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トヨタの全車種併売化からまもなく1年! 新車販売改革によってユーザーのメリットは増えた? 減った?

掲載 更新 8
トヨタの全車種併売化からまもなく1年! 新車販売改革によってユーザーのメリットは増えた? 減った?

 トヨタが販売店の全店全車種併売を全国規模でスタートさせたのが2020年5月。まもなく1年を迎えるわけだが、全車種併売を始めてから現在までどのような変化が起こったのか?

 全車種併売化は販売店にどのような影響をもたらし、そして何よりユーザーにとってのメリットは増えているのか? それとも減ったのか? トヨタの全車併売化による現状を新車販売事情に詳しい小林敦志氏が解説する。

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文/小林敦志
写真/TOYOTA、ベストカー編集部

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■トヨタの全車種併売化はコロナ禍でスタートした

 トヨタは2020年5月より、国内で4チャンネル(トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店)展開している、トヨタブランド系ディーラーの全店舗において、一部車種を除き、全車種併売化をスタートさせた。

 それまで各チャンネルにあった“専売車種”がなくなり、ほとんどすべてのトヨタ車がすべてのトヨタ系ディーラー店舗において購入できるようになったのである。

 全店での全車併売化は当初、2022年から2025年にかけて実施する予定だったのを前倒ししたのだが、スタートした2020年5月は新型コロナウイルス感染拡大によって全国的に緊急事態宣言が発出。世の中が混乱しているなかでの新たな船出となった。

■緊急事態宣言の影響はあったが、併売の混乱もなく売れゆきは好調!

 それでは、実際この全店全車種併売化がどのような影響を与えたのか、まずは統計数字からそれを検証しよう。

 国内の新車販売市場は、全国的に緊急事態宣言が発出された2020年4月と5月はかなり販売台数が落ち込んだのだが、5月末の緊急事態宣言の段階的解除後は急回復に転じた。小売りレベルだけを見れば、「コロナ前より売れている」という声も販売現場から聞かれるほどの絶好調ぶりが続いている。

 2020暦年締めでの、トヨタの登録車年間販売台数は2019年比で93.5%となった。2020年4月と5月の大幅な落ち込みが影響し、前年比100%以上とはならなかったものの、コロナ禍ではまずまずといえる実績となっている。

コロナの影響もあり、昨年の販売台数は若干減少したが、併売化後も売れゆきは堅調といえる。興味深いのはその中身。実は併売化により、車種による悲喜こもごもが生じている

 2020年9月からの直近6カ月の各単月の販売実績を各前年同月と比較すると、9月92.5%、10月137.7%、11月111.6%、12月110.7%、2021年1月113.5%、2021年2月104.7%となり、9月を除き前年比100%以上となっている。

 全車併売化は国内全体での好調な新車販売の波にも乗り、確実に効果をあげているといっていいだろう。

 今回の全車併売化が実施される前でも、プリウスやアクア、C-HRなど、すでに全店併売扱いのモデルも多く、その多くは人気モデルとなっていた。そして、さらに併売化により、ヤリスやカローラ、ハリアー、アルファード、クラウンなどの専売車種が全店併売扱いになっている。

■併売化により、売れ筋にも変化が。一番恩恵を受けたのは、あのミニバン

 専売車種の併売化による成功例では、アルファードの現状における“爆売れ”状況は語らずにはいられないだろう。

 アルファードはトヨペット店の専売だったものが併売化されている。兄弟車のヴェルファイアもネッツ店の専売から併売化されているが、それ以前からすでに販売台数が低迷しており、4月末に実施予定の改良では単一グレードとなるようだ。

 実は これには2020年夏頃から、「アルファードを積極的に売るように」と、販売現場には指示があったことが影響している。現場のセールスマンも「特にこだわるお客様以外はヴェルファイアを売らない」とのことであった。

 また、併売化でアルファードの販売増に貢献したのは、トヨタ店とカローラ店といえるだろう。

月販1万台以上と絶好調のアルファード。併売化の恩恵を最も受けたクルマといえる。ディーラーとしても、顧客に売れ筋のクルマを勧めやすくなったと手応えを感じているようだ

