車の歴史 [2024.07.22 UP]
日本を代表する伝統的スポーツカー、日産 フェアレディZの歩み【名車の生い立ち】
半世紀以上の歴史を持つスポーツカーブランドは、世界的にみてもごくわずか。欧州ならばフェラーリの12気筒モデルやポルシェ911、アメリカならばシボレー コルベットがそれに該当しますが、日本にも長い歴史を誇るスポーツカーがあります。その名は日産 フェアレディZ。今回は、日本のモータリゼーション発祥とともに生まれ育ち、今なお現役のスポーツカーとして生産されているフェアレディZの生い立ちを振り返ってみましょう。
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スポーツカー黎明期に生まれた「ダットサン フェアレディ」
1962年 ダットサン フェアレディ
この世に自動車が誕生して100年以上が経ちますが、日本では自国で開発された国産乗用車の普及が遅れていました。特に戦中は軍需向けのトラックなどが自動車産業の要となっており、一般向けの乗用車はまだ少なかった時代です。戦後になると各自動車メーカーは乗用車の量産化を推進し、ダットサン(現在の日産)もそんなメーカーのひとつでした。そんななか、ダットサンは1957年に「スポーツ1000」と呼ばれる1台のオープンスポーツカーを発表。1959年に生産が開始され、これがフェアレディZのルーツとなるモデルです。
1960年にはスポーツ1000をベースにした「ダットサン フェアレデー 1200」が登場。貴婦人を意味する「フェアレディ」はミュージカル「マイ・フェア・レディ」に由来すると言われており、現在まで続くネーミングがここに誕生しました。ちなみにこの時代のスポーツカーといえば、イギリス車が世界のトレンド。ロータス、トライアンフ、MGなどの軽量なオープンスポーツカーは多大な人気を集めており、ダットサンのスポーツカーもこれに倣ってオープンボディを採用しました。ダットサントラックから流用したラダーフレームにスチール製ボディを乗せ、これに1.2L OHVエンジンが搭載されて力強い走りを実現し、イギリス製スポーツカーにも劣らない性能を持っていたのです。
1962年にはモデルチェンジを受けて2代目となる「ダットサン フェアレディ 1500(SP310系)」が登場。先代と同じくラダーフレームを採用しつつも、前輪に独立式サスペンションを採用し、支持部にクロスメンバーが追加されて剛性が高められました。この世代からモータースポーツ(日本グランプリ)にも参戦し、より本格的な走りが楽しめるモデルとして進化したのが特徴です。1965年には大幅改良を受けた「ダットサン フェアレディ 1600」が登場。排気量は1.5Lから1.6Lに拡大され、よりパワフルな走りを獲得。1967年には2.0Lエンジンの「ダットサン フェアレディ 2000」も追加され、国産スポーツカーの中心的な存在となっていったのです。
「Zカー(ズィーカー)」として北米で大ヒットしたフェアレディZ(S30)
初代(S30):1969年 フェアレディZ Z432
高度経済成長の真っ只中である1969年は、東名高速が全線開通し、アポロ11号が人類初の月面着陸に成功した年。この時代に生まれたのが、ダットサン フェアレディの後継モデルとなった「日産 フェアレディZ」です。60年代後半は国産メーカーが高性能で魅力的なスポーツカーを生み出した時期でもあり、たとえばトヨタ 2000GT(1967年)を頂点に、マツダからはロータリーエンジンを積んだコスモスポーツなどがデビューしています。
国産スポーツカーに追い風が吹くこの時代にデビューした初代フェアレディZ(北米ではダットサン240Z)は、軽量オープンスポーツだった従来型から一転し、スタイリッシュなクーペボディが与えられました。また、ラダーフレームから脱却して軽量なモノコックボディが与えられ、これに2.0L 直6エンジンを搭載(北米向けに2.4Lも設定)。さらにスカイラインGT-Rにも搭載された「S20」型エンジンを搭載した「Z432」も追加するなど、バリエーションを拡大していったのです。特に「Z432」は高性能スポーツカーとして、ライバルであるジャガー Eタイプやポルシェ911など欧州製スポーツカーにも負けない動力性能を持っていました。フェアレディZは、元を辿れば米国日産の社長であった片山豊氏のリクエストで生まれたもの。それゆえ北米市場で異例の大ヒットを記録し、アメリカでは「Zカー(ズィーカー)」と呼ばれて、今でもその人気は衰えず伝説的な存在となっています。
