ハイブリッド専用コンパクトカーとしてデビューし、ヒットモデルとなったトヨタの初代アクア。7月19日に登場した2代目となる新型も当然、同じような売れゆきが予想されたが、販売店の受注状況はちょっと期待外れになっているという。
その一方で日産のハイブリッド専用コンパクトカー、ノートの派生モデルであるノートオーラのセールスは意外に好調だというのだ。明暗を分けている新型コンパクトカーのアクアとノートオーラの販売事情に迫る。
掴んだ!! 全グレード体系判明 新型GR 86は10月発売確実&8月下旬に受注開始!!!
文/小林敦志
写真/トヨタ、ホンダ、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】使い勝手が大幅アップの新型『アクア』とプチエレガントなノート『オーラ』どっちが好みか写真でチェック!!
■販売現場での新型アクアの反応は意外にも……
トヨタ アクアの新型となる2代目が7月19日にデビューした。
2021年7月19日にデビューした2代目の『新型アクア』。ホイールベースの延長と全高アップで、現行車より室内空間を広く快適にした
先代モデルは10年間販売され、累計販売台数もかなりのもので、その初代ユーザーが乗り換え母体にもなるだろうから、2代目はデビュー直後から“爆売れ”して納期遅延が深刻なものになるだろうと筆者は考えていた。
しかし、販売現場で聞いてみると「お客様の反応はいまひとつ」という答えが返ってきた。デビュー直後に聞いた時には、「ケースによっては8月中に納車できるかもしれない」とのことでびっくりした。
ここ最近デビューしているトヨタの新型車は深刻な納期遅延に悩まされているモデルが目立つ。ヤリスクロスの半年待ちでも深刻なのに、新型ランクル300ではなんと“4年待ち”だという。しかし、新型アクアはトヨタのホームページ内にある、“出荷目処”でも2カ月程度となっている(7月下旬現在)。
■本社から『アクアをもっと売れ』的発言! なにをあせっているのか?
トヨタのニュースリリースでは、新型アクアの月販目標台数は9800台となっている。ちなみに2017年に行った先代モデルのマイナーチェンジ時には月販目標台数は1万台であったので200台減っていることになる。
先代のマイナーチェンジでは、同時に“クロスオーバー”が新設定されているが、新型にはそれがないことも影響しているのかもしれない。ハイブリッドだけでなく、ガソリン車もライナップするヤリス(ヤリスクロスは含めない)の月販目標台数は7800台となっている。新型アクアの月販目標台数は先代の販売実績をベースとした意欲的な数字と言っていいだろう。
ただセールスマンは「初代アクアがデビューした時は、コンパクトハッチバックでハイブリッド専用なのはアクアぐらいしかありませんでした。しかし、いまは当たり前のようにハイブリッド車が同クラスでラインナップされているので、先代並みの販売実績を維持できるのか不安なところは確かにあります」と語ってくれた。
新型アクアのデザインは先代モデルのキープコンセプトで登場した。販売店での受注状況は芳しくなく、積極的に売り込むアピールポイントに乏しいとの声もある
ちなみにヤリスは正式発売後1カ月の時点で累計受注台数が月販目標台数の5倍強となる3万7000台となったことをリリース発信しているが、現場の空気を感じとる限りでは新型アクアが同じようなリリース発信できるかは微妙な状況にあるようだ。
前出セールスマンは、「新型アクアは、“これだ”という華がないので困っております。新型バッテリーの採用などで、燃費性能が向上しましたが、そこまで“燃費数値重視”的なお客様はごく少数となりますので、アピールは弱いですね」と話してくれた。
筆者がトヨタのウエブサイトを活用して、ヤリス ハイブリッドと支払代金の試算を比較すると、アクアが10万円ほど高いだけだった。ヤリスハイブリッドとの明確な差別化もできていないので、「お客様のお好みでどちらかを選んでもらうしかない」とも前出のセールスマンは語ってくれた。
また「正式発売直前に、どこからの指示なのかははっきりしないのですが、『アクアをもっと売れ』的なハッパを弊社の本社からかけられました。さらに、発表会ではセールスマンひとりにつき最低1台受注するようにとの指示が出ております」とも語ってくれた。
「なぜ、ハッパをかけてきたのか?」と聞くと、セールスマンは「日産ノート オーラ(以下オーラ)の存在があるようです」と言った。
オーラはわかりやすくいえば、5ナンバーサイズの日産ノートの3ナンバー版となり、ノートより上質であることが強調されている。新型アクアも、「安っぽい」とか「後席が狭い」などともいわれているヤリスより上質で居住性能が向上していることを強調しているので、オーラとキャラが被っているといっても言い過ぎではないだろう。
■想定外のライバル車は現場セールスマンも驚く好調ぶり!
