もくじ
どんなクルマ?
ー 911GT2 RS どのくらい速い?
ー ターボとGT3 区別する理由は
ー 足まわりの強化詳細 価格は?
どんな感じ?
ー ハードで、激しく、とてつもなく速い
ー 乗り心地、操舵フィールを観察
「買い」か?
ー 完ぺきではないが「代わり」はない
スペック
ー ポルシェ911GT2 RSのスペック
どんなクルマ?
911GT2 RS どのくらい速い?
電気モーターを積んだハイパーカーの存在をしばし忘れるべきかも知れない。
ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテが、そして今、このポルシェ911GT2 RSがより速いクルマとして登場したからだ。
少なくともドイツのアウトバーンのある区間においてこれは事実であり、この事実こそ重要だと考えるひとびとがいる。
ウラカンもわれわれがヌニートンで行ったサーキット・テストでは、大差で最速の1台であることを証明した。しかし、こういった事実はある日突然変わる。
そして、いまのところ速く走るために必要なものは、バッテリーとモーターではなく、エンジンと軽量化なのだ。
実際、新しい911GT2 RSはどのくらい速いのだろうか?
公式に言えば、ニュルブルクリンクのラップタイムは6分47秒3だが、われわれ自身はこの数字にあまり興味がない。
レーシング・ドライバーのリチャード・アトウッドいわく「〇ソみたいに速い」という発言のほうが、よほど興味深い。
とんでもないクルマについて多くの経験を持つこの男は、1970年のル・マンをポルシェ917で勝利しているが、もしかしたらこのクルマも忘れられない1台に数えるのかも知れない。
一方で、GT2 RSはそれほどとんでもない訳ではないという意見もある。
ターボとGT3 区別する理由は
例えば911の中には既にターボモデルがある。同じようなパワーを4輪で受け止め、AMGのように、リラックスしつつも、猛烈に速く、且つ運転がより容易だ。
そしてGTモデルもある。GT3とやがて登場するであろうGT3 RSだ。特定のモデルに対抗したわけではないが、フェラーリのスペチアーレやストラダーレの精神に非常に近い存在だ。それらも切れ味鋭く、間違いなく運転しがいがあり、サーキットに主眼をおいた素晴らしいクルマである。
しかし、GT2 RSはこういったモデルの要素を単に取り込むだけではない。より大きなパワーを持つ、よりサーキット主体のモデルとして、それらを明らかに超えようとしているのだ。
このふたつの世界で最高になるのではなく、このふたつ世界を破壊してしまう存在。まさに自動車界のデス・スターである。
まずはそのパワーだ。
GT2 RSは3.8ℓターボ過給フラット6により7000rpmで700psを発揮するパワーを、唯一選択できる7段PDKを介してリアの2輪だけに伝える。
新たに採用した大型のターボチャージャー2基と、チタン製エグゾースト、さらにはフロントのトランクに再充填可能な小型タンクを備えたスプレー式水冷インタークーラーにより、その最高出力はターボSを120ps上回る。
ポルシェによれば76.5kg-mものトルクを受け止めるため、PDK自体もカスタマイズされているとのことだ。リッターあたり185psというのは、これまでで最大の過給を行う最高出力のエンジンだと思うかも知れないが、最大トルクを2250rpmから4000rpmの間で発生させており、これも驚くべき数値である。
シャシーについても多くの手が加えられている。
足まわりの強化詳細 価格は?
これまで同様にマクファーソン・ストラットを採用したフロントには、補助スプリングを加えることで、フロント・アクスルにより軽量なメイン・スプリングを使用することができた。また、リアには先代GT3 RSと同じような設計のマルチリンクが今回も採用されている。
これだけではない。
車高、キャンバー、トー角とロールバーのすべてがサーキット用のセッティングとなっている。すべての接続部にはローズ・ジョイントが採用され、各ジョイントの精度とフィードバック性には優れるが、乗り心地は推して知るべしだ。
また素晴らしいデザインのホイールがホイールアーチぎりぎりに収まっており、このホイールには非常にサイズの大きいタイヤが装着される。
265/30 ZR20というサイズも、リアに収まるとすれば、このクルマのパフォーマンスを考えれば納得だろうが、これはフロントタイヤなのだ。
リアタイヤは325/30 ZR21となる。そしてカーボン・セラミック製のブレーキ・ディスクは標準だ。
ボディにも手が加えられている。マグネシウム製ルーフと、ボンネット、ウイング、リアエンドとインテリアの一部、そしてボディ・パーツにはカーボン・ファイバーが採用されている。
オプションのヴァイザッハ・パッケージでは、さらに30kgもの軽量化が施される。ルーフはカーボン・ファイバー製に変更され、フロントとリアのアンチ・ロールバーとカップリング・ロッドにより5.3kgの重量が削減される。
さらにはマグネシウム製ホイールの採用によって標準仕様からは11.5kg軽量となる。ヴァイザッハ・キットの装着にはGT2 RSのカタログ価格である£207,506(3093万円)に、さらに£21,042(314万円)の投資が必要になるが、もしこのキットを装着すれば、リセールの際の付加価値は投資額を上回るだろう。
走りだそう。
どんな感じ?
