状況を判断する能力と引き返す勇気が重要
かつては「温暖化」といわれていましたが、いまや「気候変動」という言葉が使われています。この夏に日本を襲った大型台風から、そうした変動を肌で感じたという人も多いのではないでしょうか。
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台風一過、荒れ果てた道は通常のクルマでは走行不能と思えることもありますし、そもそも300mm以上の冠水路は通常のクルマで走るには不可能といえます。「こんな状況こそ、オフロードに強いクロカン4WDがあれば!」という声も聞かれましたが、本当に悪条件に強いのでしょうか。
クロカン4WDの渡河性能は圧倒的
まず、今年の台風で多くの被害をもたらした冠水について。道路が冠水してしまうのは排水能力を超えた雨量によるケースと河川の氾濫とありますが、いずれにしても不慣れなドライバーがクルマで走行するのは避けたい状況。それは水によって路面が隠れているので、状況が視認できないからです。
まして、夜間の冠水路を走ろうとするのは危険極まりない行為。そうした前提で、クロカン4WDは、通常のクルマよりも深い冠水路を走るポテンシャルを持っていることは間違いありません。
その目安となるのが「渡河性能」というスペックです。これは。どの程度の水深まで走行可能なよう設計されているかを示すもので、トヨタ・ランドクルーザーや三菱パジェロ、メルセデスGクラス、ランドローバーなどの本格派クロカンは、おおむね700mmの水深でも走行可能。ジープ・ラングラーの渡河性能は、762mmとなっているほどです。
ただし、この数値は8km/h以下での徐行を前提としたもの。16km/h以上で走ろうとすると482mmの渡河性能になると発表されていますから注意が必要です。一般的に速度が上がると、跳ね上げる水が高くなってしまい、その水をエンジンが吸い込んでしまうことがあります。
冠水路は勢いよく走り抜けたいと思うかもしれませんが、ゆっくりと走るのが基本なのです。ちなみに、通常のセダンなどでは300mm程度の水深が限界といわれていますから、冠水路におけるクロカン4WDの優位性は明確なのです。
デフロック機能で瓦礫も超えられる
さらに災害で懸念されるのが、台風や地震による倒木や崩れた建物による道路の寸断。こうした状況では最低地上高の高いSUVでも走行できないことがあります。なぜならタイヤがスリップしてしまい前に進めなくなるからです。
しかし、「デフロック」といって駆動系を直結できるクロカン4WDであれば悪条件でも走破可能だったりします。多くのクロカン4WDではローレンジを持っていますから、さらに駆動力を強めることも可能。オフロードコースで岩を乗り越えるようなパフォーマンスを見ると、クロカン4WDならどんな悪路でも走り抜けることができそうと期待してしまいます。実際、同条件で比較すれば乗用車ベースのSUVよりも格段に高い走破性を有しているのです。
ドラテクに自信がなければ無茶は禁物
では、気候変動が叫ばれる時代にはクロカン4WDに乗っていれば安心なのかといえば、そうではありません。冠水路を渡るにしても、瓦礫を乗り越えるような走りにせよ、一定以上のドライビングテクニックが必要。もちろん、いまどきのクロカン4WDは電子制御などドライビングアシスト機能も充実していますが、それでもドライバーによって走破性は変わってきます。
たとえば、岩を乗り越えるにしてもどのようなライン取りでいけばいいのか判断するのは人間の役割。こうした判断は一朝一夕に身につくものではなく、安全が確保されたオフロードコースなどでトレーニングを積んで身につけていくものです。災害時に、いきなり無茶をするのはかえって危険といえるでしょう。
瓦礫が突然崩れることもありますし、地震などでは道路ごと崩れる可能性もあり。また、洪水などでは水の勢いによってクルマごと流されてしまうことも考えられます。
そうでなくともクロカン4WDでスタックしてしまう状況というのは、そこから徒歩で脱出するのも難しいことが多く、まさに命がけ。クロカン4WDの高い走破性を安全に活かすには「状況を判断する能力」と「引き返す勇気」も非常に重要なのです。
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