それは不死鳥
何度倒れても必ず蘇り
新たな境地へと途を切り拓いていく
その名はフェアレディZ
これは新型フェアレディZの公式ホームページに書かれたコピーである。Zの歴史を知る50代(?)以上のおじさんたちの胸にじ~んとササるのではないだろうか。
新型フェアレディZを買いに行ってきた! すでに2022年モデルは完売!? 納期は? 人気のグレードは?
さて、この新型Zの販売は今どうなっているのだろうか? 4月25日に価格とグレードが発表され。4月18日に抽選発表が行われた240台限定の特別仕様車「Proto Spec」もそろそろ納車されたのではないかといわれている。
新型Zのカタログモデルは当初6月下旬を予定していたが、昨今の部品供給の遅れもあり、今夏に変更されているが、このカタログモデルの2022年モデルもすでに完売という情報が入ってきている。
どの情報が本当なのか? 今新型Zを予約すると納期はいつになるのか、ディーラーに見積もりをもらいに行ってきた。
文/柳川洋
写真/日産、ベストカーweb、柳川洋
■納期は最速でも今年11月から12月程度、今オーダー入れても2023年モデルの可能性大
早くも2022年モデルは完売だという
世間ではボーナスが出て、新車の商談も盛りあがっているタイミングで、都心の日産ディーラーにおもむき、新型フェアレディZの見積もりをもらってきた。
ショールームの中に入ると、商談用のテーブルに通され、製本された立派なカタログが、価格表と一緒に出てきた。そして営業マンからの挨拶が終わるとすぐに、「おことわり」が。
とても立派なカタログで、ディーラーに行ってこういうカタログをもらえて嬉しくて仕方なかった子供の頃を思い出した
「こちらお渡しした価格表は2022年モデルのものです。今オーダーを仮にいただいたとしても、2022年モデルをご納車することが難しいかもしれません。その場合は、予約自体は有効なのですが、価格は2023年モデルのものになってしまいます。
どれくらい値段が変わるかは現時点ではまだわかりませんが、それをご理解いただいたうえでオーダーを入れます、という誓約書のようなものを大変恐縮ながら頂戴しております」とのこと。噂どおり、2022年モデルは既に完売しているということのようだ。
「では今オーダーを入れたら納期はいつごろになるのですか?」と聞くと、答えるのがとても難しい、とのこと。やはり納期が後ズレして顧客を失望させたり、トラブルになるリスクを避けるために、目安であっても伝えないようにしているようだ。
「3月末に注文を締め切った、240台限定のプロトスペックはいつ納車になるんですか? 6月後半にも販売だと聞いていたのですが」と質問を変えてみたところ、「プロトスペックの納車も、ざっくり11月から12月ごろになる模様です」、と言われた。
新型フェアレディZの実車が街を走っているのを見られるのは、どうやら半年近く先になる模様だ。
■一番人気のグレードは最上級グレード バージョンSTの6速MT
イカズチイエローは目立ちすぎて他の色に比べるとやや人気が低いという
新型フェアレディZのグレード構成を復習しておく。エンジンは各グレード共通、V型6気筒3LツインターボエンジンのVR30DDTTで、最高出力は405ps、最大トルクは48.4kgmだ。
いわゆる「素」のグレードは、AT/MTとも車両本体価格524万1500円。18インチアルミホイールでシートの素材がファブリック、電動シートは装備されない。ドアトリムはトリコット。
それに次ぐグレードがバージョンT、ATのみの設定で車両本体価格568万7000円。シートは本革・スエード調ファブリックコンビシートとなり、BOSEサウンドシステムが装着される。アルミホイールは18インチだ。ドアトリムはスエード。
そして次がバージョンS、MTのみの設定で車両本体価格606万3200円。アルミホイールは19インチ、4輪アルミキャリパー対抗ピストンブレーキと機械式LSDがおごられ、BOSEサウンドシステムは装着されない。シートはファブリック、ドアトリムはトリコット。
ATのバージョンTはラグジュアリー志向、MTのバージョンSはスポーティ志向、という棲み分けになっている。
最上級グレードはバージョンST。AT/MTともに車両本体価格646万2500円。バージョンTとバージョンSのいいとこ取り、いわゆるフル装備、というものだ。
営業マンに一番人気のグレードを聞いたら、「バージョンSTのMTです」と即答された。オーダー全体の7、8割がたがバージョンSTで、次いでATのみ設定のバージョンT、その次がベースグレードだそうだ。
