グッドウッド、ウエスト・サセックス
ロールス・ロイスは、その歴史上最も人気の高いモデルであるゴーストを、パワフルで、ドライバー志向、そしてエレガントなデザインに進化させたゴースト・シリーズIIを発表した。
【画像】ロールス・ロイスはゴースト・シリーズIIとゴーストを写真でみる 全88枚
顧客の要望に応え、ゴーストのモノリシックで自信に満ちたエクステリアは絶妙に進化し、ビスポークを引き立てる舞台としての役割を果たし、これまでのゴーストにはないインテリアの仕上げや機能のほか、ビスポークがデジタル領域に進出したことを示す先進的なソフトウェア・テクノロジーも利用できるようになった。
バックグラウンド
ゴーストは、グッドウッド時代のロールス・ロイスを代表する最も重要なモデルのひとつだ。2009年に初代モデルが発表されたのは、当時、まったく新しいカテゴリーの高級車のニーズが高まっていたことが背景にあると彼らはいう。
ロールス・ロイスの最初のモデルであるファントムよりも若い世代の顧客は、より親しみやすく、用途の広いモデルを求めていた。彼らはまた、ロールス・ロイスというブランドをより凝縮した形で表現すること、そして何よりも、ビスポークを通じて自身の個性を示しながら、自ら運転することに喜びを感じられるような車を熱望していた。
2020年に発表された第2世代のゴーストは、これらの原則を大幅に進化させ、デザインの純粋さを追求したこのモデルは、一見シンプルなデザインの下に、きわめて高度なデザイン、エンジニアリング、そしてクラフツマンシップが隠されており、発表当時、ロールス・ロイス史上最も技術的に進歩したV12エンジンを搭載していた。
これは、比類なきアジリティとドライバー志向のシャシーに支えられた、ビスポーク・コミッションのための純粋かつ自信に満ちたキャンバスを提供したいという意欲に基づくものであったとロールス・ロイスは述べる。
ゴーストの顧客は、ビスポークがもたらすインパクトを即座に認識し、これは、後にファッション業界に広まった「クワイエット・ラグジュアリー」のコードから、大胆不敵で鮮やかな色彩への讃美に至るまで、実験と自己表現の時代の到来を告げるものであり、その結果、ゴーストの顧客は、車両購入価格の平均10%をビスポークに投じている。
2020年に発表されたゴーストは、その美的感覚に訴えるデザイン性に加え、これまでで最も技術的に進歩したロールス・ロイスという栄冠に輝いた。特に、エンジニアが10年の歳月をかけて完成させたプラナー・サスペンション・システムは、これまで実現できなかった、まるで地上を飛んでいるかのような乗り心地をもたらした。
6.75L V型12気筒ツインターボ・ガソリン・エンジンに加え、全輪ステアリングと4輪駆動方式を備えたゴーストは、ロールス・ロイス製品で最もダイナミックなドライバーに焦点を当てたモデルとして、また完璧なツーリング・マシンとして、瞬く間に評価され、実際、顧客はゴーストをサルーンではなく、最上級の4ドア・グランド・ツアラーとしばしば表現する。
ゴーストをさらにアップデートする時が来た時、ロールス・ロイスは顧客の要望を伺い、ゴーストの魅力の最たるものは、個性を発揮できるプラットフォームとしてのポテンシャルと、エンジニアリングのダイナミズムであることを確認した。
ロールス・ロイスはそういった要望を尊重し、ゴースト・シリーズIIの開発にあたって、控え目でありながら意義深いデザインの改良を行い、ゴーストをロールス・ロイス史に刻む契機となった、妥協のない卓越したV12パワートレインを採用するに至った。
エクステリア
シリーズIIは、これまで以上にロールス・ロイスの純粋でモノリシックなデザイン・アプローチに沿ったものとなっている。
フロントエンド
世界中の顧客から常に高い評価を受けているロールス・ロイスのデザイン・アイコン、イルミネーテッド・パンテオン・グリルが際立つ、クリーンで現代的なデザインに凝縮されている。
そのモダンな存在感は、刷新されたヘッドライトとデイタイム・ランニング・ライトのグラフィックに表れており、グリル下部からフロント・ウイングのエッジへと流れ、2148mmのゆったりとした車幅が強調される。
