そのため同じボディタイプでも車名が引き継がれなかったのだと考えられます。

 ※ ※ ※

 クルマの車名には、メーカーからユーザーへのメッセージが込められています。メーカーにとって手を抜けない部分だからこそ、それぞれのクルマの遍歴を見ると、興味深い事象が見つかることがあるのです。

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