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ボクはなぜ、シンプルなワーゲンに乗るのか?(後編)

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ボクはなぜ、シンプルなワーゲンに乗るのか?(後編)

前編では、クルマに対する私の価値観を初代フィアット「パンダ」が変えてくれたのをお話ししました。その内容をひと言でいえば「高級に見えないコンパクトカーが好きになった」となります。

コンパクトカーは原則的に“廉価な自動車”。だったら、それを包み隠さず、背伸びしないデザインにしたほうが清々しく、むしろ高級に見える場合もある。パンダが教えてくれたのは、そんなことでした。

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【前編はこちら】

アップ!は、現行ミニと比べ、圧倒的にシンプルなデザインだ。でも、そんな価値観で作られたコンパクトカーが最近はめっきり減ってしまったようです。軽自動車でさえ、いかに高級そうに見えるかを競い合っている。私には、あれは逆効果にしか思えません。

では、私が6年前に購入したフォルクスワーゲン「アップ!」は、どうでしょうか?

アップ! の魅力とは?エクステリアは直線基調でシンプル。コストがかかっていそうなのはガラス製のテールゲートくらいですが、それを除けば装飾のための装飾は見当たらず、清潔感に溢れています。

駆動方式はFFのみ。運転しているのは筆者だ。インテリアも同様で、シートは布張り、ドアは部分的に鉄板むき出しで、ダッシュボード上にはボディ同色のプラスチック製飾り板が取り付けられています。どれも「高級ぶった」ところは皆無で、むしろ質素に見えます。

シンプルなつくりのインテリア。大谷氏のアップ! は、純正ナビ付き。フロントシートはヘッドレスト一体型。でも、私には「貧乏くさく」見えません。背伸びをせず、ありのままを見せているからです。これが、私がアップ!を愛して止まない第1の理由です。

第2の理由はハードウェアの完成度が極めて高いこと。少し柔らかめの乗り心地は、いま乗っても本当に快適で、プレミアム・ブランドのなかでもこのアップ! のレベルに到達していないモデルはたくさんあります。

【前編はこちら】

車両重量は920kgしかない。ハンドリングもきわめて優秀。特別クイックなわけではありませんが、ワインディングロードでは切れば切っただけ正確に曲がってくれますし、タイヤの踏面を常にしっかり抑えるジオメトリーに設定されているせいか、ハードコーナリングも驚くほど速い。

エンジン・パワーは大したことないので、登りは苦手ですが、下り坂だったらかなりのハイパフォーマンス・カーにもついて行けるくらいアップ! の足まわりはよくできています。

搭載するエンジンは1.0リッター直列3気筒エンジン。最高出力75ps、最大トルク95Nmを発揮する。そして、サスペンションからの入力をしっかり受け止めるのが剛性感の高い5ドア・ボディ。車重自体は920kgと、現代の小型車としては恐ろしく軽いのですが、とにかくボディが頑丈で、サスペンションからのどんな力もしっかりと受け止めてくれます。これを実現するため、アップ! は、高価な超高張力鋼板などを惜しげもなく投入。目に見えない部分にコストをかけて軽量・高剛性なボディを作り上げたのです。この辺も、私の好みだなあ。

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想像以上にコストをかけて開発されたアップ!。搭載するエンジンは、直列3気筒の1.0リッター自然吸気。最高出力は75ps、最大トルクは95Nmですが、ボディが軽いおかげでよく走る! 私は、日本導入前にドイツでアップ! に、試乗しましたが、大人3人とスーツケース3個を積みながらアウトバーンを160km/hで楽々と巡航し、大いに驚きました。しかも、車内は普通に会話できる程度に静か。こんなコンパクトカーは生まれて初めてでした。

メーターパネルはアナログタイプ。リアシートは、想像するより広い。1個のみではあるものの、カップホルダー付き。つまり、走りの性能はこのクラスの標準を大幅に上まわっているのに、それをひけらかすことなく、むしろ慎ましく見せているところに惹かれてしまったのです。

当初私は、シンプル極まりないエクステリアからアップ! は、発展途上国向けのモデルと思っていたのですが、フォルクスワーゲンのエンジニアは明確に否定しました。「先進国向けのクルマだからこそ、高価な高張力鋼板を惜しみなく使った」と、私に教えてくれました。

というわけで、アップ! の国内発売を心待ちにしていた私は、中古車が登場するとすぐにこれを購入。いまも飽きずに乗り続けているのです。

アップ! には、最高出力116psを発揮する1,0リッター直列3気筒ターボエンジンを搭載する「GTI」も設定される。気になる点もチラホラ……でも、問題ナシ!アップ! に、飽きない理由は、すでにほとんど述べたとおりです。シンプルで見栄を張ったデザインじゃないからいつまで経っても新鮮だし、走りの性能にはいまもまったく不満はありません。

よく、アップ! のシングル・クラッチ式ギアボックスを指して「加速中にあんなガクガクするクルマによく乗っていられますね」と、言われこともありますが、それは飛ばそうとするからガクガクするのであって、ゆっくり走ろうと思えば問題なく滑らかに加速してくれます。

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大谷氏のアップ! は、シングル・クラッチ式ギアボックスを搭載する。スムーズな運転をここがければ、発進時などのギクシャクはないという。ちょっと小難しいことを書くと、シングル・クラッチ式ギアボックスのシフトアップでガクガクするのはエンジンのトルク変動が原因なので、そもそもエンジンに大きなトルクを発生させなければトルク変動も大きくならず、結果としてスムーズに加速できます。

とはいえ、アップ! にも弱点はあります。私のアップ! は、初期型なので、助手席側のパワーウィンドウスイッチは助手席側のドアにしかついていません。でも、全幅が1650mmと大して広くないから助手席側ドアにも簡単に手が届くし、その後、改良されたアップ! は運転席側にも助手席パワーウィンドウのスイッチが設けられたので問題ありません。