より快適なグランドツーリングカーを目指した2代目(S130)
2代目(S130):1978年 フェアレディZ 280Z-T 2by2
1970年代に入ると環境問題や燃費が重要視されるようになりました。その大きな理由は、第4次中東戦争を機に起こった第1次オイルショック(1973年)、イラン革命を機に起こった第2次オイルショック(1978年)。高性能だけど燃料をたくさん消費する自動車は真っ先に槍玉に挙げられ、環境性能や燃費のよさが求められました。
そんな折、1978年に登場したのが2代目フェアレディZ。この年の出来事といえば、超高層ビル「サンシャイン60」の開館、新東京国際空港(現成田国際空港)の開港など。そんな時代に生まれた新しいフェアレディZは、先代のイメージを引き継ぐロングノーズ・ショートデッキのスタイルで、スポーツカーらしい佇まいが魅力でした。ボディサイズは拡大され、2シーターに加えて2+2を設定したこともトピック。硬派なスポーツカーのイメージが強い初代から一転し、ラグジュアリーな性格を持つグランドツーリングカーの要素も取り入れたのが特徴といえます。これは前述のオイルショックや昭和53年度排出ガス規制の影響もあり、尖ったスポーツ性能よりも豪華で快適なクルマが求められていたから。70年代はスポーツカー不作の時代でしたが、時代のニーズに合わせることでフェアレディZは生き残ることができたのです。
モダンなルックスで新時代を感じさせた3代目(Z31)
3代目(Z31):1983年 フェアレディZ 300ZX 2by2
高度経済成長も終わりを迎えた1980年代は、豊かで娯楽に溢れ、日本に新しい風が吹いた時代。例えば1983年には任天堂からファミリコンピューターの発売や、東京ディズニーランドがオープンしています。自動車の世界ではモータースポーツブームが再来し、ホンダがエンジンサプライヤーとしてF1に参戦したことも話題となりました。これを契機にスポーツカー人気が再燃し、各メーカーが走りを楽しめるスポーツモデルを送り出した時期でもあります。それを時を同じくして登場したのが、3代目フェアレディZ(Z31)。
この世代もロングノーズ・ショートデッキのプロポーションは守られましたが、初代から続く丸型ヘッドライトはリトラクタブル式の四角い形状に変更。またボディラインもシャープなデザインとなり、全体的にモダンで洗練された佇まいになりました。パワートレインは、従来までのL型と呼ばれる直列6気筒から新世代のVG型と呼ばれるV6に置き換えられたこともトピック。ターボモデルでは最高出力230馬力(グロス値)の性能を発揮し、高性能スポーツカーとして返り咲いたのです。とはいえ、クルマのキャラクターは北米市場を意識してリアルスポーツカーというより、快適なグランドツーリングカーという性格が強いものでした。
しかし1985年には、「ちょっとユルいスポーツカー」の印象を覆す新グレードが登場します。それが新開発の直列6気筒ターボ(RB20DET型)を搭載した「200ZR」。これはR31型スカイラインに搭載されていたもので、世界初のセラミックターボを採用。ボンネットにはエアスクープが設けられ、スポーツシート、強化されたサスペンション、LSDを採用した本格派スポーツモデルでした。最高出力は180馬力(ネット値)に留まりましたが、リアルスポーツ志向を目指した設計に、走り好きのユーザーからは大きな歓迎を受けたのです。
ハンドリングを進化させスポーツカー路線を目指した4代目(Z32)
4代目(Z32):1989年 フェアレディZ 300ZX 2シーター Tバールーフ
80年代後半になると、バブル経済で日本の景気は右肩上がりになっていきました。空前絶後の好景気により、自動車もより高性能かつ高級なものが人気となります。その代表例が、高級セダン「日産シーマ」が飛ぶように売れたシーマ現象。また、ハイソカーブームとしてトヨタ ソアラのような高級クーペもこぞって買い求められました。
そんなリッチな時代に開発され、1989年にデビューしたのが4代目となるフェアレディZ。初代誕生からちょうど20年目という節目に発売されました。好景気が追い風となって、洗練されたデザインや走行性能を追求した高性能スポーツカーとして開発されたのです。また当時の日産は、クルマの走りを磨き上げる「901運動」の最中であり、4代目フェアレディZもその対象モデルに。2代目以降はグランドツーリングカー的な性格が強かったフェアレディZが、スポーツドライビングも楽しめるハンドリングマシンになりました。
