活発な動力性能と鋭敏な操縦性
生産終了が発表されたアウディTT。初代は1998年に発表され、現行型は2014年にモデルチェンジした3代目となるが、最後まで魅力的なクーペといえた。活発な動力性能と鋭敏な操縦性で、われわれに不足しがちな興奮を提供してきた。
【画像】有能で知的な2+2クーペ アウディTT 初代から3代目を比較 100台限定最終仕様も 全95枚
その中古車も同様に魅力的だ。英国市場では1万ポンド(約160万円)ほど準備すれば、我が物にできる。上品で高級感のある仕上がりを考えれば、お値打ちといえるだろう。
3代目TTに搭載されたエンジンの構成は比較的シンプル。当初は、180psの1.8L直列4気筒ガソリンターボの1.8 TFSIと、230psの2.0L 4気筒ガソリンターボの2.0 TFSIという2種類。高性能なTTSでは、同じ2.0Lユニットが310psへ引き上げられている。
最強仕様のTT RSには2.5L直列5気筒ガソリン・ターボが搭載され、最高出力は400psを誇った。また欧州市場などでは、2.0Lの4気筒ディーゼルターボもラインナップされていた。駆動方式は、前輪駆動のほかに四輪駆動も選べた。
2019年にマイナーチェンジを受け、ディーゼルターボは終了。ガソリンエンジンはアップデートを受け、グレード名も改められている。
2022年のラインナップは、TT RSを除いて2.0Lガソリンターボの1択。196psの40 TFSIと、244psの45 TFSI、306psのTTSという構成になっている。TT RSには、従来どおり直5ターボが搭載されている。
スーパーカーに並ぶ0-97km/h加速のTT RS
英国仕様のトリムグレードは、通常のTTではスポーツとSラインの2種類。スポーツでは、キセノン・ヘッドライトにエアコン、アルカンターラ・シート、デジタルラジオとブルートゥース対応ステレオが備わる。Sラインでは、LEDヘッドライトになる。
ちなみに、英国ではフロント・パーキングセンサーやナビはオプション扱いだった。中古車を探す場合は、装備内容を確認したいところ。
TTの特長は、初代から受け継がれている。印象的なほど機敏なシャシーに強力なエンジンを搭載し、直線でもコーナーでも素早く走る。運転しやすく、低速域でも乗り心地は良好。製造品質は高く、ソリッドで耐久性も高い。高級感は強みといえた。
最も控えめな180psの1.8L 4気筒でも、動力性能は充分以上。コストパフォーマンスに優れている。230psの2.0L 4気筒の場合、0-97km/h加速を6秒以下でこなす俊足を備える。TTSはさらに速いが、中古車価格は安くなく維持費もかさむだろう。
TT RSは、スーパーカーに並ぶ0-97km/h加速3.7秒というダッシュ力を披露するものの、若干フロントヘビー。コーナリングの楽しさは、そこまで秀でてはいない。初期のディーゼルエンジンは燃費に優れ洗練されていた。
悪くない実用性 リアシートは狭い
3代目のインテリアは、1998年の初代TTほどの斬新さはなかったものの、ハイテクでハイセンス。高級車に迫る上質な素材で仕立てられ、ダッシュボードのレイアウトは整い扱いやすい。
実用性も悪くはない。フロントシートには充分な空間が用意され、小物入れも不満なく用意されている。荷室は広く、大きなリアハッチからの出し入れも容易。リアシートの背もたれを倒せば、長い荷物も載せられる。
ただし、+2のリアシートは基本的に荷物置き場と考えていいだろう。小柄な大人でも、フロントシートを前に寄せなければ座ることが難しい。頭上にはリアガラスが迫る。象徴的な、流麗なルーフラインの代償だ。
知っておくべきこと
3代目TTの英国市場での中古車価格は、1万ポンド(約160万円)程度から。状態の良い2016年式や2017年式を探せる。走行距離が短い2019年式になると、2万ポンド(約320万円)へ高くなる。四輪駆動のクワトロの方が、前輪駆動より値は張る。
燃費は初期の1.8 TFSIで16.7km/L、後期の40 TFSIでは16.4km/Lがうたわれている。244psで高速な45 TFSIでは15.4km/Lへ悪化する。信頼性は高く、姉妹サイトの調査ではTTはクラス1位に輝いている。
英国のアウディ・ディーラーは、3年以上前のモデルに定額のメンテナンスサービスを提供している。2022年時点での価格は、2.0L以下の軽微な整備で200ポンド(約3万2000円)、主要な整備が345ポンド(約5万5000円)となっている。
TT RSでは、それぞれ260ポンド(約4万1000円)と395ポンド(約6万3000円)へ上昇する。
購入時に気をつけたいポイント
リコール
3代目TTは、目立った不具合が報告されていない。2014年4月から2019年5月までのモデルで、燃料タンクに関するリコールが出されている。タンクとブラケットの間にシールドを追加する作業が必要で、対応済みかどうかはディーラーで確認できる。
電気系統
基本的に信頼性は高いが、パワートレインと関係のないインテリアの電装系で幾つかの故障が報告されている。多くが1週間以内に治る軽微なもののようだ。すべて正常に動くか確かめたい。
ATフルード
Sトロニックと呼ばれるオートマティックを搭載する場合、6万km以内にフルード交換されているか確認する。将来的に致命的なダメージを招きかねない。
英国編集部の推しチョイス
ベスト:2.0 TFSI
初期型の2.0L 4気筒ターボがイチオシ。最高出力は230psあるため、ゆとりある動力性能を備え、洗練され燃費も悪くない。スマートな見た目のクーペを活発に運転できる。
ワイルドカード:TT RS
車重は軽くないものの、間違いなく速い。クワトロ・システムは、必要に応じて100%のパワーをフロントかリアに分配できる。直列5気筒ターボエンジンのサウンドは聴き応えがある。
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