現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > のべ1000人のオーナーを取材して気づいた「強烈な原体験の重要性」とは?

ここから本文です

のべ1000人のオーナーを取材して気づいた「強烈な原体験の重要性」とは?

掲載 15
のべ1000人のオーナーを取材して気づいた「強烈な原体験の重要性」とは?

運営元:旧車王
著者 :松村 透

日本アルミ弁当箱協会会長の「ちょっと斜めから見た旧車たち」Vol.8

国産車および輸入車を問わず、これまで多くのオーナーさんにお会いし、取材する機会に恵まれた。

気づけばのべ1000人近い方にお会いして、愛車に対する想いをお聞きしてきた。

いずれも「自他ともに認めるクルマ好き」に位置付けられる方たちばかりだ。

老若男女問わず、愛車への想い入れがケタ違いに強く、そして深い。

取材を終えたあるとき、これだけの熱量を帯びている方には共通する理由があることに気づいた。

それは「強烈な原体験」が、現在の愛車を手に入れる動機となり、さまざまな困難に直面しても、心変わりすることなく維持するモチベーションにつながっている方が本当に多いのだ(実は、筆者もそのひとりだ)。

そこで今回、「強烈な原体験の重要性」について紐解いてみたいと思う。

■「強烈な原体験」がその後のカーライフを大きく左右するオーナーインタビューをしていると、幼少期の頃「父親がクルマ好きで自宅のリビングにクルマのカタログや自動車雑誌が何冊も置いてあった」あるいは「祖父母の家に遊びにいくたびに買ってくれたトミカ。こんなにたくさんのクルマがあることを知り、興味を持った」などなど、置かれていた環境が大きく影響していることが多いように思う。

なかでもアラフィフ世代の方にインタビューすると、スーパーカーブームが強烈な原体験となり、クルマが好きになったというエピソードを伺う機会がとても多い。

これが20代~30代前半くらいの方であれば、頭文字Dや湾岸ミッドナイト、グランツーリスモ、ワイルド・スピードシリーズといった、漫画やゲーム、映画などが原体験になっている人が多いように思う。

また、成人になってから強烈な原体験をした方ももちろん存在する。

たとえばこんなエピソードを伺ったことがある。

「仕事帰り、バス停のところに立っていたら、黒い2ドアのクルマがサーッととおり過ぎて、リアガーニッシュに『MR2』の文字が見えた。そこから夢中で調べ、実際にMR2を手に入れた」といった具合に、突然の出会いが、その後のカーライフを大きく変えることになった方も実在する。

強烈な原体験のエピソードは本当に人それぞれ。

たとえ、それが兄弟であってもだ。

いずれも「そのときのできごとを鮮明に記憶している」点は、驚くほど共通している。

■原体験が強烈であればあるほど上書きが難しい私事で恐縮だが、筆者が17才・高校3年生のときに体験した「ポルシェショック」が、その後のカーライフはおろか、人生まで変えてしまった。

要約すると、ある方のご厚意で、当時のポルシェの正規ディーラーで試乗車に同乗走行させてもらう機会があった。

自分にとっては、30分弱の試乗で、その後で人生が変わってしまうほどの強烈な原体験だった。

それだけに、30年以上経ったいまでも、当時の記憶が強烈に残っている。

ディーラーの試乗車は964型のカレラ2(MT)、ボディカラーはルビーストーンレッド。

後に、漫画「彼女のカレラ」にも登場するボディカラーのそのものだ。

ディーラーのメカニック氏がサービス精神旺盛な方だったのか、空冷エンジンをブン回し、蹴飛ばすようにブレーキを踏んでくれたのだ。

それまでスポーツカーというクルマに同乗したことがなかったので、余計に強烈な体験になったのかもしれない。

そして帰り際、ポルシェのカタログをいただいた。

帰宅してから改めて読んでみた。

身分不相応極まりないが、不覚にも「自分も欲しい」と思ってしまったのだ。

しかし、新車価格が1000万円以上、当時、時給750円でアルバイトしていた身にはあまりにも別次元の存在だった。

その後、運転免許を取得し、成人して年齢を重ねていっても「いつか自分の911を所有してみたいという」想いが消えることはなかった。

深夜、ママチャリに乗って30kmくらい離れたショールームまで何度も観に行ったこともあったし、911の特集が組まれた雑誌は片っ端から手に入れた。

CGTV(カーグラフィックTV)で911が特集された回にオンエアされた曲名が知りたくなり、制作会社の方に頼み込んでオンエアリストを送ってもらったこともあった(笑)。

