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5代目フォルクスワーゲン ポロは、兄貴=ゴルフとの競合が心配になるほど完成度が高かった【10年ひと昔の新車】

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5代目フォルクスワーゲン ポロは、兄貴=ゴルフとの競合が心配になるほど完成度が高かった【10年ひと昔の新車】

2009年、3月のジュネーブ国際モーターショーでデビューを飾った5世代目ポロの販売が、欧州で早くも6月末から開始されている。日本上陸は翌2010年となったが、それに先立ちイタリアのサルディニア島で行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年9月号より)

ニューポロは、100%ワルター・デ・シルヴァ作品
数年前から2009年の経済状況はこうなると予想していたわけではないだろうが、いまこの時期に新たな価値を持つコンパクトカーであるニューポロを投入してくるとは、さすがフォルクスワーゲンと言わざるを得ない。時代の大きな流れを読む確かな眼があれば、たとえ経済状況のうねりがあったとしても、競争力がある商品を生み続けることができるのだろう。

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いきなり結論を出してしまったが、5代目となるこの新しいポロの出来映えは素晴らしく、ヒット作となることは間違いないと思う。2日間にわたりイタリアのサルディニア島で試乗する機会を得たが、そう確信するに至った理由を説明していきたいと思う。

まずスタイリングだが、これまでと180度方向転換を図り、かなりスポーティになった。従来モデル、とくにかわいらしさを狙ったと思われる丸目の前期型は日本では若い層に受けた。しかし、欧州では50歳前後の中年女性には受け入れられたが、若い層にはあまり評判がよくなかったそうだ。

ポロというクルマのポジショニングを明確にして量販を図るためには、やはり若い層にアピールしなくてはならない。そのためには、まずスタイリングをスポーティにする必要があったのだ。そうした命題に解決の道筋をつけたのが、アルファロメオ、アウディのチーフデザイナーを務めた後、現在、フォルクスワーゲングループのデザイン部門を統括するワルター・デ・シルヴァだ。

これまでのワッペングリルを特徴としたフォルクスワーゲン車のスタイリングは現在、デ・シルヴァの下で順次イメージチェンジが図られているが、関係者の話によると「ゴルフVIが80%のデ・シルヴァ作品だとすると、ニューポロは100%デ・シルヴァ作品」だそうだ。参考までに「シロッコはゴルフをやった後に、顔だけデ・シルヴァが手を入れた」とのこと。

さて、デ・シルヴァの考え方はこうだ。「サンプリシタ(英語のシンプリティにあたるイタリア語)こそカーデザイナーの信条であるべきだ」という。また「時間が経つと流行遅れになってしまうような小細工は排除する。長い目で見れば、簡潔さこそが豊かさである」とも主張する。

具体的には、全長(+54mm)と全幅(+32mm)を従来モデルより拡大する一方、全高は13mm下げている。これでダイナミックでスポーティなフォルムとして、さらにシロッコ以来、新たなフォルクスワーゲンのアイデンティティとなっているフラットなグリルと切れ上がったヘッドライトからなる「顔」が与えられている。

それにしてもゴルフとよく似ていると思われるだろう。それは事実として受け止めるしかないが、ではこの先、フォルクスワーゲン車は、すべてこの方向へ行くのだろうか。答えは「イエス」だ。それはアウディを見ればよくわかる。デ・シルヴァが統括して完成させた現在のアウディラインナップと同レベルで、フォルクスワーゲン車も似た顔つきになることは間違いない。この経済危機の中でも好調な販売を維持しているアウディの手法を取り入れない理由を探す方が難しいだろう。

まとまりのいい1.2TSI、1.4Lも期待以上の出来だ
さて、ニューポロにはガソリン4種、ディーゼル3の計7種のエンジンがラインナップされる。中でも注目されるのが、新開発となる1.2TSIエンジンだ。最高出力は105psで最大トルクは175Nmを発揮する。ゴルフに搭載される1.4TSI(122ps/200Nm仕様)より、排気量、パワーなどすべてが13%前後低く抑えられたポロのためのパワーユニットだ。そして、これには標準の6速MTの他に、オプションで乾式7速DSGが用意される。

他にガソリンエンジンは3種用意されるが、1.2Lの2種(60psと70ps)は日本へは導入されず、新たな電子制御機構と燃料噴射装置を備えた1.4Lエンジンが、1.2TSIともに日本仕様に搭載される。日本導入は1.4Lエンジン+7速DSGが先行して年内、1.2TSI+7速DSGは欧州でも販売は年内メドとなっており、日本へ来るのは来年の半ばくらいになるようだ。

初めに試乗したのは1.2TSIの6速MTだ。日本へは導入されない仕様だが、エンジンの性格を見るにはいいと思って走り出した。ところがまず感じたのはボディ剛性の高さだった。この点だけでも従来モデルより確実にワンランク上のクルマになったと言える。この剛性アップはボディ単体を7.5%、クルマ全体を2.5%軽量化する中で達成されたものであるというからその効果は絶大だ。

タイヤは215/40R17のスポーツタイプを装着していたこともあり、乗り心地はしなやかで、しかもシャキッとしていた。ハンドルを切ったとおり、ラインをきれいにトレースしていくというイメージだ。しかも、静粛性も高い。

