スポーツカーにもいろいろなモデルが存在するが、ここでは性格の異なる6気筒エンジンを搭載する異色のトリオ、BMW M4/ロータス エミーラ/ポルシェ 718 ケイマン GTS 4.0、それぞれが見せる個性をシーンごとに探った。ポルシェとBMWは言わずもがなだが、ロータスが手掛ける最新ミッドシップスポーツカーのエミーラが放つオーラもただものではない。【後編】(Motor Magazine 2023年10月号より)
荒れた路面のこなし方とドライビングの違い
次なる試乗ステージとして、ワインディングロードに入る。アップダウンは穏やかだが路面のうねり、ひび割れ、不整な舗装面など、道路としての条件は悪いものの、クルマをチェックするにはうってつけのコースだと言える。
【前編】V型と直列と水平対向の「6気筒エンジン車」、BMW M4/ロータス エミーラ V6/ポルシェ 718 ケイマン GTS 4.0の個性を探る
ここをエミーラで走る際には、3速がメインになる。2速だとエンジン回転数が高めで鋭い加速をするが、3速で走行しても十分な加速力を感じられる。これは、低回転域から太いトルクを発生させることができるエンジンだからだ。その時のサウンドは2速でも良いが、3速でも良い感じの音を楽しめる。
最近は、欧州のパスバイノイズ(通過騒音)規制が厳しくなっていて、加速しながらマイクの前を通過するときの騒音を測っているからなのか、エミーラの音は1枚ヴェールを掛けたような雰囲気のもので破裂音のようなうるささはない。インストルメントパネルの上部に横へ伸びるタコメーターがあるが、エンジン音だけで回転数もリミットもわかる。
アクセルペダルの操作に対してエンジンの反応は遅れなくついてくるので、気持ち良く走れる。コーナー入口でのターンインは、そのままハンドルを切っても曲がるが、緩いブレーキでちょっと前荷重にすることでライントレース性は格段に良くなる。路面のうねりがあってもサスペンションが動いてうまく吸収してくれるので、ラインを乱されることがないのはすごく良い。ワインディングロードでは、微小操舵域での弾性感はまったく感じることなく走れた。
ケイマンでこのやや荒れ気味のワインディングロードを走らせると、ちょっとしたクルマとの格闘が必要であった。サスペンションが硬いため、路面の不整によってやや飛ぶ感じになってしまうからだ。路面がうねっている場所では、各タイヤの接地圧が急激に大きく変化することで進路が乱されることが多かった。
「ドイツやオーストリアの道なら、ここほどには荒れていないからもっとスムーズに走れるはずだ」とクルマが言っている気がした。それでもエンジンのアクセルペダル操作に対する反応は、さすが自然吸気式だけあって遅れがなくリニアで良かった。
M4はワインディングロードでも、操舵の最初の1mmから反応している感じで、ノーズの入りはすごく良い。ミッドシップの2台に乗った後でM4を走らせてもターンインの素晴らしさに感激する。このワインディングロードを走る際のドライブモードは、エンジン=スポーツ、シャシ=スポーツ、ハンドル=コンフォート、ブレーキ=スポーツが合っていそうだ。
うねり路面ではバネ上の動きが大きくなってしまうことがあるが、シャシ=スポーツを選べばダンパーが硬めになりボディの大きな上下動がなくなり落ちついてくれる。エンジンは強大なトルクのお蔭で余裕たっぷりだが、高めのギアだとアクセルペダル操作に対する反応遅れが気になってくる。
つまり、このワインディングロードを一番楽しく走れたのはエミーラであった。
ミッドシップの両雄がサーキットで見せた本領
さて、次なる場面はサーキットである。エミーラでスパ西浦モーターパークのようなミニサーキットをどのように走るかは、興味があった。背の低いスポーツカーというカテゴリーで見ると運転が難しそうだと想像するかもしれないが、実は非常に安定しており、安心して走ることができた。
ワインディングロードを走るときよりも安定感が高く、リアが滑り出す感じがない。決してジャジャ馬ではなく、乗りやすいクルマという印象が残った。ブレーキのペダルフィールはしっかりしているし、その効きも良く、さらにコントロール性も文句なしだ。
エンジンは6500rpmからタコメーターの色が変わるが、伸びが滑らかで気持ち良く走れる。右足を踏み込んでいけば2000rpmくらいから6500rpmオーバーまで、トルク感は同じなままに一直線で伸びていってくれる。
ケイマンは、サーキットでエンジン音を存分に聴かせてくれる。各気筒での爆発音が聞こえるかのようで、エンジン回転数が上昇するとそれが細かくなっていく。走っているとタコメーターを見なくても回転数がわかるようになり、シフトアップもシフトダウンも耳で判断するようになる。
タイトターンでは2速で立ち上がるが、意外と簡単にリアが滑り出す。この前に乗っていたのがエミーラだからそう感じることもあるが、アクセルペダルをオフの状態から急に深く踏み込むとリアが出やすくなる。カーブをターンインした後、スムーズに立ち上がるためにアクセルペダルのコントロールがうまく行えれば、良いタイムが出せると思う。リアが滑り出すギリギリ直前のところまでアクセルペダルを踏み込めたら、カウンターステアやアクセルペダルを戻すことなく、楽しく走れる。