ちなみに全体でみたAT/MT比率は、全国のオーダーを見たわけではないが体感的にざっくり3対7でMTが多いイメージとのこと。
納車に時間がかかるのは、機能部品の生産が滞っているためで、特定のグレードだけ納車が早い、ということはないそうだ。
「外装色はセイランブルー(ダークブルーメタリック)が気に入っているんですが、一番人気はどの色ですか?」と聞いたところ、「なんとも言えないところではありますが、イカズチイエローはやや目立ちすぎで、他と比べると人気が低いですね。
やはり購入者は50代中心で、年齢層がやや上の方が多いせいだと思います。また最近ステルスグレーがさまざまなクルマで人気が高まっていて、Zも同様です。セイランブルーも人気があります」とのことだった。
その営業マンが最初に取ったオーダーが、50代前半の男性からのバージョンSTのMT、外装色はバーガンディーだという。
かつての240ZGのグランプリマルーンを彷彿とさせる、その名の通り熟成が進んだ赤ワインのような、茶色に近い緋色だ。まさにその色の240Zをレストアすることを1年ほど前に真剣に検討した筆者は、「よくわかっていらっしゃる」とつい言いそうになった。
バーガンディーのボディカラー
カタログの中の歴代モデルと最新モデルを並べた写真、これを見てディーラーにカタログもらいに行きたくなるオールドファンも必ずいると思う
■一番人気の最上級グレード、バージョンSTとAT専用バージョンTの見積もりはこちら!
バージョンST。セイランブルー/スーパーブラック 2トーン(特別塗装色、+17万6000円)。見積もり金額はメーカーオプション、諸費用込みで770万5926円となった
バージョンT(9速AT)。見積もり額は691万1426円となった
一番人気のバージョンSTの6速MT(ATも同価格)と、ATで人気を集めそうなバージョンTで、実際に見積書を作ってもらった。
カラーは特別塗装色のセイランブルーとブラックのツートン、2回目の車検までの新車保証延長と消耗品のメンテナンス、ドライブレコーダーと盗難防止アラーム、フロアマット、ボディコーティング、ホイールとナンバープレートロックなどのオプションをつけてもらった乗り出し価格は、こうなった。
乗り出し価格は左のバージョンST(6MT)と右のバージョンT(9AT)の見積書。バージョンSTは770万5926円と、かなり立派な出来上がりになる
●フェアレディZ バージョンST 2WD 6MT(11月登録)
メーカーオプション付き車両本体価格:663万8500円
販売諸費用(課税):7万5470円
販売諸費用(非課税)、メンテプロパック(17万7280円):17万7280円
税金保険料:25万6470円
車両代合計:719万6706円
販売諸費用等合計:509万2220円
お支払い合計:770万5926円
・付属品明細
ドライブレコーダー(フロント+リア):8万4800円
セキュリティ&セーフティパックプレミアム:7万8800円
ETC2セットアップ:3300円
Z34カーペットセット:9万3500円
Z34エクセレントセット:28万500円
ホイールロックセット:1万2026円
ナンバープレートロックNissanブランドロゴステッカー付き:5280円
・残価設定クレジット(ビッグバリュークレジット)
所要資金:570万5000円
お支払い回数:60回
初回お支払い金額:7万7900円
毎月お支払い金額:7万3200円
毎月お支払い回数:58回
ボーナスなし
最終回お支払い金額:238万9000円
分割払い手数料:100万7500円
クレジット支払い総額:671万2500円
実質年率:4.9%
バージョンST(6速MT)が770万5926円、バージョンTが691万1426円。ボディコーティングが28万円ちょっととやや高いことを差し引くと、最上級グレードの乗り出し価格は700万円台半ばということになる。
ちなみに残価設定ローンも利用可能だが、車両本体価格646万2500円のバージョンSTの場合、期間5年での残価の設定は230万円程度、残価率は30%台後半だ。やはり趣味性の高いクルマだとどうしてもやや低めの残価率の設定となってしまうのかもしれない。
だが5年後にそれよりも高い値段で売れるのであれば、自分で残価相当額を買い取って差額を得ることはできるので、念のため。