ハードで、激しく、とてつもなく速い
これらすべての変更によって、ご想像のとおり、はっきり言ってGT2 RSは公道用モデルとしてもっとも常軌を逸した1台となっている。
ハードで、激しく、とてつもなく速い。
ポルシェはこのクルマの扱いにくさから、GT2 RSというあからさまな名前を付けたが、ポルシェのファクトリー・ドライバーであるニック・タンディは、今年のグッドウッドでこのクルマをお披露目したとき、2速でもタイヤがグリップを失いとても驚いたと語っている。こんなことは325サイズのタイヤを履いたリア・エンジンのクルマでは本来考えられないことだ。
そして、初対面ですぐにGT2 RSの社内がふつうのモデルよりも騒々しいことに気付く。軽量化を優先したエグゾーストの採用や、カーボン・ファイバー製バケットシートとマグネシウム製ロールケージが収まるキャビンから様々なものを取り去った結果、このクルマの重量は1470kgに留まる。これはNAのレース・エンジンを積むGT3よりもわずか40kg重いだけだ。
もし同乗者を乗せるなら、話す必要が無いほどの仲か、話したくないひとにすべきだろう。113km/hで走っている時でさえ、会話するには騒音に負けないよう叫ぶ必要があるのだ。
そして、その狂暴さについては、もう行きつくところまで行ったとしか言いようがない。しかし、ポルシェとフェラーリは最近あるコツをつかんだようだ。もっとも過激なロードカーだが乗り心地は許容可能なレベルに収まっている。
もうすこし詳しく見ていこう。
乗り心地、操舵フィールを観察
GT2 RSが458スペチアーレや現行911 GT3ほどの柔軟性を持ち合わせているとは思わないが、装着しているタイヤのサイズや形状、その硬さを考えれば、想像よりも優れているとは言えるだろう。(われわれは相対的な話をしているのであり、メルセデスのSクラスと比べているのではない。しかし、一方で昔ながらの英国のいなか道でもGT2 RSが不調に陥るようなことはない。)
ボール・ジョイントのステアリングはダイレクト過ぎたり、情報量が多すぎるわけでもない。ほんの少し感触が軽く感じるが、フィードバックに極めて優れ、その反応も驚くほど速い。
ほんの数年前にはこんなターボエンジンなど想像すらできなかった。強烈な一撃を求めれば、ほんの一瞬の遅れのあと、それはやってくる。ただそれだけだ。どんな回転数からでも7200rpmのリミットまで一気である。
すべてを知りたいとお望みであればご紹介しよう。
公式データによれば100km/h加速は2.8秒であり、最高速は340km/hに達する。わたしにはすべての瞬間、ハイパーカーとして非常に反応がよく、切迫しているようにさえ感じられる。
われわれのテストルートはシルバーストンからミルブルックを往復するものだったが、最後にはナショナル・サーキットも数ラップしてみた。
911GT2 RSのいなか道でのコントロール性には驚かされた。ミルブルックの高速サーキットで見せたどう猛さには決して飽きる事がない。そして、広大でフラットなサーキットでの安定性、敏捷性と親しみやすさは圧倒的だ。
「買い」か?
完ぺきではないが「代わり」はない
GT2 RSの常軌を逸した能力の多くはコントロールされており、必要な時だけ開放できる。そして、このクルマのすべてを解き放ったとしても、GT2 RSは気まぐれでも、凶悪でも、危険でもない。
この力強くすさまじいパフォーマンスをもつクルマに乗っていてさえ、最近のポルシェが1台のクルマを磨き上げることに注力している事がわかる。
ならばこれが究極の1台だろうか?
それはわからない。
サーキットでは、わずかながらもより優れた反応は、軽く活発なキャラクターのGT3から得られるだろう。GT2 RSには我慢が強いられるような場所では、さらなる柔軟性とクルマとの一体感はGT3、さらにはGTSからでも得られる。
GT2 RSを完ぺきなスポーツカーと呼ぶことなどできない。
ただしこれは途方もないシチュエーションのためのクルマだと言い切れる。そしてそんな状況では、このクルマに代わるものなどない。
ポルシェ911GT2 RSのスペック
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