コロナ禍による移動制限も落ち着き、全国的に旅行が再開されている今日この頃。連日の酷暑で涼しい地域へのご旅行を計画されている方も多いではないだろうか。人気の旅行先のひとつが北海道。旅行に来た開放感も手伝い、どこまでも続く見通しのいい道路でつい速度を出し過ぎるなど、北海道内は速度超過による重大事故が後を絶たない。それだけに北海道警は速度違反の取り締まりには力を入れている。そして、北海道警のパトカーはひと味違う取り締まり方法を行っているのだ。その詳細に迫る。
文・写真/有村拓真
気づいた時にはもう遅い! 北海道に潜むスカイラインレーザーパトカーの取締りがえげつない
北海道警にのみ活躍するV37スカイラインのグレードはGT。304馬力のV6ツインターボエンジン搭載の3000ccだ。ルーフ上、赤色灯の中央に見える四角い箱がレーザー式の速度計測装置だ。これは「前方照射型」。猛暑の日々なので、少々涼し気な写真で癒してください
対向車線の路肩に隠れたパトカーがレーザー照射で速度計測!!
レーザー&レーダーパトカーは白黒パトカーのルーフに装着される赤色灯の中央部に四角い箱状の物体が装備されているのが特徴だ。これが速度計測をするためのレーザー光、あるいはレーダー波を照射、受射する「速度計測機」。レーダー波やレーザー光は前面照射型と後部照射型があり、パトカーの前方あるいは後方に向けて速度計測をする。
赤色灯の中央部に装着される四角い箱がレーザー式の速度計測機。前方に向けて計測するタイプと、後方に向けて計測するタイプがある
その取り締まりだが、レーザー&レーダーパトカーを路肩に駐車し、道路に向かってレーザー光やレーダー波を照射し法定速度を超える車両がヒットしたら即座に追尾を開始し検挙を行うという方法だ。つまり、一般的なパトカーによる「追尾式速度取り締まり」とは異なり、パトカーに追尾された時点ではすでに速度計測は終了しているということ。向かってくるクルマの速度を計測することが多いが、遠ざかってく車両の速度を計測することも可能である。
新千歳空港近くのレンタカー団地でも積極的な取締り活動が行われている。安全運転で道内ドライブを楽しみたい。このクラウンのレーザーパトは「後方照射型」で、違反処理を行っていたところだ
多くの場合、対向車線の路肩で、建物や木々などの陰になるような場所にレーザー&レーダーパトを止めて速度違反車を警戒する。パトカーは前向きの場合もあれば後ろ向きの場合もある。違反車の速度を計測したなら、赤色灯を点灯させ、一気にスタートダッシュをキメて違反車の背後に迫る。
追尾された時点で速度計測完了
以前北海道内でレーザーパトの速度取締りを受けたベストカー編集部スタッフは、「ルームミラーに追い上げてくるパトカーが見えたのでハッとして速度を確認したら15km/hほどオーバーしていた。いけないと思いアクセルを緩めたところ、パトカーは自車の前方に回り込みながら停車を指示。追尾計測はできないようなタイミングだったので、指導で済むだろうと思っていたのだが、しっかりと15km/hオーバーで青キップを切られた」と言う。対向車線の路肩に止まっていたレーザーパトが速度計測により違反を確認後、Uターンして追いかけてきたのであった。
この方式の取り締まりは時間帯を問わず速度超過による事故が多発する幹線道路で実施されることが多い。前述のように対向車線などを問わず取締りが行えるので優れたシロモノである。違反測定の際の証拠能力向上の観点から、ドラレコ等とは別にレーザーパトカーには機器の内部にカメラ装置が装備されている。
所轄警察署で活躍するV36スカイラインレーダーパトカー。こちらは平成20年(2008年)登録の車両だ。こちらも元は交通機動隊で活躍し、2010年APEC横浜首脳会合では横浜に派遣された
もちろんレーザーやレーダーなどを使うことなく、一般的なパトカーと同様に各種取締りを行うこともある。追尾式による速度計測も可能だ。
レーザーパトカーはそれまでのレーダータイプとは異なり、レーザーにも対応した探知機でないと反応しないうえ、そもそも反応しないパターンもあるという、一部のドライバーから恐れているという声も散見されるが、そもそも制限速度を守って安全運転を心がけるほかない。ちなみに、通常のパトカーの赤色灯部分に備わっているサイレンスピーカーはレーザー&レーダーパトカーの場合、覆面パトカーのようにフロントグリル内部などに収められている。また、通常のパトカーであれば標準の無線アンテナは屋根に備わるが、レーザー&レーダータイプは機器に干渉するためトランクリッドにユーロアンテナを装備する傾向が多い。