従来のポロはゴルフとは明らかに次元が違う世界にあったが、今度のポロはゴルフと対等、場合によっては優る部分もあると感じられた。要はボディが大きいか、小さいかという差異こそあるが、内容的には両車互角ということだ。小さいことが有利に働く局面ではポロ、大きいことが有利に働く局面ではゴルフに軍配が上がる。

さて、肝心のエンジンだが、これは見事なダウンサイジングだという印象だ。1.4TSI(122ps)の性能をあらゆる面で少しずつ削ぎ落としているのだ。そのためトルクの出方や回転が上がるフィーリング、過給器の働き方などから受けるエンジンの性格がそっくりなのだ。これで燃費は3気筒の60psユニットと同レベルというのだから文句の付けようがない。期待どおりの出来映えと言えるだろう。

次に試乗したのは1.4Lエンジンの5速MT仕様だ。このエンジンは従来モデルから搭載しているものをリファインしたタイプ。最大トルクは132Nmと変わらないが、最高出力は5psアップして85psとなっている。そして、これが予想外によかった。軽やかによく吹け上がるし、エグゾーストノートもスポーティだ。タイヤは195/55RR15を装着していたが、このサイズとのマッチングもいいのだろう。クルマ全体から感じ取れるコンパクトカーらしい爽やかな軽快感という点では、1.2TSIを上回るものがあった。エンジン単体としても数字ほどには1.2TSIとの差は感じられなかった。 

DSGの懐の深さを実感させる1.2Lエンジンとの好相性
そして、最後に試乗したのが「本日のメインイベント」と言える1.2TSI+7速DSGという組み合わせだ。さて、この仕様をドライブして改めてわかったのは「DSGの威力」だった。

これまでもDSGのクルマには数多く乗っていたが、同じクルマの同じエンジンで、DSGとMTを同時に乗り比べる機会はなかった。今回、それができて改めてわかったのは、DSGはあらゆる状況でエンジンの実力を100%近く引き出すことに長けているということだ。MTを駆使してDSG並みにエンジンを使いこなそうとしたら、それはもう大変なことになると言うか、そもそも不可能ということだ。

ゆっくりとクルマを流しているとき、DSGはそもそも燃費志向なので、ギアはどんどんシフトアップし60km/hで7速に入る。そこからちょっと気合いを入れて、アクセルペダルを踏み込むとあっという間にギアは4速まで落ちる。そして、そのまま加速を続ければ5速にシフトアップ、さらにコーナーの手前でブレーキングをして、立ち上がるときには3速に入っている。

そして一瞬、4速に入ったかと思ったら、ヘアピンカーブが迫り減速、2速でクリアして気が付けばあっという間に5速に入っているといった感じだ。しかも、これがシームレスに行われるわけだから凄い。

同じコースをDSGとMTで走ったが、MTではエンジンの良さを十分に引き出せていないことがよくわかった。この1.2TSIと7速DSGの組み合わせは秀逸だった。

ただ今回、試乗車はなかったが、日本へまず導入される予定の1.4Lと7速DSGの組み合わせも、相当に期待できるのではないかと思う。1.2TSIの導入を来年中頃まで待つのもいいが、価格は当然のこと1.4Lの方が低く設定されるだろうから、こちらをターゲットにするのも一手だろう。

質感の高いインターフェイス。機能性も高められている
さて、走りにばかり行数を割いてしまったが、その他のポイントも抑えておこう。まずインテリアだが、全体の質感は非常に高い。3本スポークのステアリングホイールやインパネまわりのデザインは、スタイリング同様、ゴルフのイメージだ。

また、キャビンの絶対的なスペースは、さすがにボディが日本の5ナンバー枠に収まっているためそれなりだが、後席に大人ふたりでも十分に長距離ドライブが可能だ。また、トランクスペースは後席使用時で280L、後席を倒せば952Lを確保しているのも有り難い。

そしてモデル体系だが、今回からゴルフと同様に3段階の設定になった。ベーシック仕様が「トレンドライン」、標準的な仕様が「コンフォートライン」、上級仕様が「ハイライン」だ。ABSは世界市場で全車標準装備。そして、欧州ほとんどの地域でESPとヘッドソラックス(頭部および胸郭部保護)を含むエアバッグシステムが全車標準装備となる。

また、装備類で注目されるのは「RNS310」というナビゲーションシステムだ。これはすでに日本へも導入されている「RNS510」の廉価版と言えるタイプなのだが、ポロの車格を考えるとこれは有り難い。ただし、日本仕様はどうなるかは未定だ。

さて、ゴルフは世界のベンチマークであり、Cセグメントは「ゴルフクラス」とも呼ばれる。そしてこの新しいポロの登場で、Bセグメントが「ポロクラス」と呼ばれることになるかも知れない。それだけいい出来映えだ。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之)

フォルクスワーゲン ポロ 1.4 主要諸元
●全長×全幅×全高:3970×1682×1462mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:1104kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1390cc
●最高出力:63kW(85ps)/5000rpm
●最大トルク:132Nm/3800rpm
●トランスミッション:7速DSG
●駆動方式:FF
●タイヤサイズ:185/60R15
●最高速:177km/h
※EU準拠

[ アルバム : 5代目フォルクスワーゲン ポロ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

3件
  • 車らしいのはゴルフクラスから~と思ってたが、パーソナルユースにはポロサイズがぴったりです。
  • 6Rは左流れ症状が有名で自分も乗ったことあるけど実際そうで、常に修正舵を当てて走る感じだった。
    右ハンドル仕様の所為だったのかな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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