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カワサキ初代エリミネーター400【1986年新車時レポート】レッドゾーン1万2500回転のスポーツアメリカン

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カワサキ初代エリミネーター400【1986年新車時レポート】レッドゾーン1万2500回転のスポーツアメリカン

GPZベースのエンジンを搭載したアメリカン

2023年春に突如として復活を遂げたカワサキ エリミネーター(400cc)だが、エリミネーターシリーズは最初に1985年型として「エリミネーター」が登場(900cc、輸出専用車)。続いて、1986年型としてエリミネーター750、エリミネーター400が、1987年型としてエリミネーター250が国内モデルとして登場した。
それらはいずれも当時の最新スポーツモデル・GPZシリーズのエンジンを低く長い車体に搭載。ドラッグマシンのようなスタイルであり、「パフォーマンスクルーザー」をコンセプトに、カワサキは新ジャンルを開拓しようとしていた。

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クルーザー(その当時はアメリカンと呼ばれることが多かったが)でありながらスポーティ。
GPZ400Rベースの水冷並列4気筒エンジンを搭載するエリミネーター400、同車がデビューした1986年に書かれた試乗レポートを見ると、どのような評価をすべきか、戸惑っている様子が見受けられる。それこそ、当時、エリミネーターがいかに斬新なモデルだったかの証左と言えるだろう。
というわけで、以下『モーターサイクリスト1986年3月号』に掲載された初代エリミネーター400の試乗レポートを振り返っていこう。

ゆとりあるポジション

エリミネーター400のスタイリングは、アメリカンのようでアメリカンではない。ロードスポーツとも言い切れない。あえて言えば、ドラッグレーサーの雰囲気。デザインポリシーは、低く、長く、スマートに……。そして、まったく新しい異次元のスポーツバイクを狙ったものだ。
車格は、ひと目見ただけでは、とても400ccとは思えない。それほど重厚なスタイリングをしている。大きく見せている要因は、1,550mmという並のナナハン以上の超ロングホイールベースと、150/80-15という極太のリヤタイヤだ。

しかし、ポジション的には大きさを感じさせない。なにしろ足つき性がよく、両足のカカトまでべったりとつき、ひざにも余裕ができるほど。ハンドルの位置も高すぎず、低すぎず、手を伸ばすとそこにハンドルがあるといった感じ。いかにもツアラーらしい、ゆったりとしたポジションが得られる。
ただ、容量12Lという小さめのタンクは、ニーグリップすることはできない。なにしろ、上から見るとインライン4のシリンダーヘッドが、かなりタンクよりはみ出している。エリミネーターはニーグリップをしないで乗る?バイクなのだ。
このようなライディングポジションの設定からして、ギンギンに走り回るタイプではないことがはっきりしてくる。ゆったりと落ち着いたクルージングがエリミネーターに最高に似合うように思える。

しかしエンジンは、GPZ400Rに積まれる水冷DOHC4バルブインライン4と基本的に同じ。スーパースポーツのパワーソースとして、既に実績を残している頼もしいエンジンだ。
最高出力は54ps。GPZの59psよりも、5psダウンしている。そのぶん低中速トルクを太らし、実用回転域でより扱いやすいことを狙っている。そのため、カムシャフトと、キャブレターとマフラーのセッティングが変更されている。とはいえ、ベースはGPZ400R。その走りの血筋は、受け継いでいるはずだ。

スムーズで扱いやすい

メインスイッチをONにし、左ハンドルにあるチョークレバーを引いて、セルを回す。長めのクランキングの末、やっとエンジンに火が入った。3,000rpmくらいでアイドリングし始めたかと思うと、プスンとすぐに止まってしまうのだ。
アクセルを合わせながらチョークレバーを少しづつ戻してやればうまくいくが、決して始動性がいいとは言い難い。真冬の低温のなかということもあるが、もう少しセッティングを煮詰めてほしい点だ。
暖機が終わったところで、軽くレーシングしてみる。レスポンスがとてもよく、吹け上がりはじつにスムーズで軽い。大径のカットアウトマフラーから吐き出されるサウンドは、ず太い低温ではなく、GPZに似たカン高いマルチ特有のもの。思わずその走りに期待してしまう。

市街地に乗り出してみると、エンジンはやはりスムーズで、とても扱いやすい。頻繁なゴーストップの繰り返しも苦にならない。また、アクセルオンでリヤが持ち上がるシャフトのクセは、さほどショックを受けず、気にならない範囲だ。
しかし、高回転まで回して急激にアクセルオフすると、リヤがかなりの勢いで沈み込み、タイヤがロックしそうになる。間髪入れずシフトアップすれば問題ないのだが、加速中に目の前に車が車が飛び出してきた場合など、かなり怖い思いをする。それも、シャフトのクセに慣れてしまえば、大丈夫だろう。

