この2年間で9車種が絶版となったホンダ。2021年はアクティ、オデッセイ、レジェンド、クラリティが生産終了。2022年3月にS660が生産終了したことが記憶に新しい。さらに12月には、2代目NSXの生産終了が決定している。
また、当サイトで既報のとおり、2021年12月に開催された販売店向けの「ホンダ・ビジネスミーティング」でCR-V、インサイト、シャトルの3車種も、2022年度に順次生産終了することが表明された模様だ。
消滅&間もなく絶版!! 元ホンダ営業マンが惜しむ「残してほしかった」モデル 3選
「えっ、このクルマもなくなってしまうの?」と嘆くホンダファンも多いのではなかろうか。本稿では元ホンダディーラー営業マンの筆者が、販売現場からの目線で”これは残してほしかった…”という絶版車を選んでいく。名車たちの絶頂期を、改めて回顧していこう。
文/木村俊之、写真/HONDA
CR-V(1995年~2016年一時販売終了・2018年~2022年生産終了予定)
2018年に日本での発売が再開された5代目CR-V。7人乗りの3列シート仕様を設定したガソリンモデルのほか、CR-Vとしては初めてとなるハイブリッドモデルが用意された
1995年にクリエイティブ・ムーバー(生活創造車)第2弾として生まれ、現代SUVの先駆けとなったCR-V。クロカンSUVが主流だった当時としては珍しく、悪路走破性よりも居住性、実用性を重視したモデルである。
2016年に一度日本市場から姿を消したが、2018年に日本での発売が再開された。これからというときに、生産終了がアナウンスされるのは惜しいクルマだ。
5代目ユーザーからは、「静かで高級車のようなトルクフルな走りに驚かされた」「7人乗りが必要なときも乗ることができて利便性が抜群」と好評だった。
いっぽうで、価格や質感を懸念する声も多い。ライバル車であるRAV4と比べると価格は割高で、CX-8やハリアーに近い。しかし、価格に対して内外装の見劣り感は否めない。ただ、「快適に自由に走り回る乗りもの」として、セダンのような快適性、ミニバンの実用性、そして高い機動性を併せ持つ姿は、CR-Vのコンセプトそのものだったと思う。
ホンダらしいクルマだからこそ、日本市場からの撤退は残念だ。
シャトル(2015年~2022年生産終了予定)
圧倒的な居住空間とコストパフォーマンスに定評のあるシャトル。ライバルを見渡しても、5ナンバーワゴンはトヨタ・カローラフィールダーくらいで、他にシャトルの変わりになる車種は見当たらない。
コンパクトワゴンでありながら、ラゲッジスペースが570Lと積載能力は国産ステーションワゴンでトップクラス。「フィットでは少し手狭だな」「車中泊ができる広さが欲しい」というユーザーから支持を集め、エントリー価格が約180万円で安全装備も充実したコスパの高さにも注目が集まった。
エクステリアでは、「フロントマスクがスポーティーでカッコいい」と言われる反面、「フィットを無理やり長くしたようなデザインだ」と不評の声もある。
ただ、ミニバンに近いシャトルは、セダンベースのワゴンと比べると、頭上スペースが広く圧迫感が少ない。これがシャトルの特徴であり、魅力の1つだろう。
ボディサイズが拡大傾向にあるなかで、5ナンバーワゴンは希少な存在だ。ホンダラインナップからシャトルが消えると、フィットの次に大きなクルマはフリードとなってしまう。手頃なサイズのシャトルがあることで、販売現場も大いに助かっていたはず。ホンダディーラーの落胆も大きいだろう。
オデッセイ(1994年~2021年生産終了)
セダンのような運転感覚と3列シートの使い勝手で、人気を集めた初代オデッセイ。5年間で43万3028台を売り上げ、国産ミニバンを代表するモデルとなった
ミニバンブームの火付け役として一世風靡したオデッセイ。2021年12月に生産終了となったのは、まだ記憶に新しい。
クリエイティブ・ムーバーの切込隊長として登場したオデッセイは、日本自動車史に残るクルマだ。その特長は、低床フロア、低重心、低ルーフから生まれる居住性の良さとセダン感覚で運転できるところにある。
発売当時「スライドドアもなく、中途半端な車高のミニバンは売れない」と懸念されていたそうだ。しかし、セダン並みの走行性能とスライドドアではないデザインの斬新さが大人気となって、ホンダの屋台骨となった。
5台目からは車高を上げ、シリーズ初のスライドドアを採用。これまでのオデッセイのイメージを刷新させている。
居住性と快適性の高さが求められるミニバンだからこそ、低床フロアを持つホンダに分がある。その低床フロアが最大限に活躍するのは、オデッセイのようなLサイズミニバンだ。低い床から生まれる広大な室内空間は、居住性と快適性というミニバンのニーズにピッタリと合う。
27年間ホンダを支え続けてきたオデッセイが退くことは悲しいかぎりだ。その反面、新たな後継車の誕生も楽しみである。オデッセイで磨き上げた技術をつめ込み、実用性も兼ね備えたLサイズミニバンの登場に期待したい。
絶版車と聞くと完全に姿を消すイメージがあるが、日本市場からの撤退のみで、海外では生産・販売を続けられるモデルが多いのがホンダでもある。日本で活躍し、心に残っているクルマたちが去っていくのは寂しいが、海外で生き続けるクルマには、日本からエールを送り続けたい。
シビックのように、また日本で再販されるときには、ひと回り大きくなった姿が見られることを期待し、再登場の喜びに浸りたいものだ。絶版車の裏には、新しいステージへ向かうホンダの姿が見え隠れしている。
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