最近、一部の旧車の価格高騰が著しい。
正確に言うならば、おおよそ1980~1990年代、つまりバブル期に発売されたり企画されたクルマの一部の価格が高騰している。
よく知られるところではトヨタ・スープラ(80)やR32世代の日産GT-R、FD世代のマツダRX-7、ホンダS2000といった車種だ。
もはやスポーツカー=パワーとスピードではない?近年のスポーツカーの存在意義とは
この理由についてボクはいくつかあると考えているが、それらについて述べてみたいと思う。
この現象は世界共通だ
まず、この現象は日本だけではなく、世界同時に発生している。
これについて、映画「ワイルド・スピード」が大きな要因としていわれているようだ。
「ワイルド・スピード」は2001年に一作目が公開されているが、劇中には多くのカスタムされた日本車が登場する(もちろんスープラ、RX-7、S2000も登場する)。
このインパクトは相当に強く、これを子どもの頃に見た少年たちが大人になり、実際にクルマを購入できるお金を持つようになって「子どもの頃に見た憧れのクルマ」を買うようになったため、それらの価格が高騰している、というワケだ。
そして、最近は海外で販売されているクルマの価格も用意に調べることができるようになったということもあり、海外のバイヤーが日本の在庫をチェックし、手頃な価格の在庫を「洗いざらい」持っていっている、という現状もあるようだ。
相場が上がると何が起きるのか
そしてここからが問題だが、相場が高騰すると、必ずそれを利用してひと稼ぎしようと考える連中が出てくる。
今後、値が上がりそうなクルマを買い占めて飢餓感を市場に作り出し、その後、買い占めたクルマを高値で少しづつ市場へとリリースすることで「高い相場」を形成したのち、より高くそのクルマを売ることができるような環境をつくりだすわけだ。そして、一般の消費者がこの動きに気づくことはなく、そして販売される価格だけを見て「このクルマは人気がある」と思い込むことになる。
そうすると個人単位でも「投機」のための購入して転売するという傾向が出てくるが、こうなるとその相場高騰に歯止めをかけることが難しい(「人気が人気を呼ぶ」という現象だ)。
だが、一定の段階で消費者は「冷静に考えるとこの価格は高すぎる」と気づいてそのクルマを買わなくなり、もしくは他に魅力的なクルマが出てきたり、社会現象そのものが収束し、やがて相場は沈静化することになる(一時期のハチロクがこの流れをたどっている。2億4千万円ともいわれたバブル期のフェラーリF40の価格高騰も似たような経緯だと考えている)。
そのクルマの持つ魅力も高騰には一役買っている
よって、こういった価格高騰の背景には「投機」という理由が見え隠れするが、ボクが一番重要だと考えるのは「そのクルマ自身の持つ魅力」だ。
なにかの映画やコミックが価格高騰のきっかけになることがあったとしても、それはそのクルマに「魅力があるから」にほかならない。
なんでも有名になれば人気が出るというワケではないし、信じられないような相場を形成したとしても、それはそのクルマに価値があると考え、お金を払っている人がいる。
だから、「特定のネオクラシックカーの価格が上昇する」ということは、つまり現代のクルマにはない魅力をそのネオクラシックカー持っているという再評価にほかならない、ともボクは考えている。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]
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