その後、紆余曲折あって、自動車関連業に従事するようになった。

仕事をつうじて国内外のさまざまなクルマに触れる機会に恵まれたが、とうとうポルシェ911を超える存在に出会えなかった。

で、どうしたかというと、空冷バブルが起こる寸前に、ボロボロのナローポルシェを手に入れ、復元し、どうにかこうにか現在も所有している。

一念岩をも通したのだ。

■原体験はできるだけ幼少期の方がいい?これは筆者の持論だが「原体験はできるだけ早い方がいい」と思う。

もちろん、それには理由がある。

「いわゆる『禁欲期間』が長ければ長いほど、達せられたときの喜びが大きい点」と「憧れのクルマを手に入れるべく頑張ろうという明確な目標がひとつ定まる」の2点が挙げられる。

毎日を漫然と過ごすよりも、明確な目標を決めた方が生活にもハリがでるはずだ。

ただ、これには思わぬ落とし穴がある。

長年の想いが成就した瞬間、気持ちが冷めてしまう方が一定数いるのだ。

また、理想と現実との違いに直面し、何かのアクシデントに遭遇して一気に冷めてしまうケースもままある。

もしかしたら、手に入れることが目的で、その先のことを描いていなかったのかもしれない。

あるいは、憧れを美化しすぎてしまった、ということもあるだろう。

「憧れのクルマを手に入れることはゴールではなく、スタート」だということを認識し、手に入れてからのカーライフをイメージしていおく必要があるのかもしれない。

■まとめ:のべ1000人のオーナーを取材して気づいた「強烈な原体験の大切さ」とは?人それぞれ、いま置かれているさまざまな境遇があるし、そう簡単にコトが進まないことも現実問題としてあるだろう。

いっぽうで、冷静に考えてみると、人生を変えるほど・・・は大げさとしても、寝ても覚めても忘れられない、いつか自分のモノにしよう、したいと思える存在って、生きているうちにそう出会えない気がする。

「憧れは憧れのままでいい」というのであれば、すでに自分の気持ちに決着がついているので問題はないが、いまこの瞬間も「強烈な原体験が忘れられずモヤモヤしている」としたら・・・。

どんな形でもいい、夢の実現に向けてまずは一歩踏み出してみることで「きっと何かが動き出す」はずだ。

原体験が強烈であればあるほど、勇気ある一歩の大きな起爆剤となってくれるに違いない。

この記事が、そんな方が一歩踏み出す動機付けとなれば幸いだ。

[ライター・撮影/松村透]

 

 