フロントエンドの下部はパンテオン・グリルの土台となり、さらに新しいクローム仕上げが加わり、スピリット・オブ・エクスタシー像を浮かび上がらせる台座となった。
リアビュー
新しいテールランプを採用し、サイドとリアがうまく調和している。このデザインはスペクターからインスピレーションを得たもので、表情豊かな2つの縦型ライト・パネルに、「RR」のモノグラムが控えめに刻まれた曲線のクローム・エレメントが描かれている。
新たに採用された22インチ、9スポークのホイールは、全面ポリッシュ仕上げまたは部分ポリッシュ仕上げから選択可能。どちらもゴースト・シリーズIIの現代的でありながら時代を超越したデザインをエレガントかつモダンに引き立て、その根底にあるポテンシャルを巧みに反映するという。
色彩を通して生まれる新たなムード
ゴースト・シリーズIIでは、既存の4万4000色を超えるプレタポルテ・カラーと、顧客だけの色をつくり出すことができるビスポーク・カラー・サービスに加え、デザイナーが新たにエクステリア・カラーを考案した。
「マスティク・ブルー」と名付けられたこのメタリック仕上げは、その名の由来となったカリブ海の島の色彩と華やかな魅力を表現しており、ガラスとマイカ・フレークを使用することで、熱帯の海に反射する陽光を思わせる煌めきを生み出している。
このカラーは、ドライバーに焦点をあてた初期のロールス・ロイスのひとつである1929年軽量型のファントムIIコンチネンタルのプロトタイプを参考にし、同様のブルーの色味に仕上げられている。
ファントムIIコンチネンタルはヘンリー・ロイスが個人的に使用するために作られたもので、当時は魚の鱗を粉砕して作られたパール・ペイントを採用した史上初の車のひとつであった。
この車は、1930年に開催された権威あるビアリッツ・コンクール・デレガンスで「プリ・ドヌール賞」を受賞している。
インテリア
ゴースト・シリーズIIのインテリアは、アナログとデジタル両方の巧みなクラフツマンシップを讃えている。
新しいピラー・トゥ・ピラーのガラスパネルに収められたセントラル・インフォメーション・ディスプレイには、高機能のスピリット・オペレーティング・システムが組み込まれた。
これにより、ビスポークによるパーソナライゼーションの範囲はハードウェアからソフトウェアへと拡張し、デジタルのインスツルメント・ダイアルのカラーをインテリアやエクステリアに合わせてカスタマイズすることが可能になったという。
これは、ビスポークの新しい現代的な表現を追求されるゴーストのお客様のニーズに応えるもので、スピリットはまた、ロールス・ロイスのオーナー専用のプライベート・メンバーズ・アプリケーションであるウィスパーズも統合した。
顧客は車に直接目的地を送信したり、車両の位置確認や施錠をリモートで管理したりすることができ、これは、顧客がロールス・ロイスをより幅広いライフスタイルの中心に位置づけるようになっていることを示しているという。
ゴースト・シリーズIIでは、エンターテインメントおよびコネクティビティも大幅にアップグレードされており、後部座席のリア・スクリーンには、最大2台のストリーミング・デバイスを接続し、それぞれのスクリーンで独立してエンターテイメントを選択することができる。
このインターフェースでは、マッサージ、冷暖房などのシート機能も管理することができ、あらゆるタイプのBluetoothヘッドフォンを後部座席のインフォテインメント・システムとペアリングすることができるほか、センター・コンソールに控えめに配されたUSB-C充電ポートや、アップグレードされたWi-Fiホットスポットを利用することが可能となった。
比類のないサウンドステージ
ロールス・ロイス車の他の追随を許さぬ洗練性は、ゴーストのキャビン内に最上級の音響再生空間を実現した。
装飾を施した18スピーカー・オーディオ・システムは、ゴースト・シリーズIIでさらに進化し、アップグレードされた1400ワット・アンプを搭載。
