この記事をまとめると
■ジョルジェット・ジウジアーロによってデザインされたスズキの「フロンテクーペ」
100年の間には冒険したクルマも! 「名車」だらけのスズキが生んだ「迷車」6台
■フロンテクーペはリヤエンジン・リヤドライブ(RR)方式が特徴だった
■軽自動車であるにもかかわらず走行性能はスポーツカーテイストであった
2ドアクーペでRRを採用したスポーティな軽自動車
スズキ・フロンテクーペは、1971年に売り出された軽自動車の2ドアクーペだ。
スズキは、1955年(昭和30年)にスズライトという軽自動車を発売した。スズライトは、1963年に三重県の鈴鹿サーキットで開催された第1回日本グランプリの軽自動車部門で優勝している。スズキは2ストロークエンジンにこだわり、1970年から対応が求められた排出ガス規制でも、1977年(昭和52年)に、昭和53年度排出ガス規制に適合する排出ガス浄化を2ストロークエンジンで達成する。
スズライトは、フロンテに次の時代を託すことになる。スズライトが前輪駆動であったのに対し、フロンテは後輪駆動に変更された。なおかつ、エンジンを客席後ろに搭載する、リヤエンジン・リヤドライブ(RR)の方式を採り入れた。
この2ストロークエンジンとRRを活用して誕生したのが、フロンテクーペである。造形は、イタリアの著名なカーデザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロによるとされ、フロンテが丸みのある外観の乗用車であったのに対し、フロンテクーペは精悍な角張った姿で、大きく傾斜したフロントウインドウが速さを求めたスポーツカーの魅力を象徴していた。
走行性能はまるでレーシングカートのような操縦性を実現
運転席に座ると、視線がいかにも低い。運転姿勢もやや寝た格好となり、まさにスポーツカー然とした空間に心を躍らされた。3気筒の2ストロークエンジンは、やや甲高い排気音とともに鋭く高回転までまわり切った。わずか360ccという排気量ながら、3気筒を選んだことによりショートストロークとし、高回転型エンジンとして高出力だけでなく吹き上がりのよさを実現した。サスペンションは硬めの設定で、ハンドル操作に対する応答は鋭く、あたかも公道でレーシングカートを走らせるかのような操縦性を体感させた。
単に速いだけでなく、運転感覚のすべてが乗用車の域を超え、まさにスポーツカーの世界を味わせ、我を忘れ運転に没頭させる、他に類を見ない軽自動車だった。
同じような特別な思いにさせたのが、フロンテクーペの1年前に発売されたジムニーだ。スポーツカーとオフロード四輪駆動車というまったく異なる趣向だが、身近な価格で手にできる軽自動車で、本格的なスポーツカーや優れた走破性を備える四輪駆動車という車種をスズキは世に送り出したのだ。のちに発売される超低価格のアルトとともに、軽自動車市場に衝撃を与えるこうした商品戦略を率いたのは、のちに社長となり会長になる鈴木 修である。
フロンテクーペのエンジンは、FL500という軽自動車のエンジンを搭載するフォーミュラカーでも圧倒的強さを発揮し、ミニF1と形容されたFL500時代を輝かせたのであった。
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みんなのコメント
同じとこなんて一つも無いから。
フロンテの方が怖いし。