もくじ
前編
ー アウトバーンでの超高速バトル
ー 270km/h以上では差が明確に
ー なにからなにまで新しいヴァンテージ
ー 依然として驚異的なR8の走り
ー アプローチの違い
後編
ー アストンの苦手はアウディの得意
ー 超高速域での安心感
ー 感性へ訴えかけるヴァンテージ
ー 真面目な道具と戦える芸術品
ー 走るために選ぶならアウディ
アストンの苦手はアウディの得意
とはいえ、勝負が直線での加速なら、どちらが速いかを結論づけるにはストップウォッチと広大な空間が必要だろう。瞬発力ではミドシップ+四輪駆動のアウディがトラクションで優るだろうことに疑問の余地はない。しかし、いったん走り出してしまったら、馬力荷重比ではわずかに劣るもののトルク荷重比では優るアストンが、最終的には挽回するかもしれない。
冒頭のアウトバーンを使った横一列での勝負では、アウディがまず前に出て、ある程度行ったところでアストンが追いつき、追い抜いた。そしてそれからしばらくはアウディを抑えたが、しかしライバルの卓越した空力性能により再び追い抜かれた。さて、この結末は? それは実際にその先まで走らせてみなければわからない。
曲がりくねった道でなら勝負は明白だ。その先進的な設計を考えれば当然ながら、アウディの優位性は予想どおり揺るぎない。ヴァンテージはその種の環境でR8を相手に勝負するようなクルマではないのだと、走り比べれば誰でも結論づけるはずだ。しかし、その実力は旧モデルに比べれば大幅に向上しているのもまた確かだ。
実際に走らせてみると、ボディの片端に動力源を持ち、その反対側で駆動するクルマとしては、ヴァンテージのコーナリングは傑出している。ビルシュタインの足まわりは、DBSを含むすべてのアストンに新しい水準のボディコントロールをもたらした。ボディを反応させるために乱暴にスロットルペダルを踏み込む必要はなく、はるかにデリケートなタッチで応答するようになっている。
超高速域での安心感
残されている唯一の問題点は、ステアリングを切ってクルマが向きを変え始める、まさにその瞬間にある。アウトバーン上を英国の速度制限の倍を超えるスピードで走っていて感じたように、横方向への加速度を発生させる能力そのものではなく、ドライバーに確信を与えることができないところに問題があるのだ。
通常、ターンインのときにはわずかなアンダーステアを示すのが望ましい特性なのだが、それは決して“わずか”を超えるものであってはならない。しかしこのクルマはそうではない。したがってノーズを意図したラインに乗せるのがむずかしく、扱いづらく感じてしまう。
アストンにとってなにより不幸なのは、いちばん苦手にしているこの分野で、R8は超絶的に卓越しているという皮肉だ。R8のノーズの扱いやすさはどのスーパーカーとも異なっている。私の知る限り、比較できるとしたらフェラーリF430しかない。意図したところにそのまま走っていくという、ただそれだけなのだ。実にシンプルで速く、そして正確そのものである。しかも、フェラーリでハイスピードのコーナリングをスロットル全開でこなそうと思ったらそれなりの腕前が必要とされるが、R8なら平然と走り抜けられる。
感性へ訴えかけるヴァンテージ
2日間にわたってアウトバーンやワインディングを走り回るうちに、私の頭の中にはひとつの単語が繰り返し浮かんでくるようになった。その言葉とは、“ロータス”である。この賛辞がどれだけの重みを持つものか、アウディは間違いなくわかってくれるだろう。過去15年間、なによりもハンドリングの総合的な水準を批判され続けてきたプレミアムブランドから出てきたモデルなのだから。このクルマは恐るべき到達点である。
不足があるとしたらブレーキだ。今回の個体では、今まで試乗してきたほかのR8のそれに比べてちょっと軽すぎて、気の抜けた感じがした。ストッピングパワーに関しては申し分ないが、すべてのミドエンジンスーパーカーのなかで最高だと私が確信できるシャシーを作り上げたアウディが、日産マーチよりもフィールやプログレッションに欠けたブレーキを装備してしまったのは、ちょっと真剣に考えたほうがいいかもしれない。