これは、ロールス・ロイス独自のスピーカー・デザインに基づくもので、車両のアルミニウム製シル・セクション内の空洞を低周波スピーカーの共鳴室として活用することで、実質的に車両下部を横置きの大型フロアスタンディング・スピーカーへと変身させている。
ビスポーク・オーディオでは、コーンを使用する代わりにヘッドライナーの内側に直接取り付けられた2つの「スピーカーレス」エキサイターでその音響効果をさらに強化し、ヘッドライナーを広大なオーバーヘッド・サウンドステージへと変貌させる。
スターライト・ヘッドライナーをビスポーク・オーディオ・システムと併せて選択すると、星空を作り出す光ファイバー・ケーブルが特殊な音響膜で圧縮されることにより、ケーブルの残響が抑えられ、サウンドをキャビン内に伝えることができる。
キャビン内の2つのアクティブ・マイクが常に周波数のバランスをモニタリングし、アンプを自動調整して音響を最適化する。
現代クラフトの新しい表現
ゴースト・シリーズIIには、ロールス・ロイスの職人が緻密に考案した、現代的なクラフトの大胆かつ新しい表現が施されている。
助手席側のセントラル・インフォメーション・ディスプレイと並ぶのは、新しいスピリット・オブ・エクスタシー・クロック・キャビネットだ。このガラス・ケースには、アナログ式のクロックとライトで浮かび上がるミラー仕上げのステンレス製スピリット・オブ・エクスタシー像が収められる。
スピリット・オブ・エクスタシーのフィギュアは、反射効果を生むマット・ブラックのバックパネルと高光沢のサイドパネルを備えた台座に配され、車に乗り込むとまず、スピリット・オブ・エクスタシー像がスポットライトを浴びているかのように下方から光を浴び、やがてそのステージ照明は柔らかな光へと切り替わる。
この精巧なディテールに加えて、助手席側の全幅に広がるのは、2020年にゴーストで初めて登場した、先進的な職人技によるイルミネーテッド・フェイシアだ。
ゴースト・シリーズIIでは、新しいイルミネーテッド・フェイシアのデザインを星空からインスピレーションを得て、タイムラプスの天体写真を彷彿とさせるデザインで夜空の動きを捉え、顧客は、ロールス・ロイスのビスポーク・デザイナーとともに、オリジナルのイルミネーテッド・フェイシアのモチーフをつくりだすことも可能だ。
ゴースト・シリーズIIのエレガントなデザインを引き立てるために、「グレー・ステンド・アッシュ」と名付けられた新しいインテリア素材が作られたという。
ロールス・ロイスの多岐にわたる贅沢な職人技と同様に、この卓越した新素材は、伝統的な熟練の職人技と革新の融合を表しており、この豊かな木目の天然オープンポア材は、手作業で染色され、微細な金属粒子を加えることで、独特かつ非常に現代的なきらめきを生み出し、この技術の開発には4年以上の年月が費やされた。
ロールス・ロイスがテキスタイルを追求する姿勢はゴースト・シリーズIIにも受け継がれ、竹から作られた新しいレーヨン生地「デュアリティ・ツイル」も選択可能となった。
ロールス・ロイスのデザイン・チームのメンバーは、ヘンリー・ロイス卿がかつて冬季を過ごしたヴィラ・ミモザに隣接するコート・ダジュールの地中海の庭園を研究中に訪れまた。
この庭園の特徴の1つである、ヘンリー卿も目にしたであろう広大な竹林は、この革新的な生地の開発にインスピレーションを与え、ツイル織りのテキスタイルには、ブランド創業者たちのイニシャルである「R」を重ね合わせて抽象的にデザインしたデュアリティ・グラフィックが刺繍されている。
セーリング・ヨットのロープが織り成すラインを想起させるこのデザインにも、フレンチ・リビエラへのさりげないオマージュが込められていると述べた。
デュアリティ・ツイルは、現在グッドウッドのホーム・オブ・ロールス・ロイスに拠点を置く熟練の織物職人とのコラボレーションによって誕生し、その開発には1年以上を要した。
インテリアの全域に施されたデュアリティ・ツイルには、最大220万のステッチと11マイル(約17.7km)に及ぶ糸を使用し、20時間もの非常に複雑な工程を経て完成される。
各パネルは、糸のほつれを防ぐために端をシールする、特別に開発されたレーザーで裁断され、個別に準備され、すべてのパネルを慎重に配置し、継ぎ目なく全体を縫い合わせてから、座席の張地として使用されるという。
