トヨタは2022年8月22日、ベルギー・イープルで開催された世界ラリー選手権(WRC)第9戦で、トヨタが試験開発中の水素エンジン車「GRヤリス」を豊田章男社長がステアリングを握りデモ走行を実施したと発表した。もちろん、トヨタ製の水素エンジン車がヨーロッパを走行したのはこれが初で、電動化に集中しているヨーロッパに対して水素燃焼エンジンをアピールする狙いがある。
GRヤリスのドライバーは、豊田章男社長で、コドライバーは4度のWRC王者に輝き、かつてトヨタでも世界タイトルを獲得した経験を持つフィンランド出身の往年の名ドライバーのユハ・カンクネンが担当している。
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GRヤリスが走行したのは、8月19日から21日まで開催されたWRC戦「イープル・ラリー・ベルギー」2日目(20日)のスペシャルステージ(SS)11だ。全長15kmのSS11は道幅が非常に狭い農道で、周囲は畑や民家などに囲まれたステージだ。GRヤリスは現地時間の20日午前、SS11の競技開始前にステージの安全を確認するため走行する「セーフティーカー」の前に走行するテストカーとして走行し、コースサイドGAZOOブースでは応援団が日の丸を振っていた。
最もヨーロッパでは、BMWが2000年代前半に水素燃焼エンジンを研究・開発し、2006年にはV12気筒エンジンを搭載した7シリーズをベースにしたハイドロジェン7を100台製作し、ヨーロッパのみならず世界各地で走行を行なった実績がある。ハイドロジェン7はガソリンと水素を搭載するバイフュエル車で、最終的に水素は液体水素を搭載している。
BMWは1980年代から水素への取り組み「BMWクリーン・エナジー・プロジェクト」により水素燃焼エンジンを研究していた。最終的に液体水素に着眼したのは、体積エネルギー密度の点で、液体水素が気体水素のエネルギー密度をはるかに越えているからだ。同じスペースを占め、同じ容量を持つ燃料タンクを使用した場合、極低温の液体水素には、700バールで圧縮・貯蔵された気体水素より755以上多くのエネルギー量が含まれ、したがって液体水素で駆動する車両の方が明らかに航続距離は長くなる。
なおBMWが水素燃焼エンジンに着目したのは、1998年にBMWとその他の企業によって開始され、ドイツ連邦政府が支援しているトランスポート・エネルギー・ストラテジー(TES:輸送エネルギー戦略)イニシアチブに端を発し、10種類以上におよ代替燃料と、70種類以上の製法に関する科学的な研究を開始し、国家的なサステナビリティ戦略の一環として水素の実用化が確認されたからである。そして、インフラとして水素パイプラインの敷設なども構想された。
しかし、その後ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」が稼動を開始すると水素インフラ構想は立ち消えになってしまった。
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