パワートレインは、先代モデルで追加された直6ターボ(RB20DET型)は廃止され、VG型の3.0L V6と同ターボの2本立てに。ターボモデルの最高出力は日本車として初の280馬力を達成し、以降15年間にも及ぶ馬力の自主規制の上限となったこともトピックといえるでしょう。この時期は各メーカーから魅力的なスポーツカーが続々と発売されることになり、4代目フェアレディZも魅惑の90年代スポーツカーの一員として、今でも高い価値が付けられています。
まさかの生産終了、そして復活を遂げた5代目(Z33)
5代目(Z33):2002年 フェアレディZ バージョンS
90年代に大ブームとなった国産スポーツカーも、後半にはその勢いに陰りが見えてきました。その大きな要因は、平成12年排出ガス規制。この排ガス規制をクリアできず、多くの国産メーカーがスポーツカーをリストラしていったのです。21世紀になるとインターネットが普及して娯楽も多様化し、スポーツカーへの関心度が相対的に下がったことも関係しているかもしれません。売れるクルマといえばコンパクトカーやミニバンが主流で、スポーツカーは絶滅の危機に瀕していたのです。そんな背景もあり、ダットサン時代から数えると40年にも及んだ「フェアレディ」の系譜が2000年8月で終了し、Z32型フェアレディZは生産終了となってしまいました。
しかし、その翌年1月のデトロイトショーでは次世代フェアレディZのコンセプトモデルが発表され、同じ年の東京モーターショーでは市販モデルに近いバージョンを公開。そして2002年7月、フェアレディZが復活を遂げたのです。新型は、ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションこそ従来と共通でしたが、エッジの効いた縦長ヘッドライトや滑らかなボディラインを採用し、次世代のスポーツカーにふさわしい斬新なデザインに。また、先代と比べて一層高められた走りの性能は、リアルスポーツと呼ぶにふさわしいレベルにまで引き上げられたのです。パワートレインは新世代VQ型の3.5L V6を搭載。初期型は280馬力でしたが、改良を重ね最終的に313馬力にまで高められました。
打倒ポルシェ!スポーツカーとしてさらに進化した6代目(Z34)
6代目(Z34):2008年 フェアレディZ
米大統領選挙でオバマ氏が当選し、日本では麻生内閣が発足した2008年、フェアレディZがフルモデルチェンジを受けて6代目となりました。リアルスポーツとして高い評価を受けた先代モデルでしたが、新型はそれをさらに磨き上げたのが特徴。ホイールベースを100mm短縮したことで、ハンドリング性能がさらに高められました。パワートレインはバルブ作動角・リフト量連動可変システム「VVEL」を採用した3.7L V6が搭載され、336馬力という高出力を発揮。ライバルをポルシェ ケイマンに見据え、ミドルスポーツカーセグメントでも一級の性能を誇るスポーツカーへと進化したのです。
7代目(RZ34):2022年 フェアレディZ プロトスペック
そんな6代目(Z34)の生産は2021年まで続けられましたが、2022年には7代目となる次世代型(RZ34)がデビュー。型式はRZ34なることからわかるとおり、基本的な設計は先代モデルからのキャリーオーバー。しかしエクステリアは完全リニューアルされ、初代を彷彿とさせる造形が取り入れられ、どこから見てもフェアレディZといえる端正なルックスが大きな魅力となっています。パワートレインは、新開発となるVR型の3.0L V6ターボを搭載し、最高出力は405馬力を達成。さらに力強い走りを手に入れました。RZ34型はビッグマイナーチェンジ版と思われがちですが、ルックス、走りともに次世代の「Z」像を具現化したモデルといえます。
身近なスポーツカーとして愛され続けた「Z」
初代(S30):1971年 フェアレディZ 240ZG
半世紀以上にもわたる歴史を持つフェアレディZは、日本を代表するスポーツカーと言っても過言ではありません。スポーツカーといえば、ポルシェやフェラーリという時代がありましたが、フェアレディZは現実的に入手できる身近なスポーツカーであることもファンが多い理由です。特に北米では多くのオーナーズクラブがあり、ファンの熱量がとても大きいクルマ。ルックスと走りを兼ね備えたフェアレディZは、今後も多くの人を魅了していくに違いありません。
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