V12自然吸気に3基のモーターを搭載したHPEV(ハイパフォーマンスEV)、レヴエルトがついに始動。まずは富士スピードウェイの本コースでウェットだけど全開走行!続いては待望の一般道で乗ってみたら、新境地もシン境地もすべてが見えてきた。(MotorMagazine 2024年9月号より+10月号を再構成)
まずはサーキットにて。V12の「猛牛」が目覚める
富士スピードウェイのピットロードに並べられたランボルギーニ初の、プラグインハイブリッドスーパースポーツカー「レヴエルト」。その姿態を眺めれば、いかにもランボルギーニらしいプロポーションのなかに、獰猛さや力強さ、さらには端正で洗練された表情までもが浮かび上がってきて、チーフデザイナーであるミティア・ボルケルト氏の力量を改めて思い知らされることになる。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
続いてドライバーズシートに腰を掛け、正面のハンドルに目をやると、そこに4本のダイヤルが並んでいることに気づく。左上の赤いダイヤルから時計回りに説明すれば、「ドライブモード」「エレクトリックモード」「エアロダイナミクス」「フロントリフトアップ」をコントロールする機能が与えられている。
このうち、ドライブには「チッタ」「ストラーダ」「スポルト」「コルサ」「エゴ」の5モードが、エレクリックには「HV」「パフォーマンス」「リチャージ」の3モードが設定されており、ふたつのモードを組み合わせることでさまざまなシチュエーションにマッチした走行が可能となる。
ここで、先導車のウラカンSTOを操るインストラクターから、まずは「チッタ」+「HV」でピットレーンを走るよう、無線で指示が飛んできた。その言葉どおりに設定するとレヴエルトはEVモードとなり、自慢のV12エンジンを始動させることなく、静寂を保ったままスルスルと動き出した。これなら、深夜ないし早朝の住宅街でも遠慮せずに走れるだろう。
本コースに合流したあたりで再び指示があり、今度はドライブモードを「ストラーダ」、エレクトリックモードは「パフォーマンス」に切り替える。その瞬間、V12エンジンが目覚め、重低音中心の迫力あるエキゾーストサウンドでキャビンは満たされた。
静かなEVモードも決して悪くはないが、スーパースポーツカーでサーキットを攻めるなら、エンジンが生み出すビートをしっかりと感じ取りたい。しかも、V12ユニットが躍動し始めるやいなや、それまで冷静さを装っていたコクピット周辺が、俄然、生気を取り戻したかの如く、熱を帯び始めたように思われた。
やはり「猛牛」にはこの強烈な心臓の鼓動が、不可欠なのだ。
オーバーステアから盛り上がるファイティングブル魂
言いそびれていたが、試乗当日の富士スピードウェイは午前中が強い雨で、その後、雨は上がったものの、昼過ぎに走行を開始した時点ではコースの一部がまだ湿った状態。それでも、ストラーダのまま先導車のペースに合わせて走る限り、レヴエルトが凶暴な振る舞いを示すことはなかった。
多少、乱暴にアクセルペダルを踏み込んでもエンジン出力は適切に絞り込まれるので、後輪はしっかりと路面を捉えたまま走行ラインから微動だにしない。危なげない走りとは、まさにこのことだ。
「ストラーダ」モードが生み出す安心感をじっくり確認したところで、これとは正反対の「スポルト」モードに切り替える。ランボルギーニファンであれば先刻ご承知のとおり、スポルトは積極的にオーバーステアを許容する、ファン・トゥ・ドライブを満喫するためのモード。
ところが、高速コーナーの100Rでもレヴエルトは優れたスタビリティを発揮し、狙ったラインを正確にトレースしてくれる。後輪がスライドする予兆は、まったく感じ取れなかった。
しかし、大きく曲がり込むコーナーが連続する第3セクターに入ったところでやや強めのブレーキングからハンドルを切り込むと、かすかにリアタイヤの接地性が薄れたような感触が伝わってきた。ここでタイミングよくアクセルペダルを踏み込めば、レヴエルトは豪快なテールスライドを披露。
アクセルペダルを踏み込む右足の力を加減しながらカウンターステアをあてれば、文字どおりファイティングブルの名に相応しいオーバーステアの姿勢を保ったままコーナーを立ち上がった後、スムーズに後輪のグリップを回復し、次のコーナーに向けて突進し始めたのである。
その、コーナーの進入から脱出まで、すべて滑らかな挙動に終始するテールスライドを引き出せたことに多くのドライバーは深い満足感を味わうだろうが、ドライバーの力量だけですべてがコントロールされていたわけではないことは理解している。
実は、ドライビングダイナミクスを司るランボルギーニ独自のANIMAが、可変ダンパー/4WDのトルク配分/ブレーキ トルクベクタリングなどを緻密に制御することで、ドライバーに気づかれないようにテールスライドを引き出すとともに、その後も安定したオーバーステアの姿勢を保つよう、すべてのパラメーターを的確にコントロールしているのである。
伝統と最新技術による、新たなる走りの楽しさ
それにしても、そのあまりに自然な反応に「本当に電子デバイスが介入しているの?」と訝しがる向きもあるだろう。たしかに、車両の姿勢が乱れたことを検知してから電子デバイスが介入すれば、制御に遅れが生じ、どこかしらギクシャクとした動きになるものだが、レヴエルトにはそれがまったくといっていいほど見られない。