雪の北海道ではレーザー&レーダーパトが必須なのだ
なぜ北海道警にレーザー&レーダーパトカーが多いのかというと、北海道という冬季になると雪深い土地柄が大きな理由である。
交通機動隊本隊には複数のV37スカイラインレーザーパトカーが活躍している。2021年に開催された2020年東京五輪マラソンではIOCバッハ会長の車列警護も担当したので、V37スカイラインのパトカーの存在に驚いた人もいたことだろう
オービス等の話に限って言えば、都内などで一般的なのが幹線道路や高速道路などに備え付けられたもの(固定式)や、近年主流となっている可搬式オービスなどでの取り締まりを多く目にする機会が多い。これらの装置は速度違反の車両を自動的に撮影するという利点があるものの、北海道は冬季に入ると積雪によりこのような取締り機器による取り締まりが困難となるためこのような機器の活用は限られてしまう。そこでより効率的に取り締まる方法として活躍しているのが赤色灯のど真ん中に速度計測装置が鎮座する「レーザー&レーダーパトカー」軍団なのである。
速度計測用のレーダーを載せたパトカー自体は少なくとも1980年初頭より全国的に活動が見られた。メーカーによってはレーダーの照射位置を選択できる機器も存在した。
レーダー式はその名の通り電波を照射してそのドップラー効果によって速度計測を行うが、電波法の改正に伴い、従来のレーダー波は使用できなくなってしまった。既存のレーダーパトを継続して使用するためには機器を載せ替える選択肢も浮上したが、大半のレーダーパトカーは導入から年月が経過しており引退間際という車両も存在したため、北海道警察では車両ごと更新するという選択に至ったのである。
このため、新基準(スプリアス規格)に適用させるため、レーダー波を照射しないレーザー方式を採用。レーザー式速度計測装置を搭載したパトカーが2018年頃から登場したのである。北海道警では現在、「レーザー式」が主流となっているが、新基準に適応した「レーダー式」も少数ながら新規に導入されたケースもある。
北の大地の交通安全を守るレーザー&レーダーパトカーは304馬力のV37スカイラインツインターボ!!
現在、北海道での速度取り締まりの第一線で活躍しているパトカーはV37スカイラインが主流。2021年より道費による配備が始まり、まずは9台が導入された。今年度もさらに追加配備されている。主にレーザータイプが主流だが、レーダータイプ搭載車両も配備されており、機械部分で見た目の判別が可能だ。V37スカイラインは捜査用車両としては全国に配備されているが、白黒パトカーとして導入されているのは今のところ北海道だけである。導入車両はすべて交通取り締まり用なので304馬力を発揮するV6,3リッターツインターボのGTグレードだ。この動力性能を速度取り締まりに活かしているのだ。
所轄警察署で活躍するV37スカイラインのレーダーパトカー。レーザータイプと異なり機器の箱の部分は中身が見えないのが特徴的
そしてV37スカイラインに次いで多く活動しているのが210系クラウンアスリートパトカーだ。国費配備車と道費導入車が活躍しており、一部の車両はアルミホイールにスパッタリングが施された上級グレードルックのモデルも存在する。性能などは国費モノと変わらないという。居住性についてはやはりV37スカイラインよりもクラウンの方が広くて使い勝手もいいとの話が聞かれた。
V37スカイラインととともに第一線で活躍するクラウンアスリートレーザーパトカー。こちらは「後部照射」タイプだ。標準の無線アンテナはユーロアンテナを備える
そして北海道にもセドリックパトカーが活動しているが、完全引退まで残りわずかだという。他にもV36スカイラインやJ31ティアナなど、ご当地パトカーが数多く存在する北海道なのである。
所轄警察署で活躍しているセドリックのレーダーパトカー。平成11年(1999年)登録で24年の歴史を持つご長寿パトだ。引退の時が迫る。元は交通機動隊で活躍していたがまだまだ現役
速度超過に伴う悲惨な事故が数多く発生する北海道。レーザー&レーダーパトカー軍団に限らず覆面パトカーなどが日々交通違反取り締まりに従事している。新千歳空港近くのレンタカー団地でも積極的に取締りを行っているので、搭乗便の時間に気を取られるあまり速度超過で旅の締めくくりが台無しなんてことにならないように法定速度と交通ルールをしっかり守って安全運転でドライブを楽しんでいただきたい。
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みんなのコメント
酷いね、それは。