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【お手頃ドライバーズカーを選ぶ】ゴルフGTIxシビック・タイプRxフィエスタSTxGRヤリス BBDC 2020(2)

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【お手頃ドライバーズカーを選ぶ】ゴルフGTIxシビック・タイプRxフィエスタSTxGRヤリス BBDC 2020(2)

お手頃なクルマでも運転は存分に楽しめる

text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)

【画像】【画像】4台の一番は? GRヤリス シビック・タイプR フィエスタST ゴルフGTI 全73枚

photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)/Max Edleston(マックス・エドレストン)/Olgun Kordal(オルガン・コーダル)

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


骨にまで染みるような冷たい風が吹く、10月の英国南西部。路面は嫌に湿っている。温かい紅茶を出してくれるスタッフもいない。しかし、荒野には見事な道路が伸びている。

お手頃ドライバーズカーとしてノミネートしたのは4台。億万長者でなくても最高のドライビングが楽しめる、ということを証明するための、年に1度の特別な日だ。

今回のラインナップは、偶然にもすべてがホットハッチ。といっても、歴史や成り立ちは大きく異なる。共通するのは、英国価格が4万ポンド(540万円)未満だということ。残価設定プランを利用すれば、月額200ポンド(2万7000円)程度で、どれか1台に乗れる。

ノミネート車両を順にご紹介しよう。まずは8代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTI。45年の伝統を有する、小さなロケット、ホットハッチの元祖ともいえる。

続いて、フォード・フィエスタSTと、ホンダ・シビック・タイプR。いずれも過去にお手頃ドライバーズカーとして優勝経験があるモデルで、その最新版だ。適度なチューニングを受け、サーキット向きのハイグリップなタイヤを履き、軽量化も図られている。

そして最後の1台は、トヨタGRヤリス。スバル・インプレッサ・ターボとフォーカス・エスコートRSが戦った1990年代を彷彿とさせる、WRCの遺伝子が宿る稀有なモデルといえる。すでに評判はすこぶる高い。

勝ち気な子犬のように、すばしっこく走る

フォード・フィエスタSTは4台で最も安価だが、今回の試乗車はマウンチューン社が軽く手を加えた1.5L 3気筒ターボエンジンを搭載。ブレーキにもアップグレードを受け、見た目もノーマルのフィエスタSTより好戦的だ。サスペンションはノーマルのまま。

もともとフィエスタSTのシャシーは性能が高く、少しのパワーアップでも充分に対応できる能力を備えている。エンジンのチューニング費用は890ポンド(12万円)。その結果、235psと35.6kg-mを獲得している。

マウンチューン版フィエスタSTを運転して、第一印象を支配するのはエンジン。それと、低速域でのとても硬い乗り心地。専用の2本出しマフラーからは、低音の荒々しいビートを響かせる。中回転域の刺激的なサウンドに、思わず聞き入ってしまう。

2000rpmを超えた辺りから、フィエスタSTはエネルギッシュに加速を始める。よりパワフルなライバルを追従するのも、朝飯前。

勝ち気な子犬のように、すばしっこく走る。コーナーへハイスピードで突っ込めば、外側へ掛かる荷重の増大とともに、内側のタイヤをリフトさせる。

その元気っぷりには、終始笑いが止まらない。ここまでアクセル操作で姿勢制御ができる前輪駆動モデルも珍しい。右足の力加減で、コーナリングラインを内側へ絞ったり、外へ緩めたり、思いのままだ。

スタビリティを保つESPは付いている。だが、最も口うるさい設定でも、想像以上のテールスライドを許してくれる。

目指したポイントがわかりにくいゴルフGTI

乗り心地は低速で厳しい。エクスムーア国立公園に伸びる道では落ち着かず、ジャンプすることも。ブレーキは制動力を増してあるが、標準より効きは漸進的ではない。

フォード・フィエスタSTのパッケージは、相変わらず素晴らしい。編集部のマット・プライヤーは「とても好き。楽しさにあふれているし、能力も高いですね」。と笑顔を漏らす。そのとおりだと思う。

マウンチューン版フィエスタSTを元気な10代の若者に例えるなら、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIは、この中では落ち着きのある大人。歴史の中で、いろいろな経験を積んできたような。

そのかわり、その歴史はフォルクスワーゲンのハードルを上げている。ゴルフGTIの背負うものは軽くない。誕生から50年近い時間を経て、中年の危機的なゆらぎも見え隠れする。

見た目はゴルフGTIらしいく、控えめな主張を備える。パワフルなターボエンジンも、引き締められたやや低いサスペンションも、いつもどおり。フロントグリルには、赤いピンストライプも忘れていない。

ドアを開ければ、タータンチェックのシートも付いている。でも、何かが違う。アンドリュー・フランケルが口を開く。

「フォルクスワーゲンが、8台目ゴルフGTIで何を目指していたのか、イマイチ理解が難しい。ユニークな公式を築き上げてきたのに、変える必要はあったのでしょうか。アップルがサムスンに似せようとしたような、そんな印象を受けます」

ホットハッチとしては優れている

8代目ゴルフGTIには、新参者に負けじと努力している雰囲気がある。同時に、歴代のゴルフGTIが築き上げてきた、オールラウンダーとしての個性を少し見失っているようにも思える。

もちろん、8代目ゴルフGTIも素晴らしく速く、走行性能は高い。優れた操縦性と精度の高さで、エクスムーアのカーブの続く道を、簡単に制覇できる。先代より目的地までの移動速度も、確実に速いだろう。

フロントタイヤのグリップ力は見事だし、トラクションも強大。揺るがないほどタイトな姿勢制御で、路面へ吸い付くように走る。

エンジンも並外れて良い。低回転域からたくましくボディを牽引し、レッドラインめがけて狂気のごとく回転を早める。

一方で、ドライバーとの密な一体感や、角の尖った性能を楽しむ親しみやすさは不足気味。ステアリングホイールは軽すぎ、コミュニケーション力が足りていない。

ESPを無効にはできるものの、ドライバーの自由度が増すこともない。加えて、急な挙動変化に対応できるスキルも求められる。ダンパーは柔らかいコンフォート・モードにしても、強めの振動が完全には消えてくれない。

選択肢としては優れている。しかし、今までの身近さは遠のいてしまったようだ。サイモン・デイビスが端的に話す。「ホットハッチとしては優れています。でも、優れたGTIとはいえないでしょう」

お手頃ドライバーズカー審査の続きは(3)にて。

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