ともにより安全なクルマ造りを目指し、ドライバーの安全を最優先するスバルとボルボ。クルマの重要な基本性能は「安全」にあると考える2社の最新ステーションワゴン、レヴォーグとV60の魅力を探ってみた。(Motor Magazine2021年4月号より)
スポーツ、プレミアム、実用と共通項を持っているこの2台
スバルとボルボ、筆者は以前からこのふたつのブランドに共通する「何か」を感じていた。どちらも規模や販売台数では主要メーカーの中でも小さく少ないものの、高い「ブランド力」、古くから独自のブレない「個性」を持つこと、人間中心の思想で「安全」に対するこだわりが非常に強いこと、そして「ステーションワゴン」へのこだわりが強いこと、などである。
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ステーションワゴンと言えば、年代にレガシィと940がステーションワゴンブームの2強と称されたこともあるが、今回はその血統を受け継ぐレヴォーグとV60を比較しながら、各々の魅力をひも解いていきたいと思う。
まずコンセプトだ。レヴォーグは北米の要望でサイズ拡大されたレガシィに変わる日本市場最適化モデルとして登場。現行の2代目は初代のコンセプトを継承しながらもスバルの次世代を担う存在として最新技術を惜しみなく投入。また「スバル車は乗ればわかる」というこれまでの価値観から脱却するために、デザインや質感にも今まで以上のこだわりを見せる。
一方、ボルボはXC90以降、実用車以上プレミアム未満という中途半端な立ち位置から、明確にプレミアムを謳うようになった。2代目の現行V60はスポーティな走りが魅力の初代V60と四角いボルボを継承していたV70のコンセプトを融合させたモデルだ。つまり、スポーティで実用的・・・とステーションワゴンの王道を行く。
この2台、元々の入口は異なるが、結果として「スポーツ」「プレミアム」「実用的」という共通項を持っていることがわかるだろう。そのエクステリアだが、どちらも最新のデザイン言語を用いながら、従来のイメージを変えるスタイルを構築。ともに全高の低さを活かした、スポーティなワイド&ローのフォルムを採用する。
V60は横置きFFながらもまるでFRのようなプロポーションバランスを用いることで先代とは別物の印象だが、レヴォーグは水平対向+シンメトリカルAWDの構造上の必然からタイヤとAピラーの位置関係は従来モデルとほぼ同じで、スバルらしい安心感はあるものの、新鮮さと言う意味ではV60ほどの変化感は少なめだ。
インテリアはレヴォーグ、V60ともに先代から大きく刷新され、水平基調でコックピット感覚が強いインパネまわりに仕上げられている。フル液晶メーターやスイッチが少なめで中央の縦型ディスプレイでの集中コントロールなどデジタル化も著しいものの、まだ進化の途中という感じだ。この辺りは長期的な戦略もあるはずである。
ラゲッジルームの容量はワゴンの老舗だけあり、どちらも十分以上のスペースを備えている。ただ、明るめの内装色やガラスルーフが用意されるV60の方が、車室内の視覚的な開放感は豊かに感じた。
レヴォーグ、V60ともに新型ユニットを搭載する
パワートレーンはどちらも次世代を支える新型ユニットを搭載。レヴォーグは後に高出力エンジン追加という噂もあるが、現時点では1.8Lターボ(177ps/300Nm)のみの設定でリニアトロニック(CVT)と組み合わせる。
V60はグレードが複数用意されるが、2020年の改良で全車電動化ユニットに刷新された。今回の試乗車「B5」は2Lターボ(250ps/350Nm)+48Vマイルドハイブリッド(モーター仕様:13.6ps/40Nm)で、8速ATとの組み合わせだ。
レヴォーグは発進時にスロットル早開きの傾向がありわずかにギクシャクするものの、フラットな実用域トルクながらレッドゾーンまで軽快かつスッキリ回る特性で、スペック以上にスポーティに感じるユニットに仕上がっている。CVTも全開走行しなければネガは顔を出さず、走行状況によってはATよりも滑らかな所もある。
V60は48Vハイブリッドが効いており、過給するまでのモタツキが極めて少なく発進からのフィーリングはレヴォーグよりも滑らか。回転フィールやサウンド(音質に加えて静粛性も)もプレミアムブランドらしい質感を備えるが、基本的には実用に徹した印象だ。
フットワークはレヴォーグがインナーフレーム構造採用の「SGP」、V60が「SPA」とそれぞれ新世代プラットフォームの採用で基本性能が大きく底上げされている。それぞれ穏やかなのに芯のある操舵感、操作に対する応答性の高さ、クルマの動きの連続性の高さ、無駄なロールを抑えながらしなやかさを保つサスペンションなどが効果的に融合することで、ファンなハンドリングと快適性を高いレベルで両立させている。
ホットなレヴォーグに対しクールな印象のV60
ともに素性の良さを活かしたスポーティな味付けだが、面白いのはハンドルを握った時の気持ちが、レヴォーグは「ホット」、V60は「クール」と真逆であることである。これは各メーカーの走りに対する考え方が表れていると考えられる。どちらもスポーティプレミアムを目指したモデルだが、レヴォーグは「スポーツ」、V60は「プレミアム」の比率が高いのだろう。