 トヨタ店では併売前から、クラウンユーザーには「アルファードが欲しい」という声が多かったとのこと。しかし、アルファードはトヨペット店の専売だったので、トヨタ店にエスティマがラインナップされていた頃はエスティマを勧めたり、なんとか説得してクラウンを乗り継いでもらったりしていたようだ。

 エスティマよりもアルファードのような豪華なテイストが好きで、孫と親子三代でドライブに行きたいとか、多くの仲間と一緒にゴルフに行きたいなどという、富裕層の“アクティブシニア”がアルファードに興味を示していたようだ。

 そして、2020年5月以降はトヨタ店でもアルファードを扱うようになり、クラウンからアルファードへ乗り換えるユーザーが増えたことが、いまのクラウン販売苦戦傾向の影響のひとつと考えられる。

 カローラ店ではエスティマユーザーのなかから、「アルファードに乗り換えたい」というオファーが目立ったとのこと。オファーの有無に限らずエスティマユーザーへアルファードへの乗り換えを勧めていったようだ。

 また、アルファードはリセールバリューがいい。そのため残価を高く設定できるので、残価設定ローンを組むとノア/ヴォクシーの月々の支払い額に数千円足すだけでアルファードに乗れるため、現在もアルファードへの乗り換えを積極的に進めているようである。

カローラも併売後「売りやすい」とディーラー各社で歓迎されている。グローバル化されたとはいえ、車幅やホイールベースを「日本仕様」をしたことが功を奏したようだ

 また、アルファードほど派手な動きはないものの、カローラシリーズの併売化もカローラ店以外のチャンネルからは歓迎された。

 3ナンバー化したことで、マークIIやマークXなどからの乗り換え促進ができるし、現行型プリウスのエッジのきいたデザインへの反応がよくない先代型プリウスユーザーにもカローラセダンのハイブリッド車を勧めやすいとのことであった。

 カローラツーリングはトヨタブランドでは事実上オンリーワンのステーションワゴンであるうえ、販売台数は限られるものの貨客兼用する法人需要までカバーできるので歓迎された。

 ただ、クラウンについてはトヨタ車のなかでも特別なモデルなので、新たに扱い始めたチャンネルでは、なかなか扱いにくいとの声も多い。

■市場規模の縮小で、各メーカーは販社の統廃合と併売化を進めざるを得なかった

 バブル経済の頃は、新車市場がいまの倍の規模で、しかも右肩上がりで市場拡大が続いた。車種数を増やせば増やすほど、新車が売れるというのも言い過ぎではないほど、とにかく新車が売れた。

 その当時はトヨタ以外でも、日産やホンダもチャンネルごとに専売車を設けていたりしたが、その後日産はチャンネル(日産店、プリンス店、サティオ店)を維持しながら全車併売化した。

 ホンダもプリモ、ベルノ、クリオと3チャンネルあったものをホンダカーズに統合し、全車併売化を実施している。

 全車併売化は市場規模の縮小に合わせたラインナップの統廃合を進めるという意味も大きい。また、バブルの頃に比べれば消費者のクルマに対する興味も薄れ、「同じトヨタの店に行っても、欲しいクルマが売っていない」などと、専売車が販売活動にネガティブに働くようになったことも影響しているようだ。

 トヨタは全車併売化にあたり、積極的な車種の統廃合や店舗の統廃合を行わず、そのまま全車併売化だけを行っている。そのため、ノア/ヴォクシー/エスクァイア(3兄弟)が同じ店で販売されていたりする。

 車種の統廃合については、改良やモデルチェンジのタイミングで進められていくようで、ノア3兄弟はすでにヴォクシーが単一グレード扱いとなっており、年末ともいわれるフルモデルチェンジでは、エスクァイアが廃止される見込みとのことである。

ノア3兄弟も次のモデルチェンジで、一気にノアへ統合されるとの情報だ。もともと各販売店用に兄弟車を増やした経緯もあり、併売による統合は自然な流れだろう(写真は編集部による予想CG)

