クルマやオートバイにとってなくてはならない存在である“タイヤ”。しかし、我々はこのタイヤについてどれくらいのことを知っているのだろうか? 知っているようで、意外に知らないことが多いのではないか? 今回は横浜ゴムの協力を得て、“タイヤとは一体何か”、その本質に迫っていこうと思う。
今回の取材で話を伺ったのは横浜ゴムの秋山氏。スーパーフォーミュラやスーパーGTの現場で常に最前線に立ち、“タイヤ”に目を光らせている。
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そんな秋山氏に我々は「今さら聞けない」質問をぶつけてみた。
ーーそもそもタイヤとは何なのでしょう?
「いきなり難しい質問で回答になるかどうか分かりませんが……通常タイヤといえばゴムタイヤを指します。自動車用が代表的ですが、航空機用や建設機械・産業車両用などもあります」
「また、タイヤは大きくは空気入りタイヤと空気を入れないソリッドタイヤに分けられます。空気入りタイヤは、かつてチューブを入れてそこに空気を入れるチューブタイヤが主流でしたが、現在は直接空気を入れるチューブレスタイヤが普及しています」
ーーなぜタイヤが必要なのでしょうか?
「基本的には“移動”のためだと考えています。一般的にタイヤは次の機能を担っているとされていますので、これを満たすために必要なのだと考えても良いかもしれません。『自動車の荷重を支える(荷重負荷性能)』、『駆動力・制動力を路面に伝える(制駆動性能)』、『路面からの衝撃を緩和する(乗り心地性能)』、『方向を転換・維持する(操縦安定性能)』です」
ーーなぜタイヤは黒いのでしょうか?
「これは皆さんご存知かもしれませんが、カーボンを配合しているからです。ではなぜカーボンを配合しているかといえば、一番の理由は強度を出すためです。他にも耐候性向上や導電性確保の役割も担っています。タイヤに導電性が無いと(アースできないと)、マンホールの上を通過する際にラジオにノイズが発生するといった現象が生じてしまいます。この対策として、タイヤにはある程度の導電性が求められるわけです」
【“タイヤ=ゴム”という訳ではない】
普通「タイヤ」と聞くと多くの人が「ゴムでできているもの」と連想するだろう。あながち間違いという訳ではないが、改めてタイヤに使われている素材について尋ねると、このような回答が返ってきた。
「タイヤはゴム、金属、繊維で構成される構造体、圧力容器と言えます。ではなぜ主にゴムが使われているかといえば、ゴムは粘性と弾性を有していて、破断までの伸びが大きいという特性を持っているからです。また、カーボンによる補強で必要な強度を出すことが可能です。このような機能を有する素材はゴムだけです。代替品が他には無いということが、タイヤの様々な部分にゴムが使用されている理由です」
タイヤは製品として出来上がった“外見”だけをみるとゴムだけで構成されているように見えるが、その表面部分「トレッド」を剥がすと繊維や金属で構成された基本骨格部分が姿を現すのだ。
「タイヤを構成する主要部分は『カーカス』、『ベルト』、『トレッド』、『サイドウォール』、『ビードワイヤー』などです」
「カーカスは圧力容器の主材で、ナイロン、レーヨン、ポリエステルなどのコードを並べてゴムでシート状にしたものです。このコードが斜めに交差するように重ね合わされているものを“バイアスタイヤ”、タイヤの周方向と直角に配列されているもの(横から見ると放射状になるもの)を“ラジアルタイヤ”と呼びます」
「ベルトはトレッドの変形や衝撃を吸収・分散するためのコード層。トレッドは直接路面に触れるゴム層で、排水や放熱のため溝(トレッドパターン)が設けられています」
「サイドウォールはタイヤの両側面で、走行中は路面の凸凹によって激しく屈曲しています。走行性能や乗心地にも影響し、カーカスを保護する役目も担っています。ビードワイヤーはタイヤをホイールに固定するためのリング状の鋼線です」
こうして一連の説明からも分かる通り「タイヤ=ゴム」ではない。“ゴムで覆われた構造物”と言えるだろう。
ちなみにタイヤの各パーツには、ゴムやカーボン以外にも様々なものを配合。それらの混ぜ合わせ方や各材料の配合量によってキャラクターを作り分けているという。それがレースの世界でもよく耳にする“コンパウンド”というものだ。
「カーボンにも色々なグレードがあり、粒径や配合量により変わりますので、用途に応じて使い分けています」
「またゴムも天然ゴムや合成ゴムなどがあり、その配合量によっても剛性が変わります。一般タイヤでは天然ゴムも使用されていますが、レーシングタイヤでは基本的に合成ゴムを使用しています」
それでは、乗用車用の一般タイヤとモータースポーツの競技用に製造されるレーシングタイヤはどのような違いがあるのだろうか……。(次回に続く)
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