安全に関しては、どちらも世界トップレベルの性能を持っており甲乙つけるのは難しいが、運転支援に関しては現時点だとレヴォーグの「アイサイトX」が機能・制御を含めてV60の「パイロットアシスト」を上回る。ただ、どちらもプロドライバーが操っているかのような自然な支援で、「クルマに委ねていいよね」と思わせてくれる制御だ。
さて、レヴォーグとV60を多角度から比べてみたが、最後は価格だ。レヴォーグは310万2000円~409万2000円、V60は499万円~799万円と、大きな差がある。もちろんV60の各部の仕立ての良さなどを見ていくと、この価格差は納得できる。ただ、逆を言うとこの価格でインポートワゴンに対峙して比較できるポテンシャルを備えるレヴォーグは日本専用モデルではあるものの、その実力は世界基準と言えるのだ。(文:山本シンヤ/写真:永元秀和)
スバル レヴォーグ
注目POINT
2014年の初代レヴォーグ登場から6年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たした2代目レヴォーグ。エンジンは新開発の水平対向1.8L直噴ターボ「DIT」のみとなった。SGP (スバルグローバルプラットフォーム)の採用とフルインナーフレーム構造による高剛性化を実現し、走りの質を一新した。また、2020-2021日本カーオブザイヤーを受賞した。
グレードラインアップ
GT(1.8L水平対向4ターボ+CVT/4WD): 310万2000円
GT EX(1.8L水平対向4ターボ+CVT/4WD): 348万7000円
GT-H(1.8L水平対向4ターボ+CVT/4WD): 332万2000円
GT-H EX(1.8L水平対向4ターボ+CVT/4WD):370万7000円
STI Sport(1.8L水平対向4ターボ+CVT/4WD): 370万7000円
STI Sport EX(1.8L水平対向4ターボ+CVT/4WD): 409万2000円
STIスポーツ EX 主要諸元
●全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm*
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1795cc
●最高出力:130kW(177ps)/5200-5800rpm
●最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・63L
●WLTCモード燃費:13.6km/L
●タイヤサイズ:225/45R18
●車両価格(税込):370万7000円
*ルーフアンテナを含む値。ルーフ高では1480mm。
ボルボ V60
注目POINT
2018年に2代目として登場したミドルサイズワゴンのV60。電動化を進めるボルボのパワートレーンは2L直4ターボ+48Vハイブリッドを搭載するFFモデルのB4、B5に加え、リチャージ(プラグインハイブリッド)の3種類が用意される。今回試乗したのはマイルドハイブリッドで最高出力250psのB5インスクリプションである。
グレードラインアップ
B4 モメンタム(2L直4ターボ+8速AT/FF):499万円
B5 インスクリプション(2L直4ターボ+8速AT/FF): 624万円
B5 Rデザイン(2L直4ターボ+8速AT/FF) : 624万円
リチャージプラグインハイブリッド T6 AWD インスクリプション
エクスプレッション(2L直4ターボ・スーパーチャージャー+8速AT/4WD): 684万円
リチャージプラグインハイブリッド T6 AWD インスクリプション(2L直4ターボ・スーパーチャージャー+8速AT/4WD): 799万円
B5インスクリプション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4760×1850×1435mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1760kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:184kW(250ps)/5400-5700rpm
●最大トルク:350Nm/1800-4800rpm
●モーター最高出力:136ps)
●モーター最大トルク:40Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:12.8km/L
●タイヤサイズ:235/45R18
●車両価格(税込):624万円
[ アルバム : スバル レヴォーグとボルボ V60 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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