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エアコンレスに小型燃料タンク……ってそんなのアリ!?  ただ燃費追求のためだけに生まれた「やりすぎクルマ」5台

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エアコンレスに小型燃料タンク……ってそんなのアリ!?  ただ燃費追求のためだけに生まれた「やりすぎクルマ」5台

 この記事をまとめると

■ひと昔前の自動車業界では燃費の追及が凄まじかった

あれ? 思ったほど伸びない……ハイブリッドなのに驚くほど燃費が良くない国産車6選

■装備を削って意地で数値を稼いだモデルも

■今回はストイックに燃費を極めたクルマを紹介

 低燃費競争に勝つために生まれたストイックすぎるマシンたち

 地球環境の保全は喫緊の課題であり、もちろん筆者を含む多くの者が、できるだけエコ・コンシャスな生き方をするべきだとは思っている。だが……エコ活動があまりにも先鋭化しすぎている人を見ると、「ちょっとついていけません!」という気持ちになってしまうのも事実である。

 そしてそれは、クルマのエコ活動においてもいえることだ。

 省燃費性能を追求するのは良きことであるとは思うものの、あまりにも先鋭化しすぎたそれを見ると、「ちょっとついていけません!」「さすがにやりすぎかと思います!」「本末転倒でしょ!」とも言いたくなってくるのだ。

 一例としては初代ホンダ・インサイトだろうか。

 現在でこそホンダ インサイトは「ちょっと地味めなエコ系セダン」という存在に大変身しているが、1999年8月に登場した初代は「孤高の燃費アタッカー」だった。

 初代インサイトは1999年当時の量産ガソリン車(ハイブリッド車)としては世界に例を見ない超絶低燃費「35km/L(10・15モード)」を実現させたわけだが、その代償は大きかった。

 スポーツカーでもないのに乗車定員はふたりとなってしまい、空力性能を徹底的に追求するため、後輪が隠されたリヤホイールスカートを採用。まぁこのリヤホイールスカートは「逆にちょっとカッコいい」ともいえるが、シート背後の本来なら荷室となるべきスペースにはバッテリーが置かれていたため、おいそれと荷物を積むこともできないクルマだった(一応幅65cm/奥行き40cm/深さ30cmの小さな掘りごたつみたいな収納スペースはあったが)。

 もちろん初代インサイトは前述したとおり「孤高の燃費アタッカー」であったため、筆者がいま挙げたような実用的な観点から批判するのはお門違いである。だが、すべてがあまりにも先鋭的すぎたため、「……ここまでの“エコ”を誰が求めるのか? ていうか誰得?」と、なんとも微妙な気持ちにさせられるクルマではあったのだ。

 この初代インサイトから数カ月遅れて1999年12月に発売された三菱ピスタチオもまた――初代インサイトとはずいぶん異なるフォルムとコンセプトではあるが──孤高の燃費アタッカーだったといっていいだろう。

 ピスタチオは、当時の三菱ミニカをベースとする3ドアハッチバックボディに、当時世界最小だった1.1リッターの直噴エンジンを搭載したモデル。トランスミッションは軽量な5速MTのみで、その昔は希少だった「アイドリングストップ機構」も採用したことで、当時の純ガソリンエンジン車としては世界一だった「30km/L(10・15モード)」のカタログ燃費を実現させた。

 まぁこちらも一般ユーザーへの拡販を考えたモデルではなく、環境保全に取り組んでいる自治体や公益企業などの法人のみを対象に50台弱が販売された試験的なクルマだ。そのため、あれやこれやと2023年の視点からケチをつけるのも野暮な話ではある。しかしそれでも、135/80R13というか細いタイヤが、カーブを曲がるたびに「腰砕け」的になってしまったのはいかがなものかと思うし、これが納車された自治体や公益企業の人も、ちょっと面食らったのではないかと推測する。

 燃費を極めすぎるともはやゲテモノに

 とはいえ「究極の孤高系燃費アタッカー」といえば、初代インサイトでもピスタチオでもなく、フォルクスワーゲン XL1こそがそれに該当するだろう。

 2002年に最初のコンセプトモデルが発表され、2009年にはプロトタイプの第2弾をフランクフルトショーで初公開。そして2011年のカタールショーで3作目のプロトタイプが披露され、2012年12月についに市販バージョンの生産が始まったフォルクスワーゲン XL1は、まさに超絶孤高の燃費アタッカーだった。

