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100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(1) ニューファントムとファントム II 品質が醸成した名声

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100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(1) ニューファントムとファントム II 品質が醸成した名声

他を圧倒する品質が醸成した名声

ロールス・ロイスがニューファントムを発売したのは、100年前の1925年。それまでの20年近く、最新モデルの立場を堅持したのは、トゥエンティとシルヴァーゴーストだった。ブランドの名声は、技術進化以上に、他を圧倒する品質が醸成したものといえた。

【画像】ザ・ロールス・ロイス ニューファントムと歴代ファントム 最新ゴーストとスペクターも 全136枚

ニューファントムは、後にファントム Iと呼ばれるが、技術的にはシルヴァーゴースト譲り。それでも、重要なアップデートは加えられていた。

実績を積んだ高耐久の直列6気筒エンジンは、排気量を7668ccに拡大し、スチール製のメインブロックは3気筒毎に2分割。整備性を高めつつ、1枚のオーバーヘッドバルブ・ヘッドで締結された。カムシャフトは、プッシュロッドとロッカーを介して駆動した。

先代譲りの技術 磨かれた操縦性

チャンネル材によるスチール製シャシーも先代譲りだが、剛性を高めるブレースを追加。リーフスプリングのサスペンションへ変更はなかったものの、スペインのイスパノ・スイザ由来の四輪ブレーキは、先進的といえた。

シングルプレート・クラッチへ伝わったトルクは、リアアクスル一体のトルクチューブへ収まるプロペラシャフトを回転。リジットアクスルながら、操縦性は磨かれていた。

ホイールベースは、通常の3721mmかロングの3823mmという2種類。今回の車両は1929年式の左ハンドルで、ブリュースター社製のロンズデイル・ランドレー・ボディを纏う。ロングホイールベースは1243台が提供されたが、その1台だ。

シャシーの生産は英国中部のダービーの他、アメリカ北東のスプリングフィールドでも行われ、フロア中央のシフトレバーと3速マニュアルであることが、本国仕様との違い。各部の潤滑システムは、シングルショットへ簡略化されてもいる。

マイクロバスの重厚感 後席のためのクルマ

第二次大戦中はニューヨークで保管され、後に英国へ輸入。入念なレストアが施されている。ファブリックルーフを開くと、クロス張りのベンチシートが外界へ顕になる。寡黙な運転手へ身を任せ、エリートたちが摩天楼の合間を優雅に移動したに違いない。

エンジンは終始スムーズ。ペダルは一般的な配置で、Hパターンのシフトレバーは、丁寧に傾ければ静かにギアを繋げる。ステアリングはギア比が高く、速度域を問わず重い。

速度上昇は至って滑らかだが、英国の田舎道では、マイクロバスのような重厚感を滲ませる。1世紀を経ても、リアシートのためのクルマだ。

ファントム IIへ進化 ベントレーへ対抗

前時代的なニューファントムを置き換え、ロールス・ロイス本来の先進性を得たのが、1929年発売のファントム II。リーフスプリングのサスペンションは一新され、車高が低くなり、先代の後期型のように油圧ダンパーを獲得している。

6気筒エンジンは、新しいマニフォールドとクロスフローヘッドの採用などで増強された。当時の同社は、正式な数字を公表していないが。トランスミッションはエンジンと一体化され、トルクチューブは廃止されている。

今回のファントム IIは、HJマリナー社のボディによるコンチネンタル・スポーツサルーン。新しいベントレー8リッターへ流れる顧客を引き止めるべく生まれたのが、この軽量・スポーティな仕様だった。

現オーナーはティム・マルティン氏で、2022年に購入している。ナンバーは当初からGP 55で、登録は1931年。下着のコルセットの販売で財を成した、英国のアレン夫妻が購入したが、夫の死後、1935年に売却された。

大陸を跨ぐ旅行への準備は万全

数名の所有者を経て、マルティンはレストア。本来の狙い通り、積極的に道へ駆り出されている。高速道路も余裕な、グランドツアラーとしての能力へ魅了されている。

スペアタイヤは2本備え、ピクニックテーブルとスーツケースを載せられる荷室があり、キャビンは大人4名がゆったり過ごせる。コンチネンタルという名の通り、大陸を跨いだ旅行への準備体制は万全。130km/hで、1日中巡航も可能だという。

「それでも、回転数は2000rpmほど。オーバードライブを追加したので、160km/hも余裕です」。とマルティンが微笑む。ツヤツヤのウッドパネルに、ガラス張りのメーターパネルが収まり、4速のシフトレバーは右膝の横。印象はベントレーに近い。

エンジンは頼もしく回り、響きはスポーティ。優れたシャシーで、旋回速度は戦前のサルーンとしては驚くほど。別荘への小旅行を誘われたら、断る理由はないだろう。

ニューファントムとファントム II 2台のスペック

ロールス・ロイス・ニューファントム(1925~1931年/北米仕様)

英国価格:1850ポンド(シャシー/新車時)/50万ポンド(約9900万円/現在)以下
生産数:3512台
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:−秒
燃費:−km/L
車両重量:−kg
パワートレイン:直列6気筒7668cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:非公表
最大トルク:非公表
ギアボックス:3速・4速マニュアル(後輪駆動)

ロールス・ロイス・ファントム II(1929年~1935年/英国仕様)

英国価格:1850ポンド(シャシー/新車時)/50万ポンド(約9900万円/現在)以下
生産数:1681台
最高速度:160km/h
0-97km/h加速:−秒
燃費:−km/L
車両重量:−kg
パワートレイン:直列6気筒7668cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:非公表
最大トルク:非公表
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

この続きは、100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(2)にて。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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