オーラは新型アクアの正式発売より約1カ月前の6月中旬にデビューしているのだが、デビュー早々から販売現場では意外なほど好評を博していたのである。さすがにオーラだけで新型アクアの販売台数を抜くことはまずないと考えられるのだが、トヨタとしては意外な“目の上のコブ”の出現を警戒しているようなのである。
2021年6月15日に発表されたノート『オーラ』。価格は261万300円からとコンパクトカーでは高めだが、内装・外装ともにノートより上質感を演出する
オーラを含む現行日産ノートシリーズは、日産とルノーが共同開発した“CMF-B”プラットフォームを採用している。オーラは単に国内向け派生車種としてデビューしたのではなく、今後海外展開するノート(車名は変わるかも)としての3ナンバー仕様がオーラとなって国内展開しているのかもしれない。
このようなパターンは、スズキ スイフトがすでに海外仕様は3ナンバーサイズとなっているが、国内仕様のみ5ナンバーとなっているといった事例や、同じ3ナンバーサイズなのだが、現行カローラ(セダン&ツーリング)がグローバルサイズ比で全幅が狭く、全長の短い国内仕様をラインナップしていたりする。
話をオーラに戻すと、とにかく現場のセールスマンも驚くほどお客からの反響があるとのこと。「3ナンバーサイズのノートが出そうだ」といった情報がメディアに出るようになると、さっそく問い合わせがあったという。
「他メーカーのライバル車との比較もなく、指名買いされるお客様が目立ちます」とは、日産系ディーラーセールスマン。しかも、セットオプションで40万円ほどになるのだが、BOSEオーディオシステム(BOSEパーソナルプラスサウンドシステム)を選択するお客が大半となっているとのことでもある。
ノートオーラ Gレザーエディションの内装。オプションで、広がりのあるプレミアムな音響を実現するBOSEパーソナルプラスサウンドシステムが用意される
ノートオーラ Gレザーエディションの内装 インパネ周り。インパネ上面はツイード調のファブリックが巻かれ、パネルも木目調で高級感を演出している
ノートシリーズは先代モデルでも、“メダリスト”シリーズをラインナップし、日産の上級車などからの“ダウンサイザー”の受け皿としていた。日本国内での日産の新車販売について、“量販が見込めるのは、軽自動車、ノート、セレナぐらい”などと言われることがある。とにかく、よく売れるモデルが極めて限定的となっているのは間違いない。
販売終了車種も多く、ティアナやシルフィといった、かつての人気車種も、既納客を多く抱えたまま販売終了となっている。ノート自体も現行モデルではレンジエクステンダーEVとなる“e-POWER”のみを搭載し、上級志向となっているのもダウンサイザーの受け皿を意識したものといえる。
そこへさらに3ナンバー化したオーラの登場となっている。ティアナはもちろん、シルフィでさえ最終モデルは3ナンバーとなっているので、「最新の日産車に乗り換えたい」と思っていても、5ナンバーのノートへの乗り換えに抵抗を見せる人もいるだろう。オーラはそんな人たちに、ドンピシャで“はまった”ようなのである。
■「コンパクトハッチバック=女性=5ナンバーサイズ」は時代錯誤!?
