新型レジェンドが、レベル3自動運転車として国内初の型式認定を取得、レベル2技術搭載車でも、条件付きながらハンズオフ運転が可能になるなど「自動運転」の魅力が次第に身近なものになりつつある。高度な運転支援技術が普及していく一方でちょっと気になるのは、「万が一」の時の対応だろう。もしも「クルマにお任せ」で走っている時に事故を起こしてしまったら「責任は誰にある?」「保険はちゃんと使える??」。
乗ってみたい人は多い。一方で「誤作動」や「責任」問題への不安も
2020年11月、「Honda SENSING Elite」を搭載した新型レジェンドが、型式認定を取得した。2021年3月には正式発売となり、自動運転レベル3相当の車両が初めて、大手を振って公道を走れるようになったわけだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
いわゆるレベル1、レベル2に相当するADAS(先進運転支援システム)は今や、軽自動車から高級SUVに至るまで、多くの車種で搭載が進んでいる。レベル2でもACCやLKAとの高度な連携によって、一定条件のもとで運転中にハンドルから手を放すことができる「ハンズオフ」技術の採用が、国産ブランドでも拡大しつつある。
そして新たに、限定された条件下ながらシステムがすべての運転タスクを実施する「レベル3」相当の搭載車が「買える」状況になったことで、安全や先進技術に強い関心を持つドライバーががぜん興味を持つのは、自然なことだ。
実は、そうした「意識高い系」だけでなくより広い層のドライバーたちが、レベル3以上の自動運転車に期待を寄せている。少し前のことではあるが、旅行事業とともにライフイノベーション事業なども手掛ける株式会社エアトリが実施した意識調査の結果が、興味深い。
20代以上の男女1086人を対象に行った調査の結果を見ると、自動運転車に対する認知度は高く、機会があれば乗ってみたい、と考えている人は、全体の6割以上に上っている。その多くが、交通事故の減少をメリットとしてとらえながら、高齢者が移動する負担の軽減や運転そのもののストレス低減などの効果も期待しているという。
一方で、自動運転の実現に対してはほぼすべての回答者が不安や懸念される側面も浮き彫りになっている。中でも「自動運転に対して不安に感じる事はなんですか?」という設問に対する回答(複数回答可)を見ると、もっとも多いのは「機能の誤作動」、次に「事故発生時の責任の所在」が懸念材料になっていることがわかった。
レベル3でも、運転者には注意責任が求められている
そんな懸念を象徴するような事故(というか事件)はすでに、現実のものになっている。平成30年(2018年)4月に神奈川県綾瀬市付近の東名高速道路上り線で発生した多重衝突事故では、死傷者が出たことから刑事裁判が開かれた。主な争点となったのは、レベル2相当の「自動運転支援システムの誤作動」と関連する「責任の所在」だ。
■レベル2相当の自動運転車による事故の概容
●事件番号:平成30年(わ)第1459号
●罪名:過失運転致死傷
●被告:自動運転レベル2相当の自動運転車を運転していたドライバー
●事件の概容:平成30年(2018年)4月、東名高速道路上り線綾瀬市付近において発生していた追突事故の現場に、被告運転の車両が衝突、3人を死傷させた。
●争点:「クルマに装備されていた自動運転支援システムの誤作動」などが原因であるとする、弁護側の主張の妥当性
●判決:禁固3年
●執行猶予5年の有罪判決・判決理由:予備的素因の運転中止義務違反を認定。_加入していた任意保険で_被害者との示談交渉が進んでいることなどから、情状酌量となった
●判決理由補足:裁判長は「レベル2の自動化技術では適切な動作をしないことを認識していた。加えて、前方を注視していれば衝突を予見して回避することができた」などと指摘。
※Rakuten BLOG 「きょうの判決(2020年3月31日・横浜地裁)」より
判決では、少なくともレベル2相当の自動運転車の場合は運転者に責任があることが認められている。要は、運転者はちゃんと前方を注視せず、危険を予見し回避する義務を怠った=責任ありと判断されたわけだ。
奇しくもこの事故の発生と同時期の2018年4月17日に、内閣に設けられた高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議)の策定による「自動運転に関わる制度整備大綱」が公表されているが、こちらでも、レベル3相当の自動運転車が事故を起こした場合の基本的な責任は、運転者など(運行供用者)にあると規定された。
大綱では2020年から2025年までの期間を、自動運転が社会実装(研究開発によって得られた知識・製品・サービスを、実社会で活用すること)されるまでの「過渡期」ととらえている。時間を経て普及する中で、自動運転の目的や基本的考え方(レベルの基準なども含めて)、車両の安全基準や交通ルールなどの道路交通関連法規についての検討課題などが挙げられた。
