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イタリア車との「甘い生活」 フィアット850 シリーズ(2) 積極的に回したいティーポ100

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イタリア車との「甘い生活」 フィアット850 シリーズ(2) 積極的に回したいティーポ100

ベルリーナと別物のボディとインテリア

フィアット850 スポーツクーペのオーナーは、キャス・ランゲ氏。2年前にイタリアから英国へ運んできたという。1968年式で、ヘッドライトはシリーズ2の特長となる4灯。ディーラーオプションだった、カンパニョーロ社製のアルミホイールを履く。

【画像】リアエンジンなイタリアの大衆車 フィアット850 500とムルティプラ 最新600eも 全125枚

スタイリングを担当したのは、ファアットのチェントロスティーレ部門。ベルリーナより、全長は33mm長い。1966年のフィアット・ディーノ・クーペや、1967年のフィアット124クーペと、面影が重ならないでもない。

ボディの印象は850 ベルリーナと大きく異なり、技術を共有するとは感じにくい。フロントフェンダーのラインは強調され、リアピラーは優雅にカーブを描く。ストンと切り落とされたカムテールに、4枚のテールライトが並ぶ。

インテリアも別物、大きなスピードとタコのメーターが、ワイドなパネルに並ぶ。ダッシュボードは、ステアリングホイールのリムと同様に、ウッド調のトリムで飾られる。

ビニール張りで、多少のサポート性があるフロントシートと同様に、リアシート側もベルリーナより豪華。空間は狭いけれど。新車時の英国価格は870ポンドで、最も安価な2+2 GTとして販売された。

車内はタイトで、左肩がドアに触れる。ペダルは、かなり右側にオフセットしている。

エンジンを始動させると、僅かに大きいハミングが後方から聞こえてくる。クラッチペダルのミートポイントは手前側。発進させれば、レッドラインへ吸い込まれるようにティーポ100ユニットが回る。積極的に運転したくなる。

ジウジアーロが手掛けた美しいスパイダー

路面がうねるコーナーでは、ベルリーナのようにフロントが上下へ揺れる。しかし、追加されたパワーで、シャシーの能力を発揮させやすい。幅が155、偏平率80のタイヤは、優しい乗り心地だが、高い速度域での操縦性も悪くない。

ステアリングホイールは軽く回せ、手のひらには鮮明な感触が伝わってくる。しかし、直進性はイマイチ。常に細かな修正が必要で、横風の影響も受けやすいようだ。

速度が高すぎると、アンダーステア。リアタイヤはしっかり路面を掴み、アクセルペダルを戻すと、フロントノーズは内側へ吸い込まれていく。アスファルトが乾いていれば、テールスライドすることはない。運転体験は素晴らしく、4台のベストだろう。

一方で見た目のベストは、850 スパイダー。ベルトーネ社に在籍していたジョルジェット・ジウジアーロ氏がスタイリングを手掛けている。今日の1台はクーペと同じくレッドで、1972年式。オーナーは、ロブ・アンザローネ氏だ。

カンバストップはスチール製フラップの下へコンパクトに畳まれ、リアデッキはフラット。英国では正規販売されておらず、6年前にアメリカ・オハイオ州から渡ってきた北米仕様とのこと。フロントフェンダーに、サイドマーカーが追加されている。

フェアリングのないヘッドライトが、シリーズ2の証。「イタリアのスピリットが大好きなんですよ。運転する度に、笑顔にしてくれます」。とアンザローネは説明するが、筆者も同感だ。

クーペと変わらないスパイダーの動的特性

ダッシュボードのデザインは、850 クーペやベルリーナと異なる。スピードとタコの他、3枚の補助メーターも、フェイクウッド張りのメーターパネルに並ぶ。センターコンソールは、アメリカのディーラーで追加されている。

スパイダーのシャシーは驚くほど強固で、よほど鋭い凹凸を通過して、ステアリングコラムが僅かに揺れるだけ。動的特性は、850 クーペと殆ど変わらない。補強材が追加され、車重は約20kg増えており、僅かに活発さが劣る程度だろう。