 0.8リッター直2ディーゼルターボエンジンにモーターのアシストを加えたシステム全体の最高出力は68馬力で、5.5kWh容量のリチウムイオンバッテリーを搭載。

 全長3888mm×全幅1666mm×全高1153mmというほどほどのボディサイズを有するものの、車両重量はわずか795kg。モノコックやボディパーツなどはすべてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製であり、795kgのうちスチールが使用されている部分の重量はわずか184kgだった。

 それに加えてご覧のとおりのフォルムとすることでCd値は0.195という驚異的な数字となり、結果として燃費性能は「0.9L/100km」ということになった。日本風に表記するなら「111.1km/L」という、なんともスーパーな数値である。それゆえ燃料タンク容量はわずか10リットル。それだけで事足りてしまうのだ。

 そんなフォルクスワーゲン XL1の市販価格は11万1000ユーロだった。2012年12月当時のレートで計算すると、日本円にして約1221万円ということになる。……「エコを追求してみたら、結果としてスーパーカーになってしまいました」というのが、フォルクスワーゲン XL1だったのだろう。

 ここまでに挙げた3車、すなわち初代ホンダ・インサイトと三菱 ピスタチオ、そしてフォルクスワーゲン XL1は、各所および全体に「さすがにやりすぎでしょ!」と思う部分は多々あるものの、それと同時に「よくぞそこまで徹底させた!」と、思わずリスペクトしたくなる存在でもある。

 だが世の中にはリスペクトも擁護もしようがない、なんともダメな“エコカー”もある。

 そこまでダメダメでもないのだが、「さすがにちょっとダメでしょ」と思うのは、先代50系トヨタ・プリウスの最廉価グレードだった「E」グレードだ。

「JC08モード燃費40km/Lを突破する」という(おそらくは)会社側から絶対的に求められた数値をクリアするため、先代プリウスのEグレードは装備を思いっきり簡略にして軽量化を図った。具体的には、ほかのグレードでは容量43リットルであるはずの燃料タンクを38リットルに小型化し、ウォッシャータンク容量も2.8リットルから2リットルへとセコく(?)小型化。そのほか、前席のアームレストを取っ払うなどの地道な努力(?)により、なんとかかんとか車両重量を1310kgに抑えた結果として、「40.8km/L」を実現させたのだ。

※画像はプリウス「A」

 ちなみにほかのグレードのJC08モード燃費はFF車の場合で37.2km/Lであり、40.8km/LをうたうEグレードも、メーカーオプションを装着して車重が1320kgを超えると、燃費は39.0km/Lになってしまう。ある意味「40.8km/L!」とうたうためだけに誕生させられた、なんとも不幸な“エコカー”である。

 とはいえ先代プリウスのEは、いろいろとセコい部分はあっても普通に使えるクルマではあり、「こんなの絶対にダメでしょ!」とまでは思わない。

「こんなことやっちゃ絶対ダメでしょ!」と言いたくなるのは、先代日産ノートの「e-POWER S」だ。

「37.2km/L」という当時のクラス最高燃費をうたうため、燃料タンクの容量を41リットルから35リットルへと小型化……というところまでは、前述の先代プリウスのEと同じく、まぁ理解できなくはない。決してホメられた話ではないが、目くじらを立てるほどではないだろう。ちなみに後席のパワーウインドウも省略されているが、まぁこれもギリギリOKではあると思う。

 だが、当時の日産は「e-POWER Sにはエアコンを付けない。そしてオプションとしても装着できない」という禁断の術を使った。そんなまやかしの魔術によって、いや安っぽい手品によって、当時のトヨタ・アクアのカタログ燃費を上まわる37.2km/Lを(いちおう)達成させたのだ。

 ……そんなインチキをしてまで「勝つ」ことが、本当に勝利といえるのだろうか?

 さすがに「これはマズい」と思ったのか、e-POWER Sも途中からエアコンが標準装備となったが、エアコンレスのグレードを作ることを決定した当時のブランドマネージャー的な人は、本気で反省したほうがいい。

 私は個人的に「やりすぎなエコ活動家」にもついていけないが、「見えすいた手品を使おうとする自動車メーカー」にはもっとついていけない。それは、多くのユーザーから「軽蔑されてしまう=二度と興味を持ってもらえない」というリスクを多分に抱えた悪手なのだ。

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みんなのコメント

21件
  • 小型タンクはともかくエアコンレスってのは現実的じゃないよね 日本の暑さだと
  • 20年くらい前、3リッターカーという言葉があった気がする。

    燃料3リットルで100キロメートル走れる。と言う意味で、VWのルポとかがソレだったと思うのですが、なに分昔のことなので曖昧です。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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