「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、日産 フェアレディZ ロードスターだ。
日産 フェアレディZ ロードスター(2012年:マイナーチェンジ)
クルマの主流がSUVやミニバンになってしまった昨今(編集部註:2012年)、それでもクルマ好きにとってはスポーツカーは憧れの対象であることは間違いない。しかも、クローズドのクーペよりもオープンモデルのほうが風と一体になった走りを楽しむことができる。
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というわけで、今回チョイスしたのが日産のフェアレディZ(以下、Z) ロードスターだ。初代のZが誕生したのは、1969年(昭和44年)。以来、5回のフルモデルチェンジを経て、現行型は2008年に登場した6代目となるが、これまでずっと日本を代表するスポーツカーであり続けていることはたいしたものだ。
2000年に4代目のZ32型で一度は生産中止の憂き目にあったものの、2002年にZ33型が復活したのはご存知のとおり。そして2008年に6代目となるZ34型が登場し、このほど(編集部註:2012年7月)マイナーチェンジが行われ、よりスポーティでスタイリッシュになった。
米国では西海岸を中心に「ズィーカー」として人気の高いZだが、ルーツであるフェアレディから「Z」を名のって1966年に登場してからは、ずっとクローズドのクーペが主体で、Tバールーフこそ存在したものの、フルオープンモデルのロードスターはやや特殊な位置づけだった。それでも、1992年に4代目のZ32型に初めてコンバーチブル(当時はロードスターではなかった)が設定されて以来、歴代のZにはオープンモデルが設定されてきた。
欧州向けの足まわりを採用した仕上がりの良さ
前置きが長くなった。いまや貴重な日本のオープンスポーツカーの走りを楽しむことにしよう。Zは先代から現行型に移行する際に、運動性能を高めるためにホイールベースを100mm短縮した。これが功を奏して、見た目から想像されるよりも軽快な走りを楽しむことができる。
パワートレーンは、先代から排気量を200ccアップさせた3.7LのV6 DOHCはマイナーチェンジで基本的に変わりはない。336psの最高出力と365Nmの最大トルクは、オープン化に伴い1600kg近くなった車両重量をものともせず豪快に加速していく。試乗車のトランスミッションは7速ATだが、感覚的にも力強い。
コンベンショナルなロングノーズにエンジンという重量物の存在を感じさせるが、操舵感そのものはリニアだ。しかも今回のマイナーチェンジで日本仕様にも設定された欧州向けの足まわりによる仕上がりがなかなかのもの。追従性に優れ、乗り心地も良くなった。
電子制御デバイスに関しては、いたってオーソドックスでVDC(ビークル ダイナミクス コントロール)以外に特筆すべきものはあえて採り入れていない。それは、日産にはGT-Rがあり、絶対的な性能を追求するのはGT-Rの役目で、Zでは逆に〝素〞のよさを追求しているからだろう。その潔さもZの持ち味だ。
Zは従来よりも大きく洗練された。そして、いかにも高性能なスポーツカーらしい雰囲気を味わわせてくれる「演出」の部分もうまい。オープンのロードスターなら、なおさらだ。こんな雰囲気を味わえる日本車は、いまやZだけといえるだろう。ライバルとなるインポート スポーツカーに比べればコストパフォーマンスは高いし、あらためてZの良さを再認識させられたのだった。
日産 フェアレディZ ロードスター バージョンST 主要諸元
●全長×全幅×全高:4260×1845×1325mm
●ホイールベース:2550mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:V6 DOHC
●総排気量:3696cc
●最高出力:247kW(336ps)/7000rpm
●最大トルク:365Nm(37.2kgm)/5200rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・72L
●JC08モード燃費:9.1km/L
●タイヤサイズ:前225/50R18、後245/45R18
●当時の車両価格(税込):512万4000円
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