 モデルの廃止も進んでいるので、モデルの統廃合は順調に進んでいるといっていいだろう。

 店舗の統廃合については、全国のトヨタ系ディーラーは各地元の有力企業や“名士”がオーナーとなり、原則トヨタとは資本関係のない“地場資本ディーラー”がほとんどであるため、難航するのではないかともいわれていた。

 しかし、すでに地域によっては、トヨタの直営ディーラーの地場資本ディーラーへの譲渡などが行われており、東京都内では直営販社を統合し、“トヨタモビリティ東京”としている。

 東京以外でも、神奈川トヨタ、トヨタカローラ横浜、ネッツトヨタ横浜、ネッツトヨタ湘南が合併して「トヨタモビリティ神奈川」に屋号を統一したり、「トヨタモビリティ富山(富山トヨタ、富山トヨペット、ネッツトヨタノヴェルが合併)」などが設立されており、全国的に見れば販社統合も進められている。

 今後は“トヨタモビリティ”化が実施されたあとに店舗の統廃合による集約化が本格化していくことになるだろう。

■トヨタ車は今年も買い時が続く。しかし、今後は売り方も変わってくる

 また、全店併売化だけが先行したことにより、トヨタ以外のメーカー系ディーラーが介在することなく、トヨタ系ディーラー同士での値引き合戦が顕在化した。同じ車種を、資本の異なる販社の店舗同士で競わせれば、値引き条件でしかセールスマンは勝負するしかない。

 2020年の様子を見ていると、まさにトヨタ系ディーラー同士での“仁義なき闘い”の話を数多く聞くことができた。この傾向は2021年も続きそうなので、まさに“トヨタ車の買い時”が続くことになる。

 しかし懸念材料としては、販社合併や店舗の統廃合が進んだ時にも、いまのトヨタ車の買い得な状況が続くのかということである。

 販社統合が進めば、多くの店舗は同じ資本系列やグループ系列となるので、値引きを競わせることができなくなる。そうなると普通に考えれば、値引きはいまほど期待できなくなるはず。

 また、現状では他メーカーに類を見ない緻密な店舗ネットワークがトヨタの売りでもあるが、販売拠点(店舗)の統廃合がどこまで進むのかという点もあるが、いまほどの利便性が果たして担保されるのかということは不安が残る。

 少子高齢化による人口減少社会はますます進み、国内の新車販売市場は、今後政府が移民を積極的に受け入れるといったことでもしなければ、縮小傾向は今後も続いていく。そのような縮小市場に合わせるためにトヨタはディーラーネットワークの再構築を進めている。

 さまざまなローンプランだけでなく、月々定額料金で乗る“KINTO”といった新しい新車の乗り方の提案も行っている。

今年もフルモデルチェンジ車が続々と登場する。ランクルも新型となるが、併売により新たな顧客を掴み、売れゆきが変わるのか?(写真は編集部による予想CG)

 「トヨタだからできる」ともよくいわれるが、軽自動車にのめり込むことなく、日本市場に合わせた、日本専売と呼んでいいモデル(登録車)も多数ラインナップしている。単純に販売現場の見直しだけで済んでいないところも、今回の全車併売化の動きは実にトヨタらしいと見ている。

 圧倒的な国内販売シェアを持ち、販売ネットワークの再構築が完成していけば、今ほど値引きが“荒れることはない”というのは容易に察しがつく。現状のトヨタ車の“買い得期”がいつまで続くのかも興味深く見守っていきたい。

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みんなのコメント

8件
  • 先日トヨタ店に行ったら、売れ筋のハリアー、アルファード、ヤリスクロスは置いてあったが、カローラシリーズやヤリス、ルーミーなんかは置いてなかった。売る気がないのか、地域の販売店で
    話し合っているのか。仕方がないが、いまだに旧取扱車が、どのチャンネルもメインだと感じている。
  • ユーザーは選べるし、トヨタ本体も競争を促せるし?
    割りを食ったのはペット店。
    ドル箱のアルベル持ってかれたのに、かといってランクルを扱えるようなリフトがない。
    ここにきて設備投資して建て替えてるとこが多いのは気の毒。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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