その後、ほどなくしてこの大綱を受けた技術的要件の制度整備が、道路運送車両法を中心に進められた。2018年9月には、国土交通省自動車局が「自動運転車の安全技術ガイドライン」を決定。それに基づき、2019年5月には道路運送車両法が改正(公布)され、レベル3に対応することになった(2020年4月1日から施行)。
そこでは、自動運転レベル3を実現するシステム保安基準対象装置として規定、最低限必要な構成要件も定められた。同時に道路交通法第七十一条の四の二では、自動運転システムを利用する適正な使用条件が満たされないときは、速やかに運転操作を行う義務が課せられることが罰則付きで明記されている。つまりは「クルマ任せ」の時でも、運転者は常に不測の事態に備えて「いつでも運転を行える状態」でいるべし、ということになる。
■道路交通法(自動運行装置を備えている自動車の運転者の遵守事項等)
第七十一条の四の二 自動運行装置を備えている自動車の運転者は、当該自動運行装置に係る使用条件(道路運送車両法第四十一条第二十項に規定する条件をいう。次項第二号において同じ。)を満たさない場合においては、当該自動運行装置を使用して当該自動車を運転してはならない。
2 自動運行装置を備えている自動車の運転者が当該自動運行装置を使用して当該自動車を運転する場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該運転者については、第七十一条第五号の五の規定(いわゆるながら運転の禁止:編集部注)は、適用しない。
一 当該自動車が整備不良車両に該当しないこと。
二 当該自動運行装置に係る使用条件を満たしていること。
三 当該運転者が、前二号のいずれかに該当しなくなつた場合において、直ちに、そのことを認知するとともに、当該自動運行装置以外の当該自動車の装置を確実に操作することができる状態にあること。(罰則 第一項については第百十九条第一項第十六号、同条第三項)
自動運転モードの分だけ保険料が安くなる「自動車保険」の新種も
横浜地裁の判決の中でもう1点注目したいのはすでに、加入していた任意保険を使った示談交渉が進んでいたところだろう。民事責任については自動車損害賠償保障法の解釈として、従来通り「運行供用者および運転者」が責任を負うことになっていることから、いわゆる自賠責保険もそれに基づいて扱われる。運行供用者や運転者以外に被害を被った相手に対しては、補償の対象となるわけだ。自損事故の場合も従来どおりで、任意保険による対応が求められる。
なにより、まずは被害者の利益(つまり補償)が優先されなければならない。だがさまざまな形で運転者をサポートするシステムが普及していくにつれて、単純に事故当事者同士の責任按分だけを判断するのでは難しいケースも発生しうる。メーカーだけでなくシステムを開発したソフトウェア事業者なども賠償義務者として考えられることから、「誰が責任を負うべきなのか確定する」までに時間がかかる可能性も高い。
そうした状況にあっても被害者救済を迅速に進めるために、東京海上日動火災保険株式会社が2017年4月から「被害者救済費用等補償特約」の提供をスタート、他の損害保険会社からも同様の商品がリリースされている。実質的にはこれが、自動運転に関連する業界初の保険商品と言われている。
自動運転車に対応した任意保険の概容については、「損害保険料率算出機構(略称:GIROJ)」が2020年3月に取りまとめた冊子「自動運転における損害賠償責任と保険」の一項目、「自動運転に対応した自動車保険」の記述がわかりやすい。
■自動運転に対応した自動車保険とは
自動運転システムの欠陥やハッキングにより事故が発生した場合、ドライバー等の出来人の有無が判明するまでには時間を要すると想定されることから、これまでの自動車保険では迅速な被害者救済を図ることができません。そのため、多くの保険会社では、事故発生当初に法律上の損害賠償責任が不明または存在しない場合でも、被害者の損害を補償する保険(被害者救済費用等補償特約:一部を除き一般的に自動付帯される)を販売しています。(損害保険料率算出機構「自動運転における損害賠償責任と保険」より抜粋)
2020年7月には、あいおいニッセイ同和損保が国内初の「自動運転モード」に対応した保険商品の提供開始を発表した。同社の「タフ・つながるクルマの保険」では、コネクテッドカーから取得される走行情報をもとに、自動運転モードが作動中の「走行距離・運転挙動」を運転分保険料に含まず、実質無料化されていた。
2020年11月には、やはり東京海上日動火災保険株式会社が自動運転中に事故が発生した場合を、いわゆる「ノーカウント事故」の対象範囲として解釈。保険を使っても、更新時の保険料に影響しない改定を行っている。これは、2021年4月以降に適用が始まる同社扱いのノンフリート自動車保険すべてを対象に、適用されている。
