スカイライン伝統の直列6気筒エンジンを搭載するトップモデルが「GT」。しかし、6代目となるR30型スカイラインには、伝統の最上級モデルである2000GTとは別に、直列4気筒DOHCエンジンを搭載したスポーツグレード「2000RS」がラインナップされた。
ターボエンジンの追加で190psを発揮した2000ターボRSには「史上最強のスカイライン」のキャッチコピーがつけられるなど、「GT」以上にスカイラインのイメージリーダーになった。しかし、その後のスカイラインには継承されなかった「RS」はどうして生まれたのか?
逃亡から1年半 カルロス・ゴーンは日産の救世主だったのか? それとも疫病神だったのか??
「スカイライン」だからこそ特別な思いがあって誕生した、R30型スカイライン“RS”の歴史を振り返る。
文/片岡英明 写真/NISSAN
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■GT-R並みのエンジンを持つスカイラインが求められた
1977年8月に発売された5代目スカイライン、通称ジャパン。モデル末期となる1980年にはL20E型、直列6気筒ターボエンジン(145ps/21.0 kgm)を積んだ2000ターボGT-E・Sを設定
1970年代後半、高性能エンジンを積むスポーツモデルは厳しい排ガス規制と2度目のオイルショックによって生存が危ぶまれた。スポーティな走りが自慢のスカイラインも鋭い牙を抜かれ、ライバルから「名ばかりのGT」と揶揄されるようになる。
だが、1980年代を前に排ガス対策のめどが立ち、ターボチャージャーに代表される過給システムも実用化できそうな状況となってきた。日産は1979年秋に430型セドリックとグロリアに日本初のターボエンジン搭載車を設定している。
通称「ジャパン」と呼ばれた5代目のスカイラインは、モデル末期にターボ搭載車を設定。GTにふさわしい冴えた走りを取り戻した。だが、多くの人がイメージする最高のスカイラインは、高回転まで気持ちよく回り、切れ味も鋭いDOHC4バルブエンジンを積む2000GT-Rだ。
当然、開発主管の桜井眞一郎さんも、6代目のR30スカイラインを出す時に、イメージリーダーのGT-Rを復活させたいと考えていた。
スカイライン開発責任者の桜井眞一郎氏。スカイラインの初代から7代目(R31型)までの開発に携わった
■限られた予算でGT-Rに匹敵する走りを目指した
GT-Rは、2Lの直列6気筒DOHC4バルブエンジンを積むことが開発者やファンの間では暗黙の了解となっている。だが、当時の日産にはDOHC4バルブの6気筒エンジンはなかった。
新設計すればいいのだが、排ガス対策に多額の費用を投じたため、開発する予算はない。そこで苦肉の策として、既存エンジンをベースに直列4気筒DOHC4バルブエンジンを開発することにした。
開発に着手した6代目スカイラインは、コスト低減のために4気筒モデルも6気筒エンジンを積む2000GTもホイールベースを同じにし、ボンネットの長さも揃えている。だから4気筒でもオーナーは胸を張って乗ることができるだろう。パワーユニットの選択肢は2つだ。
ひとつは、日産が商用車に搭載しているタフなH20型4気筒OHVをベースにDOHC4バルブ化することである。もうひとつは旧プリンスの設計陣が手がけたG20型4気筒SOHCを使うことだ。この2つのなかからH20型が選ばれた。
■R30型発売時に直4エンジンのRSを設定
1981年8月に発売された6代目、R30型スカイライン 写真は2000GT-E·S ポールニューマンバージョン
直列6気筒SOHCエンジンを搭載する歴代のGT系グレードに加え、新たに直4DOHCエンジンを搭載する2000RSが用意された
6代目は1981年8月に正式発表されている。型式はR30だ。今までの系統と違う型式を与え、外観の差別化も最小とした。伝統のサーフィンラインもない。キャッチフレーズは「ニュー愛のスカイライン」だ。イメージキャラクターには、レース好きとして知られる俳優のポール・ニューマンを起用している。
4気筒エンジンを積む「TI」は1.8LのZ18S型と2LのZ20E型を積む。2000GT系は熟成されたL20型直列6気筒SOHCで、自然吸気エンジンとパワフルなターボを設定した。また、直列6気筒ディーゼルもある。