その秘密は、ランボルギーニ独自のフィードフォワード技術にある。フィードフォワードとは、一般的なフィードバック制御とは異なり、現象が発生する前に必要な対処を行う制御技術のことを指す。
もちろん、そんな「未来を予言する」ようなことがコンピューターにできるはずもないが、ランボルギーニはハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルへの操作から「ドライバーが何を期待しているか?」を予測。そこでオーバーステアを期待していると判断されれば、前述したデバイスを駆使してオーバーステアになりやすい状態をあらかじめ作り出してくれるのだ。ドライバーが違和感を覚えない最大の理由は、この点にあったといって間違いない。
こうした予測制御技術を、ランボルギーニはウラカンEVOで初投入している。レヴエルトでは、これを大幅に進化させることで、本来は制御が難しいV12ミッドシップマシンでも後輪を自在にスライドさせる究極のドライビングダイナミクスを実現したのである。
さらにいえば、優れた姿勢安定性を生み出す4WD制御技術を長年ランボルギーニが培ってきたからこそ、そこで手に入れたスタビリティをスライドコントロール性に振り分けることができたとも考えられる。
ちなみにランボルギーニの予測制御技術は特許を取得済みのため、他ブランドはマネをすることができないという。
話を試乗インプレッションに戻せば、最終コーナーを立ち上がったレヴエルトは、ストレート上で安全を確認してから全開加速を試みたにもかかわらず、第1コーナーのはるか手前で291km/hに到達。1015psのパワーと優れたエアロダイナミクスの実力を見せつけたのである。おそらく、最終コーナーを普通に立ち上がり、1コーナーへのブレーキングをもう少し我慢すれば、余裕で300km/hをマークしただろう。
続くラップでは、ドライビングモードをラップタイム重視の「コルサ」に切り替えてみた。すると、今度は早めにアクセルペダルを踏み込んでもテールスライドさせる気配も見せず、全力でコーナーを立ち上がる効率の高さを発揮したのである。
プラグインハイブリッドによりCO2排出量を半減させただけでなく、動力性能を大幅に向上させ、ファン・トゥ・ドライブの面でも新たな境地を切り拓いたレヴエルト。ランボルギーニ伝統の自然吸気式V12エンジンと最新テクノロジーを融合した新世代の「猛牛」は、彼らの輝かしい未来を鮮やかに映し出す役割を担って誕生したかのようだ。(ここまで文:大谷達也/写真:永元秀和)
そして舞台は一般公道へ。「ようやく走れた日本の道」で驚いた
サーキット試乗に続いてMotorMagazine 2024年10月号では、別の意味での「本領」を公道で試すことができました。乗り手は自動車評論家 西川 淳氏。冒頭から、「ランボルギーニのフラッグシップの走り方が、まるで変わった」と、その驚きを語っています。
その意味するところをもう少しだけ詳しく言えば、「カウンタック以降、連綿と続いていた猛牛フラッグシップの走りをまったく別次元へと変えてしまったのだ」となります。もっと掘り下げれば「サーキットに持ち出さずとも一般道ですでにとてつもない高性能を実感できる」ということ。
背景にはやはり「電動化」の恩恵があるようです。さまざまな意味で「すべてが計算され尽くされた制御のおかげ」と西川氏。
「さらば、LP」
「グッバイ、クンタッチ」
そんな一抹の寂しさを伴うコメントをつぶやきながらも、ハンドルを握る先に見えるのは、確かな進化と「新世代のスーパーカーかくありき」という喜びに他ならない様子。そして「ただただ唖然とするばかり」の先に、さらなる衝撃的(あるいはもしかすると笑劇的?)ひとことが、待っています。(文:Webモーターマガジン編集部)
ランボルギーニ レヴエルト 主要諸元
●Engine
型式:L545
種類:V12DOHC
総排気量:6498cc
ボア×ストローク:95.0×76.4mm
圧縮比: 12.6
最高出力: 607kW(825ps)/9250rpm
最大トルク:725Nm(73.9kgm)/6750rpm
WLTPモード燃費:11.86km/L
CO2排出量: 276g/km
●Motor&Battery
搭載バッテリー種類:リチウムイオン
フロントモーター最高出力:110/10000rpm
リアモーター最高出力:220kW/3500rpm
システム最高出力:746kW(1015ps)
●Dimension&Weight
全長×全幅×全高:4947×2033×1160mm
ホイールベース:2779mm
トレッド 前/後:1720/1701mm
車両重量(乾燥重量):1772kg
●Chassis
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速DCT
サスペンション形式 前:ダブルウイッシュボーン/後:ダブルウイッシュボーン
ブレーキ 前/後:Vディスク/Vディスク
タイヤサイズ 前、後:265/35R20、345/30R21
●Performance
最高速度:350km/h
0→100km/h加速:2.5sec
●Price車両価格:65,430,000円
[ アルバム : MM Another Story:ランボルギーニ レヴエルトの二面性を愉しむ はオリジナルサイトでご覧ください ]
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