こんな記事も読まれています

BMW『M5』新型は最高速305km/hのHEVに、ワールドプレミアは7月11日…グッドウッド2024で
BMW『M5』新型は最高速305km/hのHEVに、ワールドプレミアは7月11日…グッドウッド2024で
レスポンス
セルフ式ガソスタで「給油口カンカン」は絶対NG! でも一体なぜ危険なの? 熟練ドライバーもやりがちな「うっかり行為」に潜む危険とは
セルフ式ガソスタで「給油口カンカン」は絶対NG! でも一体なぜ危険なの? 熟練ドライバーもやりがちな「うっかり行為」に潜む危険とは
くるまのニュース
今更聞けない!? 日本にある4大バイクメーカーの特徴とは?
今更聞けない!? 日本にある4大バイクメーカーの特徴とは?
バイクのニュース
レッドブルF1重鎮、フェルスタッペンとノリスのトップ2激突は「完全に不必要」チーム自ら招いたピンチとも示唆
レッドブルF1重鎮、フェルスタッペンとノリスのトップ2激突は「完全に不必要」チーム自ら招いたピンチとも示唆
motorsport.com 日本版
2択アンケート「近距離の足として使うなら、原付? 電動アシスト自転車?」【クルマら部 車論調査】
2択アンケート「近距離の足として使うなら、原付? 電動アシスト自転車?」【クルマら部 車論調査】
レスポンス
改良型CX-60の魅力まとめ
改良型CX-60の魅力まとめ
グーネット
国内最高峰 トヨタ「センチュリー」の新車価格は2000万円超え! 買うために必要な年収とは? 厳しいといわれる“購入の条件”とは
国内最高峰 トヨタ「センチュリー」の新車価格は2000万円超え! 買うために必要な年収とは? 厳しいといわれる“購入の条件”とは
VAGUE
”まもなく登場!?”の新型「ロードスター」! 2リッター”直4”+精悍エアロ採用! 待望の「RS C」はどんなクルマなのか
”まもなく登場!?”の新型「ロードスター」! 2リッター”直4”+精悍エアロ採用! 待望の「RS C」はどんなクルマなのか
くるまのニュース
Luupが「電動シートボード」提供開始へ…座席・カゴ付きの特定小型原動機付自転車
Luupが「電動シートボード」提供開始へ…座席・カゴ付きの特定小型原動機付自転車
レスポンス
2024年5月の自動車輸出、欧州向け36%減 米国向けは10%増 自工会発表
2024年5月の自動車輸出、欧州向け36%減 米国向けは10%増 自工会発表
日刊自動車新聞
角田裕毅、F1オーストリアGPは14位。リカルドと分けた戦略がうまくいかず……「でも、チームとして理解が深まった」
角田裕毅、F1オーストリアGPは14位。リカルドと分けた戦略がうまくいかず……「でも、チームとして理解が深まった」
motorsport.com 日本版
新型BMW「M5」の全て!パワフルなルックスと700馬力を超えるパワーで2.4トン超の車重でもセンセーショナルな新型M5!
新型BMW「M5」の全て!パワフルなルックスと700馬力を超えるパワーで2.4トン超の車重でもセンセーショナルな新型M5!
AutoBild Japan
スズキ「斬新“タフ仕様”軽トラ」実車公開! 超カッコイイ「精悍“黒”顔」&「専用カスタム」! 新「スーパーキャリイ」アウトドアショーに出展
スズキ「斬新“タフ仕様”軽トラ」実車公開! 超カッコイイ「精悍“黒”顔」&「専用カスタム」! 新「スーパーキャリイ」アウトドアショーに出展
くるまのニュース
旭川空港でタクシーアプリ『GO』が利用可能に…北海道の空港で初の試み
旭川空港でタクシーアプリ『GO』が利用可能に…北海道の空港で初の試み
レスポンス
レクサス・NX「アウトドア×プレミアム」
レクサス・NX「アウトドア×プレミアム」
グーネット
「ライダーの所有欲をかき立てる」ハデ色が充実! 英国最大のバイクブランド発「カラフル&シック」な2025年モデルの魅力とは
「ライダーの所有欲をかき立てる」ハデ色が充実! 英国最大のバイクブランド発「カラフル&シック」な2025年モデルの魅力とは
VAGUE
京葉道路の“地獄渋滞区間”「貝塚トンネル」いつになったら改善!? 新トンネル建設で「車線増加」千葉県が国へ要望継続!「慢性的な渋滞です」
京葉道路の“地獄渋滞区間”「貝塚トンネル」いつになったら改善!? 新トンネル建設で「車線増加」千葉県が国へ要望継続!「慢性的な渋滞です」
くるまのニュース
「訳あり」の軽トラ「サンバー」をまずは「バイクを積載できる」仕様に トランポもリフレッシュしよう!! Vol.2
「訳あり」の軽トラ「サンバー」をまずは「バイクを積載できる」仕様に トランポもリフレッシュしよう!! Vol.2
バイクのニュース

みんなのコメント

15件
  • 911より買い得感のあった928を大学出てすぐに親ローンで買って
    数か月でエンジン修理費100万で困ってた友人がいたな。
  • バブル後に、カップラーメンすすりながら
    無理してローンで買った、
    ポルシェを維持してた人もいたらしいな
    ま、俺なんか20年前のサンバーレンシュポルトを
    維持するのに必死のパッチよ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.02615.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

220.07250.0万円

中古車を検索
911の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.02615.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

220.07250.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村