コンパクトハッチバックだからといっても、世界的には日本でいうところの全幅が1700mmオーバーとなる、3ナンバーサイズなのが一般的。
オーラ登場以前には、スズキが3ナンバーサイズのコンパクトハッチバックである「バレーノ」を日本国内でも発売したが、短命のうちに国内販売を終了しているが、これは日産のようにティアナやシルフィなどの存在がなかっただけで、バレーノ自体が否定されたというわけではないと考える。
トヨタでは、3ナンバーサイズのハッチバックとしてカローラスポーツがあるのだが、オーラの全幅が1735mmで1750mm以内なのに対し、カローラスポーツは1750mmを大きく超えている。3ナンバーサイズが増えるなかで、この“1750mmの壁”は結構高く、モデルによっては売れゆきを大きく左右することにもなりかねないのである。
左がノート、右が3ナンバーサイズのノートオーラで全幅は1735mmとなっている。3ナンバー化することで操安性がアップし、さらにエレガントなデザインになっている
オーラは全幅が1750mm以内となっているところも注目を浴びたといえよう。つまり“一強”といわれるトヨタにはラインナップされていないサイズとキャラクターを持ったモデルなのである。
新型アクアのスタッフマニュアルを見る限りは、あえて5ナンバーサイズに収めることにより、取り回しなどの実用性の高さをアピールしていた。
カタログやテレビCMを見ると、女性ユーザーへのアピールをより意識しているように見えるが、“コンパクトハッチバック=女性=5ナンバーサイズ”というのは、いまの世の中では少々時代錯誤的なアピールに受け取られてしまうかもしれない。
海外ではキャリア志向の強い女性ほど、男性顔負けの大きなクルマや、アグレッシブなモデルを進んで愛車にすると聞いたことがある。“可愛いクルマ(スタイルだけでなく、軽自動車やコンパクトカーなどサイズ的なものも含めて)=女性向け”というのは、日本のみといっていいほどのロジックとなっている。
ヤリスとの明確な差別化を狙うならば、1750mm以内の“ちょっぴり3ナンバーサイズ”にしてもよかったのではないかと考える。
トヨタの販売現場で話を聞くと、ノート系がレンジエクステンダーEVを採用していることもあり、ノートはあまりライバルとして意識せずに、むしろホンダ フィットを意識している様子がうかがえる。これがまた、オーラを“目の上のコブ”にしてしまったようにも見える。
■スタートでつまずいた『新型アクア』は今後のトヨタの戦略次第
フィットはヤリスのライバル車としてメディアでも取り上げられることがあるが、ホンダの販売現場では、「キャラクターが異なる」としてライバルとしては強く意識していない。
2020年にフルモデルチェンジした4代目ホンダ『フィット』。先代のスポーティーなイメージから癒し系のやさしいデザインに変更された
「フィットは同クラスのなかでも、居住空間を広くとり、後席の快適性を重視しております。ヤリスはパーソナルユース色が強く、後席が狭いです」とはホンダのセールスマン。
さらに「フィットは4気筒ですが、ヤリスは3気筒です」と、セールストークでの“キラートーク”のように語りかけてきた。ハイブリッドシステムについては、「うちのはトヨタさんと、日産さんのe-POWERの“いいとこどり”ですよ」と説明してくれた。
新型アクアも3気筒エンジンベースなので、そこはヤリスと変わらないが、電子式シフトレバーなどを採用し質感アップを行い、後席居住性などもヤリス以上となっている。新型アクアはノートシリーズよりもフィット ハイブリッドをより意識しているのかもしれない。
ノートやフィットは、それぞれのメーカーにとって“オンリーワンコンパクトカー”となっている。つまり、ノートやフィットがカバーしなければならない客層はかなり広い。
一方でトヨタはダイハツからのOEMも加えれば、パッソ、ライズ、ヤリス、アクア、ルーミー、ヤリスクロス、カローラスポーツ、C-HRとワイドバリエーションとなっており、「ライズに納得できなければ、ヤリスクロスをすすめる」といった商売が可能となっている。
隙間のないラインナップでトヨタ内のみでの検討に持ち込み、トヨタ以外のメーカー車を検討させずに囲い込もうというの販売方法である。前述したライズとヤリスクロスでは、「ライズにハイブリッドがあればなあ」というお客を、ハイブリッドのあるヤリスクロスに誘導して買ってもらうといったことになる。
そのような緻密なラインナップのなかで、新型アクアを投入するならば、「1750mm以下の3ナンバーサイズとなるハイブリッド専用コンパクトハッチバック」としたほうがいいと思うし、やはりオーラのBOSEオーディオシステムのような“飛び道具”があったほうがよかっただろう。
ただ、そうなるとプリウスとキャラが近づいてしまうので、それを避けたかったのかもしれない。
スタート時点で、新型アクアは少々つまずいているようだが、もしそうならば、これをどうリカバリーさせていくのか、そこがトヨタの腕の見せどころであり、今後の見どころともいえるだろう。
新型アクアの売れゆきは今後のトヨタの販売戦略次第。どう立てなおすかが腕の見せどころ
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みんなのコメント
セールスマンも必死だろうな…
対して日産は…選べないからw