1953年のロンドン・ラリーでクラス優勝
今回ご紹介する1台は、1952年7月に完成したシャシー番号166のフレイザー・ナッシュ・ミッレミリア。グレートブリテン島の中西部、マンチェスターのとある企業へ納車され、YMC 81のナンバーを取得している。最後にラインオフした車両でもある。
【画像】ラリーとレースの二刀流 フレイザー・ナッシュ・ミッレミリア 同時期の英製スポーツ ほか 全129枚
不思議なことに、モータースポーツへ一切関わることなく、1953年にはフレイザー・ナッシュへ返却されている。しかし次のオーナー、ジャック・ブロードヘッド氏は、友人のピーター・リース氏とともにラリーへ出場。本来の目的通りに楽しんだ。
その頃、ボディはブリストル・マルーンと呼ばれるパープルに塗られ、インテリアはダークブラウンのレザーで仕立てられていた。リアアクスルとスチールホイールは、オースチンのものが組まれていた。
フロントガラスは、現在とは異なり直立していた。だが、サーキット・イベントでは背の低いエアロスクリーンへ交換されたようだ。
ブロードヘッドとリースのペアで戦った、1953年のロンドン・ラリーではクラス優勝。1954年にオールトンパーク・サーキットで開かれたエンパイア・トロフィーにも挑むが、決勝でリタイアしている。
7月のシルバーストン・サーキットで開かれた英国グランプリに向けて、ミッレミリアはワイヤーホイールへ交換され、エンジンにもチューニングが施された。しかし、惜しくも完走は叶わなかった。
11台のミッレミリアで最も美しい
その後、モータースポーツから引退。複数のオーナーを経て、1980年代にブランド・マニアのフランク・シトナー氏が購入した。
彼はボディをダークグリーンに塗装し、インテリアをブラックのレザーで仕立て直した。ワイヤーホイールも、どこかの時点でダークグリーンに塗られている。
当時のパンフレットには、すべてのボディはフレイザー・ナッシュで設計され、自社工場で手仕事によって仕上げられます、と記されていた。確かに同一のミッレミリアは2台とない。合計11台が作られたが、YMC 81のナンバーの1台が、最も美しいと思う。
初期のボディは、フロント周りのスタイリングが整っていなかった。しかし生産末期までに、フレイザー・ナッシュの職人は芸術的な水準にまで高めていた。
これは2台が作られたワイドボディでもあり、全体のプロポーションが一層好ましい。車内空間にも余裕がある。
シャシー番号166では異なるものの、荷室容量を増やすため、スペアタイヤがフロントフェンダー内に固定されていたのも特徴だった。1954年のブリストル404でも、同様の手法が取られている。
希少なモデルのドライバーズシートへ腰を下ろす。見た目の印象通り、颯爽と運転できるだろうか、という疑問が湧く。その当時、実際にステアリングホイールを握れた人は僅かだった。現在では、更に機会は限られている。
かなりモダンなドライビング体験
コクピットは自然に身体へ馴染む。ダッシュボードは薄く、膝が触れることはない。身長が高めの筆者でも、楽に足を伸ばせる。モータースポーツを前提としているだけに、ペダルの位置は近いものの、決して狭いとは感じない。
正面には細いリムのステアリングホイールが伸びている。その奥には、速度計と回転計が綺麗に並ぶ。左右対称の眺めが心地良い。エンジンを始動する前から、満ち足りた気持ちになる。
筆者がブリストルの2.0L直列6気筒エンジンに接した機会は限られるが、かくして、想像以上に素晴らしいものだった。3基並んだソレックスキャブレターは、冷間時でも盛大に空気を吸い込み、4000rpm以上では惚れ惚れするようなサウンドが充満する。
背中がシートに押し付けられるような勢いはないものの、トルクが太く、滑らかにパワーが放たれる。操縦系には明確で正確な感触が伴い、ドライビング体験はかなりモダン。1930年代にルーツを持つモデルだと感じさせない。
サーキットを走らせれば、若々しい印象は更に強まる。同年代のジャガーより、1950年代後半のロータスに近いようにすら思える。
車重は約840kgと軽く、シャシーのバランスも素晴らしい。ステアリングホイールはダイレクトで繊細。ブレーキも、不自然な偏りがなく頼もしい。公道の速度域では、限界領域まで迫ることが難しい。
ステアリングを握れば価値へ深く納得
操縦性は、まさにお手本通り。オリジナルの状態が保たれ、ミッレミリアの乗り心地は比較的ソフト。サーキットやラリーステージへ向かう早朝の郊外の道では、本番と同じくらい、爽快な時間を謳歌できるに違いない。
もし何か不満を探すなら、トランスミッションが挙げられるかもしれない。それでも、同年代のライバルモデルより優れてはいる。
筆者の場合、どうしても複数のクルマを手元に置いておきたくなる。お手頃な中古車を選びがち。しかし、フレイザー・ナッシュ・ミッレミリアは、新たな発見を与えてくれた。これまでのクルマ選びが、間違っていたのかもしれないと疑うほど。
より多くの金額が1台に必要だとしても、1度ステアリングホイールを握れば、その価値へ深く納得できる。アルディントン兄弟とも、今ならきっと話が合うに違いない。
協力:ペンディン社
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