伸び悩むEV販売 100%普及は実現可能か
英国ではエネルギー価格の上昇などによる「生活費危機」と、ますます強まるEV反対派の声が相まって、消費者のEVへの乗り換え意欲が減退している。
【画像】英国EV販売を牽引する主力モデル【VW、フォード、テスラのEVモデルを写真で見る】 全60枚
英国におけるEVの新車登録台数は、今年1~6月で前年同月比32.7%(3万7719台)増加したが、その多くは半導体不足の緩和やその他の部品供給問題の解消によるものである。
市場全体としては18.4%増だが、これとは対照的に、かつては指数関数的な成長を示し、市場全体の健全性を示す重要な指標であったEV市場シェアの伸びは、はるかに緩やかである。
2019年の英国EV市場シェアは0.9%、2020年には4.4%、2021年には7.2%、2022年には14.4%と上昇を続けてきた。今年は6月までで16.1%をマーク。それでも内燃エンジン車・ハイブリッド車が禁止される2035年(英国政府の現方針)までに100%普及させるという目標からすると、成長は非常に緩やかなものであり、政府が中間目標として来年設定する22%にも遠く及ばない。
減速の背景には何がある?
この市場シェアの頭打ちは、全体的な自家用EV登録台数の低迷によるもので、前年同期比で約20%減少し、エンジン車を含む全新車登録台数の半分以下となっている。
自家用、すなわち個人所有として今年販売されたのは、フォルクスワーゲンID.5のわずか13%、テスラ・モデルYの21%、フォード・マスタング・マッハEの41%にとどまる。
英Auto Traderが発表した調査レポート「The Road to 2030」によると、EVに関する販売店への問い合わせ件数は前年比で65%減少しており、割合としては全体の9%(前年27%から減)にとどまるという。少なくとも個人の消費者においては、EVへの関心が薄れていると言えるだろう。
補助金で需要拡大につながる?
現在、当然といえば当然だが、消費者のEV購入を軌道に乗せるために、補助金などのインセンティブを再導入する、あるいは障壁を取り除くべきだという声が業界全体から大きくなっている。
フィアットUKのダミアン・ダリー代表は、小型EVの500の購入者に対し、3000ポンド(約55万円)の補助金を支給することを決定した。「最悪のシナリオは、人々が手をこまねいて、切り替えの最後の瞬間まで待つことによって、移行が遅れることです。つまり、それを促すインセンティブが必要なのです」と同氏は言う。
「当社の補助金(E-grant)の力は明らかです。この1か月で、500へのお問い合わせは過去5か月を上回りました」
英国フランチャイズ・ディーラー協会(NFDA)のスー・ロビンソンCEOも同意見だ。 「EVの販売促進に大きな役割を果たしたプラグインカー補助金(PiCG)の再導入を提唱したい」
「価格格差は市販のEVモデルが増えたことで縮小しつつあるものの、依然として普及の大きな障壁となっています。しかし、英国政府のPiCGは2022年6月に撤廃され、国内のEV需要に悪影響を与えました。(内燃エンジン車の新車販売が禁止される)2030年までにスムーズに移行できるかどうかは、EVが経済的かどうかに依存しています」
充電コストの低減は有効か?
英国の有力な業界団体である自動車製造販売協会(SMMT)は、現在の経済状況を踏まえ、若干異なるアプローチを提唱している。同協会のマイク・ホーズCEOは、一般家庭での充電にかかる付加価値税(VAT)が5%であるのに対し、公共施設での充電には20%かかる点を指摘し、是正に向けたロビー活動を展開している。
「同じ量のエネルギーを補給するのに、VATが家庭の4倍というのは不公平です。VATを引き下げることで、政府はこの問題に対処するだけでなく、移行をやり遂げるという意思を改めて示すことになるでしょう」
EVロビー団体FairChargeのクエンティン・ウィルソン氏は、当初の提唱者であり、SMMTの意見に熱烈な支持を寄せている。
「わたし達は、このテーマについて財務省と3回も直接会談しました。閣僚たちにも会ってきました……しかし、イースター島のモアイ像に自分の趣味について説明するようなものです。政府関係者でEVを運転している人に会うのはまれで、今日に至るまで、彼らは興味を示していません」
FairChargeの試算によると、VATの引き下げにより財務省は年間3800万ポンド(約70億円)の損失を被ることになるが、これは近年、燃料税を合意された倍率から引き下げるために「費やした」という20億ポンド(約3660億円)に比べれば、ほんの数%に過ぎない。
ウィルソン氏はまた、燃料業界が減税後に消費者に過大請求したとされる10億ポンドとは対照的に、EV充電業界は節約分を即座に消費者に還元することにすでに合意していると強調する。
SMMTのホーズ氏は、多角的なアプローチが必要だと言う。「インフラ、規則、送電網、地方自治体の協力など、障壁を取り除くためにあらゆる手段を講じるべきです」
しかし、EV販売促進のために対策が必要であることには誰もが同意しているが、2030年/2035年の内燃エンジン車・ハイブリッド車の販売禁止を延期すべきだというメディアの主張を受け入れる者はいない。
「業界は性能を向上させた新製品に何十億も投資してきました。彼らは、2030年でもそれ以降でもなく、今すぐそれらのクルマを売りたいのです」とホーズ氏。
これは、英国の公共充電事業者を代表する業界団体ChargeUKのイアン・ジョンストン会長も同じ意見だ。同氏は、期限を明確にすることが重要だと言う。「2030年の禁止は重要です。業界と投資家に保証と信頼を与え、インフラを迅速かつ効果的に展開できるようになります」
「それは、英国のネット・ゼロ目標の達成を助けることになり、ひいては質の高い持続可能な雇用を創出し、地球に有害な排出物を削減し、わたし達が呼吸する空気から健康に有害な微粒子を取り除くことにつながるのです」
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みんなのコメント
冷静になればわかりそうな事を信者だけが騒いでいただけで…
補助金目当てで一定の普及はしたけど、補助金無ければ興味もない。
今はうるさいテスラ推しも半年すれば小声になるだろ。