つまりブレーキではヴァンテージのほうが圧倒的に優れているのだが、それを考慮に入れたとしても旗色はちょっと悪い。ただし、この種のクルマが属している価格帯は、ピュアな客観的性能が重要である一方で、さらに感性に訴える部分がより重要視されるセグメントでもある。そういう視点で説得力のある要素のひとつが、自分自身の目にどう映るかだ。R8は今回のこれより映えるカラーを今までに見たことがないが、しかしそれでもアストンを前にするといささか不恰好に見えてしまうのは否めない。そして、もうひとつの要素がインテリアだ。アウディが機能的かつ効率的であり高品質なキャビンを構築しているのに対し、アストンが与えるのはひとつの芸術作品である。
もっとも、良し悪しに関しては冷静に判断しなければならない。R8のインテリアは、柔軟性の高いドライビングポジションから操作系の明快さにいたるまで、ただ運転操作のために、ひたすらシンプルで素晴らしい環境に構築されている。けれどヴァンテージはそうではない。DBS譲りのセンターコンソールを備えるようになったが、相変わらずダイヤル類はわかりにくく、GPSナビはオプションであり、しかも大げさなうえに操作方法は不可解ですらある。さらに小さなボタンをずらりと並べたインターフェイスの扱いにくさには、時に怒りさえ覚えてしまった。
真面目な道具と戦える芸術品
パフォーマンスもパワートレーンも価格帯もほとんど同じではあるが、R8とヴァンテージはコンセプトの点で根本的な違いがあり、やはり両者まったく別のクルマである。
根本的にR8は仕事のための真面目な道具に徹している。並外れた、そしてさらに言ってしまえばランドマークとも呼べる実力を持った装置である。2座の小さなリアシートを投げ捨てた以外の点では、まさにポルシェ911の王座を真の意味で継承するマシーンといえるだろう。
しかし、R8のオーナーたちが、自分たちの愛車をエアコン付きのガレージで丁寧に磨き上げ、晴れの日しか走りに出ず、そして乗ったあとにまた磨き上げるとは考えられない。R8の最大の価値は、完全に普通のクルマとして、用途や季節を問わず道具として使い切って(全開とまでは言わずとも)こそ発揮されるであろう類のものだ。愛玩のための置物ではないし、たとえ愛情を持って接しているオーナーだとしても、オモチャ的には扱わないはずだ。
アストン マーティンはヴァンテージを、数千人のオーナーたちが日常的に使っている実用的なクルマだと説明することだろう。しかしそこにはオーダーメードのフィールが依然として残っている。ヴァンテージの長所はもちろんのこと、欠点からもそれは同様に色濃く感じられ、そしてR8にはまったく欠如しているものだ。
走るために選ぶならアウディ
確かに客観的な実力からすれば、ヴァンテージはR8にはかなわないかもしれない。しかしR8よりはるかに特別なクルマだと感じてしまうのはそれでも止められない。歴史上のすべてのアストンと同様に、緊密感を持てる、世話をしたくなる、そして大事にしたくなるクルマである。しかも今回は、アウディのように想像を絶する水準ではないにせよ、このクラスでしっかり互角に戦える実力を備えたクルマに仕上がっている。いかなる尺度で考えても、これは立派な達成である。
しかし、やはり私としては、軍配を上げるのはR8のほうにしたい。理由はこうだ。
一本の立派な、そしてがらがらに空いた道路が目の前にあって、勝負がかかっている局面だ。2本のキーがあり、すぐにどちらかを選ばなければならないとしよう。アストンの魅力的なルックスには後ろ髪を引かれるだろうが、とにかく走らねばならないとなったら選ぶべきはアウディだ。フル加速して最初のコーナーに差し掛かり、そこでステアリングを軽く切った瞬間、その選択が間違っていなかったことがわかる。このような種類のクルマでは、それこそがなにより重要なのだ。
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