大谷氏のアップ! は、初期モデルのため、運転席には助手席用パワーウインドウのスウィッチはない。もうひとつ不自由なのはリア・ウィンドウが上下にスライドして大きく開くタイプではなく、ウィンドウ後端が4~5cmだけ外側に向いて開く“換気用”に過ぎない点。もっとも、スライド式にしたらメカニズムの都合でリア・ウィンドウの面積はずいぶん狭くなっていたはずなので、開放感が強いいまのままのほうがむしろいいと思います。

【前編はこちら】

リアウインドウは開閉こそするものの、開口部は狭い。タイヤ交換で魅力復活!いっぽう、いいところはほかにもまだまだあります。

高速燃費は簡単に20km/Lを越えるので、燃料タンクは35リッターと小さいのに、自宅から360kmほど離れた鈴鹿サーキット(三重県)までギリギリだけれど無給油で往復できちゃう。しかも、私のアップ! は、クルーズ・コントロールがついているので高速クルージングもラクラク。鈴鹿サーキットまで1度も休まずに走り切っちゃうことも少なくありません。

アップ! は、衝突軽減ブレーキ・システムも搭載する。でも、そんな私のアップ! も、買って4年を過ぎたくらいから、足まわりにちょっとずつヤレを感じるようになってきました。路面から強いショックを受けたときに鋭い突きあげを感じたり、おなじく大入力が入ったときに足まわりのどこかがブルブルっと震えているようなダンピングの悪さを感じるようになったりしたのです。

ミシュランの「クロスクライメイト」に履き替えた大谷氏のアップ!。クロスクライメイト装着車であれば、冬季でもさまざまな道を走れるという。そんなとき、知人に勧められたのがミシュランの「クロスクライメイト」でした。このタイヤ、基本的には夏タイヤで、つまりドライの舗装路における性能を最優先して設計されています。ところが、幅広い温度域で作動するコンパウンドやユニークなトレッドパターンを採用した結果、十分なスノー性能も実現。「スリーピーク・マウンテン・スノーフレーク」といって、ヨーロッパで冬季用タイヤとしての走行性能基準を満たしているのをしめす特別なマークが与えられています。なんと、冬用タイヤ規制が実施された日本の高速道路でも、走行が認められているのです。

ひとつだけ注意が必要なのは、クロスクライメイトは雪道も走れるけれど凍った道は苦手という点。とはいえ、十分なドライ性能を確保しつつ、冬用タイヤ規制もクリアできるのですから、関東都市部に暮らすユーザーが、年間を通じ装着しておくといった使い方には好適でしょう。しかも、急に雪が降り始めたときでも、緊急避難的に家に帰るまでなら安心して走れそう。

【前編はこちら】

港区新橋にある「小林タイヤ商会」で交換した。交換作業に要する時間はわずか。タイヤサイズは185/55R15。さらに驚くべきは、ドライ路面での耐久性が恐ろしく優れている点で、タイヤの耐摩耗性を示す「ウェア・インデックス」が通常、200~300程度のところ、私が装着したクロスクライメイトは実に600! ボディが軽量で、高速道路中心の使い方をしている私は、購入時に装着してあったコンチネンタル「コンチプレミアムコンタクト2」(ウェア・インデックスは280)で、なんと7万km以上も走行していたので、「クロスクライメイトなら15万kmくらい走れちゃう?!」なんて想像をして、いまからドキドキしています(笑)。

そんなクロスクライメイトですが、交換してまず驚いたのは、乗り心地のよさ。先ほど購入から4~5年を経てアップ! の、乗り心地が悪化してきたと申しあげましたが、そういった難点がクロスクライメイトに換えて一気に解消されたばかりか、「ひょっとしたら新品時より、スムーズにショックを吸収してくれるかも?」と、思えるほどいまの乗り心地は快適です。しかも、本来であればサスペンション自体が上下するほど大きなストローク領域の乗り心地まで改善されて、なんだかキツネにつままれたような気分です。

Volkswagen up! フォルクスワーゲン アップ!いまのところクロスクライメイトの弱点は見つかっていません。タイヤが起こす騒音も低く、直進性も良好。コーナリング性能やブレーキ性能もなんの不満もありません。ちなみに価格は、185/55R15で1本約1万8700円。これは港区新橋にある「小林タイヤ商会」という信頼できるショップの価格で、古タイヤの処分代や組み替え工賃を含んだお値段。ちなみに、ミシュランの「エナジーセイバー+」は約1万7000円とほとんど変わらないので、雪道も走れるクロスクライメイトのほうがむしろお得!? という計算も成り立ちます。

Volkswagen up! フォルクスワーゲン アップ!いずれにしても、クロスクライメイトを履いて私の“アップ!愛”は深まるいっぽう。一時期、心をよぎった「そろそろ買い換えようか?」という思いもすっかりと消え、しばらくはこのまま乗り続ける気配が濃厚になってきました。というわけで、今後しばらくはアップ! とともに暮らしていきそうです。

とはいえ、また何か変化があったときにはご報告しますので、そのときにはどうぞよろしくお願いします!

文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.)

【プロフィール】

大谷達也(おおたにたつや)

電機メーカーの研究所で7年間エンジニアとして勤務したあと、1990年、29歳で二玄社『CAR GRAPHIC』編集部に転職。以来、20年間にわたって同編集部に在籍する。同誌副編集長を務めたあと、2010年にフリーランスに転身。現在、活動の中心はハイパフォーマンスカーのインプレッション記事執筆であるが、電気系エンジニアとしての経歴を生かし、環境技術やハイパフォーマンスカーなどに用いられる新技術にも通暁している。

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