営業マンの口から競合車として名前が出た、トヨタスープラの最上級グレードRZの車両本体価格が731万3000円なので、やはりそこを意識した価格設定になっているのだろう。
また同様に、MTのスポーツカーであるポルシェ718ケイマンの車両本体価格は768万円となっている。ただしケイマンの場合、キーレスエントリーや安全装備などが全くついていない完全な「素」のモデルの価格なので、比較するのはややアンフェアかもしれない。
■開発担当者が営業マン向け説明会で語った、クルマ好きにアピールする胸アツ装備とは
話を聞いた営業マンは、日産グローバル本社でのフェアレディZの営業マン向け説明会に参加し、実車の運転席に座ってみたそうだ。
「実際にシートに座ると、フロントノーズが長く、やや足を投げ出すような独特のドライビングポジションで、やはり伝統的なZを感じました。ブースト計、ターボ回転計、電圧計の3連アナログメーターの形状や、エアコン吹き出し口など、昔からのZ好きの方が見るととても懐かしく思えるかもしれないです。」
非常にスパルタンに見える6速MTの運転席、EVに典型的に見られる「先進性」の演出を極力排除しているかのようだ
「個人的には、R35GT-Rでもメインのメーター類がアナログメーターだったのに、今回ディスプレイ表示になったところに、スポーツカーの時代の流れを感じました」。
そもそも電子制御が多くなっている上、コスト面、情報量など考えるとアナログメーターで表示することは困難になりつつあるのだろう
「また、ATのシフトレバーの形状がやや現代的なので、MT車の方が伝統的なスポーツカーのインテリアのイメージを保っていると思いました」とのことだった。
確かにATのシフトレバーのデザインは伝統的なスポーツカーのインテリアデザインの範疇からやや飛び出しているかもしれない。バージョンTの内装色レッド
営業マン向け説明会で、開発担当者からセールスポイントとして特にアツく語られた走りに関する機能装備は、「ローンチコントロール」と「アクティブ・サウンド・コントロール」だという。
「ローンチコントロールは、実際にどれだけの方が使われるかわかりませんが(笑)、ホイールスピンを抑えてタイヤのトラクション性能がフルに活かされ、どなたでもプロのレーサーのような最大の加速を得られる機能です。
MT/AT全車に装備されますが、特にMTの場合は、電子制御のおかげでアクセルを全開にしたままクラッチを切ってもオーバーレブすることがないため、ドライバーはクラッチ操作のみに集中できる、というハイテク機能です」
「騒音規制が世界的に厳しくなっていることへの対策や、クルマの性能が向上するにつれて剛性も上がり、その結果静粛性も高まっていることで、車内でエンジン音が聞こえづらくなってきています。
そのためスポーツカーを運転していても今ひとつ気持ちが盛り上がらなかったり、また逆に無用な空ぶかしなどをしてしまうドライバーも出てきています。
アクセル開度、エンジン回転数、現在のギアからドライバーの意図とアクセラレーション、Gの変化を読み取り、それに応じてスポーツサウンドを車内に発生させることで、スポーツカーのドライバーならではの気持ちの昂りを感じられる『アクティブ・サウンド・コントロール』は、スポーツカーであるZを運転するという体験に期待されるものを裏切らない、クルマ好きのための機能です」
合成的にエンジンノイズや排気音を車内に満たすことにはやや懐疑的だった筆者も、こう言われると、環境への意識が強まるご時勢で、絶滅危惧種(?)のスポーツカーが生き延びるためには、こういう機能も必要なのかもしれない、と思い至った。
■絶滅危惧種のガソリンエンジンのスポーツカーを手に入れられる最後のチャンス?
新型Zに女性が乗ったら写真のように超カッコいい!
カタログの写真に添えられたコピーの一つが、筆者の目を引いた。
スポーツカーは不便か
スポーツカーは時代遅れか
それがなんだというのだ
本物の幸福がここにある
アナクロな感じもしなくはないけれど、おそらく間違っていない気がした。
最高に熟成が進んだ内燃機関を備えたスポーツカーを操り、自らドライビングの意図を表現する、という、これまで当たり前にできたことが近い将来できなくなるかもしれないことを考えると、気になっている方は新型フェアレディZにオーダーストップがかかる前に、ディーラーに早く足を運んだ方がいいかもしれない。
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中には・・・
そこんとこどうなの。