ドライブモードをノーマルからスポーツへと切り替えても、コーナー立ち上がりでのアクセルペダルの踏み方を丁寧にすることに変わりはない。さらにスポーツプラスにすると、エンジン音があたかもレーシングカーであるかのようなサーキットで気持ちの良い音になり、吸気音、排気音、燃焼室での破裂音などが混じり合って、ドライバーに聴かせてくれる。
とにかく気持ち良い走りで、第1コーナーへ進入するストレートエンドのブレーキング開始時のスピードは172km/h、これはエミーラより3km/h速かった。
絶大なる安定感の高さ。Mならではのセッティング
M4のエンジン音は回転数により微妙に変化し、盛り上がりのあるレーシングカーのものに近いエキゾーストノートだ。M4の場合も、タコメーターを見なくても音でかなり正確にシフトポイントが掴める。サーキットではエンジン回転数が高いのでワインディングロードで感じた高めのギアで走行している時のターボラグのような遅れも感じない。ドライブモードをスポーツに切り替えるとバネ上の不要な揺れが収まり、挙動が落ち着いて走りやすくなった。
ターンイン時には、ハンドルが結構効いている。ハンドルを切れば切るだけどんどん曲がってくれるし、グリップが抜ける感じにならない。ターンインの後、アクセルペダルを踏み込んでいった場合でも安定感が高いのは、xDriveによる4WDだからだ。
ちなみに第1コーナー入口でのスピードは185km/hだった。エンジンパワーの強さとトラクションが強くなるxDriveの恩恵だ。
DSCをオフにして4WDスポーツの走行モードを選ぶと、アクセルオンでちょうど良い感じでリアが少しスライドしながら立ち上がっていく。4WDであってもドライバーの腕に合わせて走りを楽しむことができるのは、いかにもBMWらしいセッティングだ。
走る場面ごとで変化したそれぞれの際立つ特徴
こうやって6気筒エンジンを搭載したスポーツモデル3台を走り比べてみたわけだが、一般道、高速道路、ワインディングロード、サーキットとそれぞれの特徴が出てきておもしろかった。
一般道で正確なライントレースができて楽しかったのはM4。ワインディングロードで快適で楽しかったのはエミーラ、サーキットを走るならばケイマンという特色が出た。
この3モデルとも、次の世代になったら電動化されるであろうことは間違いない。M4はエンジンに電気モーターを付けたMHEVかもしれないが、エミーラとケイマンはBEVになってしまうと言われている。
純粋なICE(内燃機関=エンジン)を楽しむためには、いま購入を考える必要があるというのもまた事実なのである。(文:こもだきよし/写真:永元秀和、井上雅行)
ロータス エミーラV6ファーストエディション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4413×1895×1226mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1500kg
●エンジン:V6 DOHCスーパーチャージャー
●総排気量:3456cc
●最高出力:298kW(405ps)/6800rpm
●最大トルク:420Nm/2700-6700rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTPモード燃費:8.8km/L
●タイヤサイズ:前245/35R20、後295/30R20
●車両価格(税込):1573万円
BMW M4 コンペティションM xDrive クーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4805×1885×1395mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1790kg
●エンジン:直6 DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
●最大トルク:650Nm/2750-5500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:9.8km/L
●タイヤサイズ:前275/35R19、後285/30R20
●車両価格(税込):1440万円
ポルシェ 718ケイマン GTS 4.0 主要諸元
●全長×全幅×全高:4405×1801×1276mm
●ホイールベース:2475mm
●車両重量:1470kg
●エンジン:対6 DOHC
●総排気量:3995cc
●最高出力:294kW(400ps)/7000rpm
●最大トルク:430Nm/5500rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●NEDCモード燃費:10.4km/L
●タイヤサイズ:前235/35R20、後265/35R20
●車両価格(税込):1273万6000円
[ アルバム : 6気筒エンジン編/Vと水平対向とストレート(後編) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
せめてFRならその差も僅かになるところ
基が四駆設計でもないから重くてハンドリングが生きない
小回りも効かないしあのデザインでは良いところない