■年間1万km以上走行したクルマは「過走行車」になる?
最近は新型コロナウイルス感染拡大とそれに起因する半導体不足により新車の納期が遅れていることから、すぐに購入できる中古車の需要が高まっています。
中古車を購入したい人はもちろん、今すぐというわけではないけど購入を検討している人のなかには、中古車サイトをチェックしている人も多いのではないでしょうか。
中古車サイトに掲載されている車両のなかには、相場よりかなりお買い得なものを見かけることがあり、年式を考えると走行距離が多い「過走行車」というものが存在しています。
価格が安い中古車は魅力的ですが、たくさん距離を走っている過走行車を購入しても問題ないのでしょうか。
まずは「過走行」とはどれくらいの距離を指すのかということですが、一般的には「10年10万km」が目安とされています。
つまり、1年で1万kmということになりますが、毎日の通勤でクルマを使う人や日頃から高速を多く利用する人はそれ以上に走行することもあり、「5年10万km」が正しいのではないかという声もあります。
中古車市場で走行距離の捉え方について、都内で中古車販売店を営むK店長は次のようにいいます。
「確かに中古車市場では『5万kmの壁』のようなものが暗黙のルールになっています。
国産車はともかく、輸入車の場合は総走行距離が5万kmを超えると大きなパーツの故障が増える傾向がありますので、敬遠される人もいます。
ただし中古車市場では国産車でも5万kmを超えると『距離多め』、10万kmを超えると『過走行車』という扱いになります」
ただし、これはあくまで程度を推測する目安でしかなく、それよりも経年による全体的な劣化を注意したほうが良いそうです。
「過走行でも確かにクルマの劣化は進行しますが、エンジンを含めて各部品が正常に仕事をしているので距離が伸びるわけです。
むしろあまり乗らずに、雨風にさらされた状態で長期間駐車されていたクルマのほうが状態は悪くなることが多いです」(中古車店 K店長)
つまり、年式の割に走行距離が極端に少ない中古車は、乗らずに駐車されていた可能性が高いということ。クルマはある程度の距離を走っているほうがコンディションを維持しやすいようにできています。
低走行車の場合、エンジンをかける頻度が少なければエンジン内に十分なオイルが循環されない状態になりがちです。
オイルが十分に循環されていれば各金属パーツとの接触部分に油膜が形成され正常に作動しますが、オイルの潤滑が長く途絶えてしますと油膜の形成に悪影響を及ぼし、いざ動かそうとしたときに金属パーツが擦れて摩耗が進んでしまいます。
「また、長期間の駐車で燃料タンクに入ったままのガソリンは酸化して劣化しています。
しかも高い揮発性のため長期間の放置で高粘度成分が残り、流動性が悪化してうまく燃焼することもできません」(中古車店 K店長)
ちなみに、ガソリンの劣化は湿度や温度によって大きく左右されますが、密閉性の高い燃料タンク内とはいえ1年で劣化が進み、2、3年も放置されたままではドロドロになってしまいます。
「雨風や湿度などによって付着した水分や汚れがボディだけでなく内部にまで侵入し、酸化を進めることがあります。
普段から走行していればオイルが循環し、取り込んだ走行風などで水分を飛ばすこともできるのですが」(中古車店 K店長)
乗る(走行距離が伸びる)だけでなく、乗らなくても価値が下がるのは商品である以上は仕方がない部分ではありますが、クルマも人間同様にある程度の運動(走行)はコンディションキープのために必要なのは間違いないようです。
「オークションで仕入れる車両も、やはり年式と走行距離のバランスは重視しています。年式が古くなるほどに保安部品などが調達しにくくなるので、過走行でもしっかりメンテナンスされた年式が新しい中古車なら、十分にお得感が味わえると思います」(中古車店 K店長)
■過走行の中古車を選ぶときの注意点は?
中古車を購入する際は、できる限り出費を抑えて状態の良いクルマを所有したいものですが、車種によっては市場に出回っている中古車のほとんどが過走行であるケースもあります。
たとえば手頃な価格で入手しやすい三菱「ランサーエボリューションVII」などは、走行距離が10万km以上、または10万km近くまで走行した中古車が多く存在しています。
2001年から2002年に生産されたという点を考慮すると過走行とは一概にいえないのですが、それでも「10万km以上走行済みの車両は、やはり中身はボロボロになっているのでは?」という不安は拭えません。
そのようなクルマを購入したい場合はどうすればいいのでしょうか。前出の中古車店 K店長に聞いてみました。
「インターネットに掲載されている画像だけでなく、実車を見に行くことが大切です。
全体が汚れていたりバランスなどに違和感を覚えるクルマは、雑に扱われていたり何らかのカスタムが施されていると考えていいでしょう。
カスタム自体が悪いというのではなく、どんなカスタムを施したどんなパーツを替えたのか、それによって発生する歪みがわからないことが問題です。
それを知るためにも、記録簿があるかも大切なポイントです。
記録簿はそのクルマが過去にどれだけメンテナンスされてきたかを知る大切な手段です。
前のオーナーがどんな乗り方をしてどんな整備をしてきたかが、過走行車選びには重要になってきます」
ちなみに、一度カスタムを施すと、ほかのところも変えたくなる「カスタム無限ループ」に陥りやすくなると、都内のカスタムショップのオーナーにいわれたことがあります。全体のバランスに違和感を覚えるクルマは要注意なのも納得です。
「どうしても欲しいクルマなら過走行でも購入しても良いと思います。ただし購入後にメンテすることが前提でということです。
購入後にしっかりと整備するための予算を確保して、過走行車を購入するのが良いでしょう」(中古車店 K店長)
たとえば、同じ車種ながら走行距離が7万kmと11万kmの中古車が2台あるとして、その価格差が30万円だったとすれば、30万円以下でしっかりメンテナンスすることでコンディションを回復させることもできる可能性もあります。
同じ車種で価格が多少高くても年式が新しい中古車を選ぶなど、臨機応変に判断することもときには必要でしょう。
では実際に過走行車を購入したら、メンテナンスはどこから着手すべきでしょうか。
「やはりエンジンオイルやミッションオイルなど油脂類は全部交換したほうが安全です。
とくに最近の国産車で増えているCVTなどは、走行距離が10万kmなら3回はミッションオイルを交換してあるかも確認したいです。
またウェザーストリップやブッシュ類など、保安部品を含むゴムや樹脂製パーツもまだ使えるかを購入前に確認しましょう」(中古車店 K店長)
さらに、タイヤやワイパーといった経年でも過走行でも交換が必要な消耗パーツも要チェックポイント。
タイヤは4本交換すると出費は嵩みますが、硬化やヒビ割れといったタイヤの劣化を気にしなくて済みますし、何より安全性に関して重要なパーツなので新品に履き替えておきたいところです。
「あとはバッテリーなどもできれば新品に交換すると数年は安心でしょう。ただでさえ過走行で“お疲れさま状態”のクルマですから、きちんとリフレッシュしてあげることでしばらくはコンディションを維持できると思います」(中古車店 K店長)
※ ※ ※
過走行車は一概に悪いとはいえないのですが、やはりきちんとした整備や部品交換などの手間がかかるようです。
とくに、高性能なモデルなどは見えない部分に金属疲労などのリスクもあり、そのあたりの対策を考慮したうえでの購入なら、結果的に安くて良いクルマを入手できるでしょう。
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みんなのコメント
これをそのまま中古販売ショップに頼まない方が良い。
やりました、というだけでやってない事が有るので。
特にミッションオイルなんて一般人は簡単に確認できないし。
買ったらディーラー行ってやってもらった方が確実です。