BYD シール 「恐るべし加速と充電性能」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

まるも 亜希子
まるも 亜希子(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

4

デザイン
5
走行性能
4
乗り心地
3
積載性
5
燃費
5
価格
5

恐るべし加速と充電性能

2024.7.27

年式
2024年6月〜モデル
総評
BYDらしい海洋生物をモチーフとしたデザインは個性的で上質感があります。とくにブラックはプレミアム感満点。ブレードバッテリーや8in1電動パワートレーンといったBYD独自の技術をさらに進化させ、正面衝突や側面衝突にも強くなっています。室内の広さは十分ですが、後席の頭上はややタイト。走りはRWDならスポーティで軽快、AWDなら少ししっとりとした落ち着きのある乗り味が手に入ります。
満足している点
BYDがシールを「eスポーツセダン」と謳うのも納得するほどの、強烈な加速。とくにAWDモデルは、アクセル全開にするとワープするかのように怒涛の速さでかっ飛んで行きます。スペック的には、RWDモデルはシステム最高出力が312ps、AWDモデルは529psを発生。0-100km/h加速はRWDモデルが5.9秒、AWDモデルは3.8秒で、これはランボルギーニなどのスーパーカー並み。もちろん普段は穏やかに走ることも得意ですが、いつでもこれくらいの加速ができる、という余裕がいいですね。
不満な点
ルーフ全体を覆うかのように大きい、1.9㎡の面積を持つ二重構造のパノラミックガラスルーフは、後席からの視界を開放的にしてくれるのですが、6月中旬の晴れた日に試乗したところ、ガラスを内側から触ってみると熱い……。シェードは手動のものも電動のものも備わっておらず、ラゲッジに折りたたみ式のシェードが入っていました。あまりに暑い場合はこれを広げて付ける、ということですが手間がかかるし上質感も台無しになりそうです。これはなんとかしてほしいところ。ただ、紫外線カット率は99%、可視光線透過率は4.2%、日射透過率は16%となっているので、夏以外の季節なら快適かなと思います。
デザイン

5

アザラシを意味するシールのデザインは、ドルフィンに続く海洋美学がテーマ。とはいえ、コンパクトカーのドルフィンでは胸ビレや波などをモチーフにした、海の中に迷い込んだかのような世界観があふれていましたが、シールはそこまでメルヘンではなく大人っぽい仕上がり。フロントバンパーのサイド部分に波をイメージしたC字型ラインが入っていたり、リヤの左右貫通式テールライトが空と海の広さを表現していたり、というくらいで、個性的でありながら上質なデザインだと感じます。ボディカラーによって見え方が大きく変わるので、色選びがキモとなりそう。
走行性能

4

これまでのBYDモデル同様、ガソリン車から乗り換えても自然な感覚でいられるフィーリングは好感触。走りの味付けはRWDとAWDでけっこうキャラクターが分かれていると感じます。RWDは軽快感が強めで、ワインディングもひらりひらりとかわしていく楽しさがあります。ただ市街地では少し足まわりがバタバタとする場面も。AWDはメカニカルな油圧可変ダンパーが標準装備で、やや落ち着きのある走りですがとにかくパワフルで、高速道路でも余裕たっぷりの走りです。
乗り心地

3

前席に座っている分には、どちらも上質感があると思いました。でも後席によく座る使い方をするなら、AWDがおすすめ。可変ダンピングアブソーバーやiTACが入るのがAWDのみということもあって、RWDよりも落ち着いた乗り心地が手に入ります。ただ、ひとりでキビキビとスポーティな走りを楽しみたいというのであれば、RWDモデルでも十分だと思います。
積載性

5

ラゲッジ容量は400Lで、深さがあって開口部も広めなスペース。後席が6:4分割で倒せて、少し奥の方に傾斜がつくものの、大きな荷物も積みやすいと思います。フロアがカーペットのようなファブリックになるので、傷がつきやすそうに感じました。さらに、フロントにも50Lの収納スペースがあります。掃除道具や折りたたみ傘など、こまごましたものはこちらにまとめておくと便利そうです。
燃費

5

電費をよくするためのバッテリーの管理など、さすがの技術を搭載していると感じます。RWDもAWDもバッテリー容量は82.56kWhと大容量で、充電性能も優れています。とくに急速充電では最大105kWを受け入れ可能。車名は伏せていましたが、充電器最大出力が250kWのセダン(といったらアレしかない!?)と急速充電比較をしたところ、ライバルは最初こそ超高速充電をしていたものの途中から出力が低くなり、結局30分間で充電できた量は変わらなかった、という結果だそうです。
価格

5

よくぞこの円安など不利な状況でこの価格を実現してきたものだと感心する、RWD528万円、AWD605万円。CEV補助金が適用されれば実質RWDが400万円台、AWDが500万円台ということで、ディーラーも急激に増えているBYDだけに、対面接客に安心感を覚える人にとってはトライしてみたい候補に入りやすい価格帯だと思います。
まるも 亜希子
まるも 亜希子
自動車ジャーナリスト
映画声優、自動車雑誌編集者を経て独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員。YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」、「おっさん on boad」にも出演中。
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