ワーゲン乗りが定年退職後に1936年製シボレー 1/2トン ピックアップを購入
戦前のアメリカン商用車、1936年製シボレー 1/2トン ピックアップをDIYで快適車中泊カーにカスタムした伊藤 潤さん。それだけでもすごいのですが、トタン屋根のドーム型キャンピングシェルはかつての米軍兵舎のイメージで、全体としては懐かしの西部劇に出てくる幌馬車を再現するという、完璧なコンセプトで仕立てられていました。アイデア満載のオーナーに話を聞いてみました。
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子どもの頃、まだ日本のあちこちに残っていたアメリカの残像を愛車へと投影
埼玉県の国営武蔵丘陵公園で2024年6月1日~2日に行われた「Let’s Chill Out!(レッツチルアウト)」は、アウトドア&カスタムカーを軸に、カーショーとオートキャンプが融合した新しいスタイルのイベント。
その会場で、西部開拓時代のキャラバンをイメージして幌馬車をピックアップトラックに置き換え、大好きだという西部劇の世界観をみごとに演出していたのが伊藤 潤さんだ。
勤め上げた会社を6年前に定年退職した記念として、奥さまのお許しを得て購入したという愛車、シボレー「1/2トン ピックアップ」は1936年製。長年、旧いフォルクスワーゲン「タイプ2」(通称ワーゲンバス)での生活を一緒に楽しんできたという理解ある奥さまにも、まさかここまで旧いクルマに手を出すとはと驚かれたそうだ。
「僕らの子ども時代は、アメリカのテレビドラマを見て育ってきて、その頃にインプットされたウエスタンやアメリカのファーマースタイルといったイメージは憧れでした」
荷台の自作キャンピングシェルはじつは2作目
荷台には鈍く輝いた亜鉛メッキの外観を持ったキャンピングシェルが鎮座しているが、なんと伊藤さんの手作りだという。
このかまぼこ型のトタン製の屋根は、クォンセット・ハットと呼ばれている建物が元ネタ。製造もしやすく軽量ゆえに搬送も可能で、多目的に使えることから、第二次世界大戦時のアメリカで大量に作られており、終戦後の日本でも兵舎などとして大量に建設されていた。幼少時、まだ米軍基地や住宅があちこちに残っていた頃に伊藤さんの頭に焼きついたアメリカのイメージのひとつだという。
そうしたアメリカンなイメージを見事に投影したこのキャンピングシェルは、驚くことに2作目だそうだ。前作のキャンピングシェルは木造で、DIY雑誌『ドゥーパ』でも特集記事だけでなく表紙も飾ったほどの力作。今回はまた違った手法で、そしてやはりハイクオリティなキャンピングシェルを完成させた。
「新しいのができましたとドゥーパ編集部に連絡したのですが、木工DIYがメインの雑誌だからか今回のはウケなかったようです(笑)」
クルマの機能面は現代の交通事情に合わせアップデート
そして愛車だけでなく、キャンプサイトを演出する手作りアイテムもアイデア豊富でバランスよく配置され、とても素敵な空間となっていた。
聞けば伊藤さん、じつは自動車メーカーのデザイナーとして、たくさんの製品を世に送り出す仕事をしていたそうだ。
素敵な演出だけでなく機能面でのアップデートにも抜かりはない。1936年製のシボレー ピックアップも現在の交通事情に合わせて、電装系は6Vから12Vにし、ハロゲンのヘッドランプに換装。さらに電動ファンを追加するなど、21世紀の日本でも困らないように対策を施している。
「手に入れて間もない頃、軽トラックをベースにした手作りキャンピングカーの集まりが安曇野であり参加したのですが、2つの峠越えの登り道、シフトダウンすると回転も上がり水温が上昇してラジエターキャップから蒸気が噴いていました。峠道で大型トラックが背後に迫るヒヤヒヤのひとり旅、なんとか辿り着いたのですが、それがきっかけで対策をしました」
当時はまだ荷台にテントというスタイルでの参加だったそうだが、その時に知り合った手作りキャンパーの仲間とは現在も仲良く情報交換をしているそうだ。
「これからの季節は夜討ち朝駆けで、イベントを楽しみます」
と積極的な伊藤さん。7月には、相模湖の奥で新しい生活を模索する若者のビレッジで行われるキャンプイベントに行くと語ってくれた。伊藤さんの世界観は、若者たちのこれからにきっと素敵な影響を与えてくれたことだろう。
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