ベースとなるテキスタイルは、ライラック、チョコレート、ブラックの3色で展開され、糸は51種類の異なる色から選択できるため、顧客の個性に合わせてデザインをカスタマイズし、大胆なコントラストや繊細なモノクロームを作り出すことができる。
このほか、革新的な現代的な工芸技術「プレースド・パーフォレーション」も選択可能で、これは、シート・レザーに小さな穴を開けてユニークなアートワークを施す技法で、パーフォレーションの大きさを変化させることで奥行きを生み、緻密で立体的なグラフィックを作り上げる。
最初の模様は、グッドウッドにあるホーム・オブ・ロールス・ロイスの上空で変化する雲の形と影からインスピレーションを得てデザインされ、この模様は0.8ミリメートルと1.2ミリメートルのパーフォレーションで構成され、その数は最大10万7000個にのぼり、そのひとつひとつを入念に確認することで絶対的な均一性が確保される。
エンジニアリング
ゴースト・シリーズIIの心臓部には、パワフルで妥協のない、静粛性に優れた6.75L V型12気筒ツインターボ・ガソリン・エンジンと、特徴的な8速ギアボックスが搭載されている。
これは全輪ステアリングと全輪駆動の動力源となり、最大トルクは、アイドリング回転数をわずか600rpm上回る1600rpmで得られるため、1つのギアが途切れなく続く感覚と、ロールス・ロイス特有の「ワフタビリティ」が生まれる。
ゴースト・シリーズIIにおいて、定評のあるプラナー・サスペンション・システムには、フロント・サスペンション・アセンブリの上部に独自のアッパー・ウィッシュボーン・ダンパー・ユニットが組み込まれている。
このユニットは、連続可変の電子制御ショック・アブソーバーやセルフレベリング機構付きの大容量エアストラット・アセンブリと連動し、ロールス・ロイス特有の魔法のじゅうたんのような乗り心地「マジック・カーペット・ライド」をさらに安定的かつエフォートレスに表現。
5リンク式リア・アクスルには、同様のセルフレベリング機構付きの大容量エアサスペンション技術を採用した。
サスペンションとシャシーのシステムは、カメラで前方の道路を読み取り、路面の変化に合わせてサスペンションを可変させるフラッグベアラー・システムによって強化された。
これに加え、GPSデータを利用してカーブの曲率に応じた最適なギアを選択するサテライト・エイデッド・トランスミッションを搭載しており、このようなテクノロジーが一体となって機能し、ゴーストは過酷な悪路を予測して難なく対応し、比類なき静粛性と、卓越したダイナミズムとアジリティを見事に融合させるに至った。
さらなる創造性のためのキャンバス
ゴースト・シリーズIIが象徴する本質的なアジリティとビスポークの可能性を求めつつ、最上級のリア・スイート・スペースを求める顧客のために、ゴースト・エクステンデッド・シリーズIIが用意された。
エレガントなシルエットはそのままに、リア・ドアと開口部を拡張することで、リア・スイート・スペースを170mm拡大している。
ゴースト・エクステンデッド・シリーズIIの最高峰のスタイルを追求する顧客には、プライベート・ジェットのキャビンを想起させるリクライニング式のセレニティ・シートも用意されている。
ゴースト・シリーズIIと同様、シャンパン・クーラーも選択可能だ。
ロールス・ロイスのスペシャリストがマスター・ソムリエに相談したところ、ノン・ヴィンテージのシャンパーニュの最適な提供温度は平均6°、ヴィンテージのシャンパーニュの場合は概ね11°とのこと。このアドバイスを受け、クーラーは6°と11°の2種類の冷却モードで作動する。
こうした数々の改良は、ゴースト・シリーズIIの格別なダイナミクスを損なうことなく実現させ、実際、ゴースト・エクステンデッドを選ばれる顧客は、ほとんど運転手を手配することなく、後部座席スペースを拡張したこのモデルを自ら運転する目的でオーダーしていると彼らは発表している。
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