■マラドーナのセビージャFC時代の愛車はポルシェだった
洋の東西を問わず、有名人が亡くなったあとは、ゆかりのあるものが高値で取引されがちだ。
買うなら今!! ポルシェ「964型911」の中古価格が上昇し続ける理由
VAGUEでは、偉大なるサッカー選手であったディエゴ・マラドーナが、UAEのクラブで監督を務めていたときに所有していた、ロールス・ロイス「ゴースト」とBMW「i8」がオークションに出品されたことを既報しているが、今回紹介する1992年モデルのポルシェ「911」も、マラドーナがかつて所有していた個体である。
●1992 ポルシェ「911カレラ2 カブリオレ ワークス・ターボ・ルック」
1984年からマラドーナは、イタリアのナポリに所属していた。背番号は10。1986-1987シーズンに、イタリア南部のチームとしては初めての国内2冠を達成したのは、まさにマラドーナのおかげといっていいだろう。
しかし1990年ごろから、マラドーナは麻薬の使用などが取り沙汰されるようになり、1991年にはチームを離れることになる。
そのとき、移籍先のひとつとして噂されていたのが、名古屋グランパスエイトだったのだが、麻薬問題を抱えているということから交渉は不成立となった。
結果、マラドーナが次に所属したのは、スペインのセビージャFCだった。しかしここでも、毎夜のパーティなどといった生活態度の悪さがたたり、1992年9月から1993年6月までという短期間のみの所属となった。その後は、母国であるアルゼンチンのチームに移籍している。
今回オークションに出品されたポルシェ911は、そうしたセビージャFC時代にマラドーナが愛用していたクルマだ。
セビージャに移籍した当初、熱狂的な歓迎を受けたマラドーナだったが、1992年11月にこのポルシェを手に入れたときにはすでに、ピッチ上の活躍ではなくナイトライフの話題が先行する、という状態となっていた。
マラドーナがスペインを去ったのち、1993年9月にはマジョルカ島に住む人に譲渡され、2000年にフランス人の手に渡り、数人のオーナーの手を経て現在に至っている。
では、このポルシェ911は、一体どんなクルマなのだろうか。
この当時の911は、空冷の水平対向6気筒エンジンを搭載している964型と呼ばれるものだ。
当時911には、NA(自然吸気)エンジンとターボエンジンが存在していたが、ターボエンジン搭載車は、NAエンジン搭載車とは違う、ワイドボディが採用されていた。それに伴って、サスペンションやブレーキシステムも、専用品が採用されていた。
そんなターボエンジン用ボディに、NAエンジンを搭載したのが、「911カレラ2 カブリオレWTL(ワークス・ターボ・ルック)」である。
■マラドーナの愛車でなくとも空冷ポルシェは高値キープ!
一般的にクローズドボディのクルマをオープントップにすると、ボディ剛性面での不安が生じてしまうものだ。911カレラ2 カブリオレWTLは、剛性の高いターボ用ボディをベースとすることで、その点をクリアしている。
●1992 ポルシェ「911カレラ2 カブリオレ ワークス・ターボ・ルック」
この911カレラ2 カブリオレWTLの生産台数は、1200台といわれている。
日本に正規輸入されて販売された台数は、たしか数十台ほどだったのではないかと記憶している。並行輸入されたクルマもあったようだが、すべて合わせても、日本国内に生息した台数は100台未満だったろう。
当時の日本での新車価格は、およそ1500万円ほどだったはずだ。バブル景気が崩壊したあとの1500万円というプライスタグだったので、非常に高価だったと記憶している。
街でこのWTLを見かけると、いろいろな意味で「すごいなぁ」と思ったものである。
この個体は、数人のオーナーの手を得ているが、状態は決して悪いものではない。
走行距離は12万2000kmあまりとなっているが、2017年にオリジナルカラーでの再塗装とウェザーストリップ類の交換がおこなわれているほか、機能面では定期的にポルシェの正規サービスセンターで整備をされており、直近ではドイツ・ボンにあるポルシェセンターでの整備を受けている。
さらにいえば、オリジナルの保証書やメンテナンスブックは、マラドーナの名義であったことが記されていて、これだけでも価値がある、といっていいかもしれない。
こうした経歴を持つ、ポルシェ911カレラ2 カブリオレWTLの落札予想価格は、15万-20万ユーロ(邦貨換算約1900万-2600万円)となっている。
空冷時代のポルシェ、964型や930型が大幅な値上がりを見せているいま、オリジナルで、いい状態を保っている964型、それも限定生産車のWTLであるということ、そしてマラドーナの愛車だったということを考えれば、新車価格プラスアルファとなるこの価格は、ある意味妥当といっていいものなのではないだろうか。
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