ちなみにオーナーカー向けではないが、移動サービスの実証実験事業者などに向けて「レベル4」まで対応した道路交通法の改正案が、2022年4月に国会で成立している。またやはりそうした自動運転移動サービス事業者向けの保険商品も、あいおいや損保ジャパンなどからすでに提供が始まっている。
あくまで「中立」であり精度の高い「記録」が必要だ
もっとも、こうした保険商品の付加的サービスや新商品はあくまでも迅速性を重視しているもので、運転者の責任をまるっとスルーしてしまうわけではない。一般化している「被害者救済費用等補償特約」でも、法律上の損害賠償責任がないことが認められなければ、補償してもらえないのだ。
■「被害者救済費用等補償特約」の概要
(1)補償内容
ご契約のお車に想定していない動作が生じたことにより事故が生じ(※1)、被保険者に
法律上の損害賠償責任がないことが認められた場合、被害者に生じた損害を被保険者が負担
するために支出する費用を補償します。(※2、※3、※4)
※1 客観的な事実により確認できる場合に限ります。
※2 被保険者に法律上の損害賠償責任が認められる場合、現行の賠償責任保険で補償します。
※3 本特約保険金を請求するか否かの決定は被保険者の選択によります。また、被害者に生じた損害額のうち、
被害者自身の過失により生じた損害額等を控除した額を保険金としてお支払いします。
※4 本特約により当社が保険金をお支払いした場合、当社は賠償義務者に対する損害賠償請求権を取得します。(東京海上日動火災保険株式会社リリースより抜粋/2016年11月8日)
「誤作動」の場合をはじめ、運転者が自分に責任がない、あるいは責任按分が少ないことを主張するためには、やはり事故直前から衝突時、その直後の運転状況やシステムの作動状態、クルマの挙動などの「記録」をしっかり残し、そこから何があったのかを証明することが必要なことは間違いない。
とくに刑事責任の有無と軽重が問われる案件に関して、自動運転車の場合は事故と被害に対する因果関係のあるなしを判断するだけでもひと苦労しそうだ。自動車という製品に対する製造物責任を問うだけでも、これまで以上に複雑な「関係者」の存在が想定される。
さらに精密なシステムを滞りなく動作させるための整備とか、ソフトウェアのバージョンアップなどについても、注意義務違反が問われる対象がよりややこしく広がっていくかもしれない。
国土交通省としても、交通局を中心に自動運転車の事故に関する分析に対する取り組みは進んでいる。たとえば令和3年の予算請求の中では「事故発生時の自動運転システムや走行環境の状況、ドライバーの対応状況等様々な要因が考えられるため、総合的な事故調査・分析を客観性及び真正性を確保した形で実施し、速やかな事故原因の究明と客観性の高い再発防止策を講じる必要がある」と明記されている。
将来的には、事故を減らすためにデータベースを有効活用
高度な運転支援機能に乗る日常が普通になっていくにつれて、事故原因の究明はますます複雑化していく。とくに一般ドライバーにとっては「万が一」の時のために、刑事事件はもちろん民事案件についても「頼りになる相談相手=弁護チーム」のサポートが求められてくるような気がする。
「事故調査・分析を客観性及び真正性を確保」という面で言えば、システム上で改変の余地がないEDRデータはまさにその目的を達成するに最適な「証拠」だ。
2022年7月以降に発売された新型車に対して搭載が義務化されているイベントデータレコーダー(EDR)の記録を活用することで、衝突時の「リアル」を明確化できる可能性はぐっと上がってくる(26年5月からは現行車種でも新たに生産される車両には設置が義務付けられる)。
ただしそのデータを読み出した上で分析・解析を行うためには、ボッシュ株式会社が認定するEDR読み出しの有資格者「CDRアナリスト」に依頼することが必要だ。裏返せば弁護士を中心に、CDRアナリストも含めた専門性の高いプロ集団がチームを組めば、事故原因にまつわる責任の所在について、よりわかりやすく証明することができそうだ。
さらにそうしたフォーマットとしての検証体制の構築を進めることは、集約されたデータと分析のノウハウ、結果などの蓄積にもつながりうる。そられを貴重な財産として、有効活用するのだってアリだ。「今そこで起きた事故」の原因や責任按分を明確化するだけでなく、将来的に事故検証、分析の精度を高める意味でも、有意義な取り組みになりうるのではないだろうか。
[ アルバム : レベル3の恩恵と事故責任の動向 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
それまでは大人しくバスかタクシーに乗せてもらえよな。