市街地、一般路走行で最も気になったのは、フロントフォークの作動。40~60km/hで走っていると、ハンドルに落ち着きがなく、路面からゴツゴツとした振動が直接伝わってくる。走りながらフロントフォークを見てみると、ほとんど動いていないことが確認できた。これが原因だ。
この実用速度域での落ち着かないハンドリングと振動は、日常の使用やツーリングでネックとなってしまう。乗り心地も悪く、疲労も早めるはずだ。基本的に、もう少しソフトなセッティングが必要だろう。

高速重視のサスペンション

高速道路に乗り入れると、作動の悪かったフロントフォークもかなり動き出し、ハンドリングが落ち着きを増して振動も少なくなる。乗り心地こそまだ堅めで、路面の継ぎ目やギャップに乗ると、ガツンとショックを受ける。しかし、それによってハンドルが振られたり、直進性が損なわれることはなかった。
エリミネーターのサスペンションは、かなり高速重視のセッティングになっているようだ。一般道では不満な部分が大きかったのだが、一応及第点を与えられる。それでも、やはり全体に堅すぎるイメージは拭いされない。よりソフトなサスが、一般路&高速道路での安定性、乗り心地の向上につながるだろう。

高速域でのエンジン特性は、レーシングしたときのイメージと同じくじつにスムーズだ。レッドゾーンの始まる12,500rpmまで、軽々と回ってしまう。うっかりしていると、レッドゾーンに飛び込んでしまうほどの勢いだ。たとえ回しすぎても、13,000rpmでリミッターが効くので、エンジンを壊す心配はない。思い切り高回転フィーリングを楽しめる。欲を言えば、もう少し高回転域のトルクがほしい気がする。

ワインディングもこなす

エリミネーターのワインディングの走りには、正直言って期待していなかった。しかし実際は、一般路や高速道路での不満を打ち消して、まだオツリがくるほどの走りを見せてくれるのだ。なかなかハイアベレージのコーナリングが楽しめる。
ロングホイールベースや超ワイドなリヤタイヤのデメリットは感じられず、バンキングはスムーズ。とはいっても、レーサーレプリカのようにフロントから倒れ込んでいくのではなく、リヤに体重をかけながら寝かし込むオーソドックスなタイプ。
安定感が高く、多少ハンドルをこじったりしても、フロントが切れ込むことはない。かといって寝かし込みが重ったるいわけではない。適度な重さが、思い切ったバンキングを可能にしてくれる。
ただ、せっかくの安定性の高いコーナリング特性も、浅いバンク角のために今ひとつ物足りなさを感じてしまう。左右とも、簡単にステップのバンクセンサーが接地する。もう少しバンク角があれば、コーナリングスピードはまだ上げられるだろう。

コーナーのアプローチでは、高回転からあまりに急激にシフトダウンすると、リヤタイヤが悲鳴を上げ、寝かしにくくなる。これは市街地走行でも感じたシャフトのクセだ。突っ込みは、シャフトドライブの特性をよく頭に入れて、慎重にやりたい。
スムーズに減速し、立ち上がりを重視する走りがベスト。いわゆる、スローイン・ファストアウトの走りが望ましい。そうすればエリミネーターは、自分の思ったラインを的確にトレースしてくれる。この走り方で高回転をキープすれば速い。
5,000~6,000rpmで走ってもいいのだが、トルクがやや細いためかレスポンスのわりに車速が伸びない。かつてのFX400に似たフィーリング。ワインディングを攻めるには、10,000rpm以上のパワーが必要だ。

市街地からワインディング、ロングツーリングと幅広く対応するエリミネーターは、確かに新しい感覚のバイク。ナチュラルのポジションにも助けられて、オールマイティな走りを実現している。

試乗レポート●和田 稔 写真●八重洲出版『モーターサイクリスト1986年3月号』、『別冊モーターサイクリスト1987年8月号』(桧山行由) 編集●上野茂岐

カワサキ エリミネーター400(1986)主要諸元

■エンジン 水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク56.0×40.4mm 排気量398cc 圧縮比11.0 点火方式フルトランジスタ 始動セル

■性能 最高出力54ps/12,000rpm 最大トルク3.4kgm/10,500rpm 定地燃費(2名乗車時)40km/L(60km/h) 最小回転半径3.0m

■変速機 6段 変速比1速2.571 2速1.777 3速1.380 4速1.125 5速0.961 6速0.851 一次減速比3.277 二次減速比2.690 

■寸法・重量 全長2,210 全幅795 全高1,065 軸距1,550 最低地上高145 シート高720(各mm) 車重192kg(乾燥) タイヤサイズF100/90-18 56H R150/80-15 70H(ともにチューブレス) キャスター29度 トレール105mm

■容量 燃料タンク12L

■1986年新車当時価格 59万8000円(北海道及び沖縄を除く)

■車体色 エボニー、ルミナスレッド

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