今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代のニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「トヨタ アベンシス」だ。
トヨタ アベンシス(2003年)
ヤリス(日本名ヴィッツ)、カローラと並び、ヨーロッパ トヨタの3本柱を形成するのがアベンシスだ。いわゆるDセグメントに属し、セダン/ワゴン/5ドアハッチバックのボディバリエーションがある。ライバルはVW パサート、フォード モンデオ、ルノー ラグナなど。現行型は今年(編集部註:2003年)のジュネーブ モーターショーでデビューし、すでにヨーロッパでは人気が高まりつつある。
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そんなアベンシスが、早くも日本にやって来た。といってもヨーロッパ仕様の先行試乗会なのだが、この試乗会での反響をフィードバックさせて日本仕様を秋には発表させるという。試乗車を10台以上も用意したトヨタのやる気と底力を感じさせられた。
マークIIより100mmほど短いが20mm高く、車幅は同じ。フランスのニースにあるヨーロッパ デザインスタジオで手がけられたスタイル(オリジナルスケッチはヨーロッパ人デザイナー)は、フロントグリルのマークがなければトヨタ車とは思えない。ボンネットからグリルを経てバンパーに連なるラインは、なかなか力強い。全体的に骨太な印象だ。
インテリアは必要以上に高級感はないが、上質で落ち着いた雰囲気のあるものだ。試乗車は中間グレードのSOLというモデルだったが、ウッド調パネルや本革巻きステアリングも採用し、ステアリングのトヨタマークがなければドイツ製サルーンかと思えてしまう。シートはヨーロッパ仕様そのままなので、平均的日本人には少し大ぶりで、座面の圧力も強めに感じられる。マークIIよりホイールベースは80mm短いが、前後シート間の距離(カップルディスタンス)は935mmと25mm長い。リアシートは、このクラスとしてはヘッド&フットスペースとも十分だ。トランクルームもライバルたちより広い。
今回の試乗車は、セダンとワゴン。エンジンは1.6/1.8/2Lのガソリンと2Lのディーゼルが設定されているが、今回の試乗車は2Lの直噴ガソリンで、ミッションはマニュアルモード付きの4速AT。基本的にはヨーロッパ仕様のままだが、日本での試乗用にスピードメーターを180km/hスケールに、ナビやオーディオも日本用に変更されている。
試乗日はあいにくの雨だったが、2Lの直噴エンジンは市街地から高速まで十分なパワーを発揮し、常用域でのハンドリングも素直だ。先代セルシオ並みに抑えられたという静粛性で、雨の日でもアイドリングはもとより高速域でも静かだ。形状にこだわったというドアミラーの風切り音も皆無に近い。17インチタイヤを履いているにもかかわらず乗り心地は悪くなく、スタイルに見合ったしっかりした乗り味だ。
60~70km/hくらいで不整路面を走っていると、フロア振動が少し気になったこと。ラチェット式マニュアル操作のシートリクライニングが使い難いこと。また前述のようにシートの座感が体重の軽い(?)日本人にはフィットしにくいなどの気になる面も少々あったが、日本仕様にはフィードバックされて改善されるに違いない。
気になる価格は、250万円くらいになるだろうか? Dセグメントのヨーロピアン サルーン&ワゴンの購入を検討しているなら、アベンシスが登場する秋まで待った方がいいかもしれない。
■トヨタ アヴェンシス セダン(欧州仕様) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4630×1760×1480mm
●ホイールベース:2700mm
●車重:1360-1405kg
●エンジン形式:直4・4バルブDOHC・横置きFF
●排気量:1998cc
●最高出力:108kw(147ps)/5700rpm
●最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4000rpm
●ミッション:4速AT(マニュアルモード付き)
●タイヤ:215/45R17
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