そして同年10月に真打ちがベールを脱いだ。新たな伝説を生むために送り出された硬派のスポーツモデルは「2000RS」を名乗った。4気筒エンジンを積んでいるためGTのネーミングは与えられなかったが、紛れもなくスカイラインのイメージリーダーだ。
言うまでもなく「RS」はレーシング・スポーツの意味で、型式は「DR30」になる。エクステリアは、3本スリットのフロントマスクや専用のアルミホイールが目を引いた。セダンRSは「羊の皮を被った狼」そのものである。
搭載するのは「FJ20E型」と名付けられた直列4気筒DOHC4バルブエンジンだ。世界初となる気筒別順次噴射方式のシーケンシャルインジェクションや電子式エンジン集中制御システムのECCSを採用した。
燃焼室は高効率のペントルーフ型、カムカバーは鮮やかなレッドの結晶塗装としている。特徴のひとつは、レース界を席捲していたBMWの「M12」エンジンを意識してボアとストロークを決めたことだ。ボアは89.0mm、ストロークは80.0mmで、総排気量は1990ccになる。
最高出力はグロス150ps/6000rpm、最大トルクは18.5kgm/4800rpmと、当時の2Lエンジンとしては最強だった。トランスミッションは2速ギアをハイギアード化した5速MTを組み合わせている。
サスペンションはフロントがマクファーソンスストラット、リアはセミトレーリングアームの4輪独立懸架で、減衰力を2段階に切り替えられるフットセレクターを標準装備した。
タイヤは195/70R14サイズのミシュラン製ラジアルタイヤが標準だ。だが、60偏平タイヤが解禁となったため、1982年10月に15インチの60タイヤに履き替えている。
■"史上最強のスカイライン"2000ターボRSが誕生
1983年8月にマイナーチェンジを受けた後期型はグリルレスのデザインが特徴的で、鉄仮面と呼ばれた。写真は1984年2月登場の2000ターボインタークーラーRS-X(通称ターボC)
RSターボCに搭載された2L、直列4気筒のFJ20E・T型DOHCエンジン。最高出力は205ps/25.0kgmとライバル車を圧倒
1983年2月、第2弾としてターボで武装した「2000ターボRS」を仲間に加えた。ギャレット・エアリサーチ社のT03型タービンを装着したFJ20E・T型エンジンは、グロス190ps/6400rpm、23.0kgm/4800rpmを絞り出す。
トランスミッションは改良型の5速MTだ。カタログに使われたキャッチコピーは「史上最強のスカイライン」と、過激なフレーズだった。
8月にマイナーチェンジを行い、薄型ヘッドライトにグリルレスフェイスの顔立ちとなっている。これが通称「鉄仮面」だ。また、パワーステアリングやパワーウインドウ、カセットコンポ、電動ランバーサポートなどを追加した豪華仕様のターボRS-Xも誕生する。また、3速ATの2000RS-Xも加わった。
そして1984年2月には最終型へと進化し、空冷式インタークーラーを追加した。これが「RSターボC」だ。圧縮比を8.0から8.5に高め、過給圧も0.46 kg/平方センチメートルから0.53kg/平方センチメートルに高めている。最高出力はグロス205ps/6400rpm、最大トルクも25.0kgm/4400rpmに向上し、ライバルたちを圧倒した。
RSターボCは低回転域から厚みのあるトルクを発生し、扱いやすさを増したが、アクセルを強く踏み込むと凶暴な狼に変身して刺激的な加速を見せつける。
R30スカイラインはシルエット・フォーミュラでレース界にカムバックし、ターボRSの登場後はワークス体制でレースに復帰している。直列6気筒エンジンと比べると振動は大きかったし、騒々しいなど、ガサツな印象だ。
だが、この荒々しさ、猛々しさを人間臭いと感じた人も多かった。だから今も熱狂的なファンに愛され続けている。
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みんなのコメント
足回りの改造から、インタークラーを付けたり、タービン替えたり、ROMも書き換えたり・・・
欠点もいっぱいあったが、基本、自分でイジって楽しんでた。
今のクルマにときめかないのは完成され過ぎちゃって手を加えるところがなく「乗りこなす」というより「乗らされてる」ってところかな。