サイドウインドウを全開にし、肘を載せれば、気分はイタリア北部のワインディング。ヴェリア・ボルレッティ社製タコメーターの針が、キビキビと角度を変える。グレートブリテン島はすっかり肌寒いが、陽光が心地良い。

850シリーズで、遠く離れたイタリア半島を目指すなら、ファミリアーレがベスト。車中泊すれば、ハイシーズンでも法外なホテル料金にうんざりすることはない。

バーガンディの1台は、スティーブン・グローブ氏がオーナー。1982年式で、900E アミーゴを名乗る。1970年にシリーズは大幅に見直され、903ccエンジンを得ている。

1976年にもアップデートを受け、ハイルーフと大面積のフロントガラス、新しいフロントグリル、バンパーを獲得。英国では、これをベースに900T アミーゴというキャンピングカーが提供された。

1980年のフェイスリフトで、900Eへ進化。ダッシュボードには、フィアット127譲りのメーターがやや強引にマウントされている。

イタリアのお国柄を印象付けた850シリーズ

筆者の両親は、1978年に新車で900T アミーゴを購入。子供の頃の思い出は、小さなキャンピングカーとともにある。サイドヒンジのルーフを開き、車内に吊り下げられたハンモックで夏休みの夜を明かしたものだ。

グローブのクルマは、折りたたみ式のテーブルを片付け、前後のシートを倒せば大きなベッドを作れる。ルーフを持ち上げて、フレームを展開することで、2階部分にも大人が2名眠れる。

後方のエンジンの上には、コンロとシンク。戸棚も各所にある。走行中に荷物が散らばらないよう、しっかり整える必要はあるが、タイヤの付いた小さなコテージだ。

多数の装備が追加され、車重と防音性が増しているため、洗練性は4台の中でトップ。エンジン音が、ファンのように聞こえてくる。ステアリングホイールは、バスのようにほぼ水平。着座位置はフロントアクスルの真上で、前方の視界は清々しいほど広い。

乗り心地は、少し弾む感じ。加速が活発とは呼べないが、のんびりと田舎道を巡るのには魅力的だろう。クラシックカーとしての評価も高く、近年は単なる古いキャンピングカー以上の評価額で取引されている。

イタリアというお国柄を、強く印象付けた850シリーズ。この特徴は、国外でもクーペやスパイダーが人気を博した理由でもある。英国色の濃いミニやMGも悪くないが、このフィアットならドルチェ・ヴィータ的なライフスタイルまで味わえそうだ。

協力:ストラカー社

フィアット850シリーズ 4台のスペック

フィアット850 ベルリーナ・ノルマーレ(1964~1971年/欧州仕様)

英国価格:581ポンド(新車時)/5500ポンド(約107万円/現在)以下
生産数:約230万台(850シリーズ合計)
全長:3575mm
全幅:1425mm
全高:1385mm
最高速度:120km/h
0-97km/h加速:26.8秒
燃費:12.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:670kg
パワートレイン:直列4気筒843cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:34ps/5000rpm
最大トルク:5.1kg-m/2800rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

フィアット850 スポーツクーペ(1968~1972年/欧州仕様)

英国価格:870ポンド(新車時)/1万5000ポンド(約293万円/現在)以下
生産数:約38万台(クーペ合計)
全長:3632mm
全幅:1501mm
全高:1308mm
最高速度:143km/h
0-97km/h加速:17.0秒
燃費:11.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:732kg
パワートレイン:直列4気筒903cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:52ps/6200rpm
最大トルク:6.6kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

フィアット850 スパイダー(1968~1972年/欧州仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約293万円/現在)以下
生産数:約14万台(スパイダー合計)
全長:3824mm
全幅:1498mm
全高:1220mm
最高速度:143km/h
0-97km/h加速:18.0秒
燃費:13.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:745kg
パワートレイン:直列4気筒903cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:52ps/6200rpm
最大トルク:6.6kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

フィアット900E アミーゴ・キャンパー(1976~1986年/欧州仕様)

英国価格:3600ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約234万円/現在)以下
生産数:−台
全長:3750mm
全幅:1520mm
全高:1740mm
最高速度:−km/h
0-97km/h加速:−秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:900kg以上
パワートレイン:直列4気筒903cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:35ps/4500rpm
最大トルク:6.2kg-m/3300rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

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