アストンDBSザガートとペアで約8億円
text:Mike Duff(マイク・ダフ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
特注対応やレストアに対応するアストン マーティン・ワークス(AMW)による、ニュー・オールド・コンティニュエイション・モデル(新復刻生産モデル)として初めて生み出されたのは、DB4 GTだった。
そのAMWが2作目として選んだのは、より特別なDB4の進化モデル。ほぼ完璧なDB4 GTザガートのレプリカとなる。オリジナルは、イタリアのコーチビルダー(ボディ製造の職人)が手作りで生み出した、軽量なボディをまとったクルマだ。
今回復刻される台数はわずかに19台。ニューポート・パグネルに位置するアストン マーティン・ワークスの工場で生産される。間もなく登場するDBSスーパーレジェーラ・ザガートとペアで販売され、価格はセットで600万ポンド(7億9800万円)!
仮に復刻版DB4 GTザガートがその価格の半分だったとしても、世界で最も高いクルマであることには違いない。しかし、実はオリジナルモデルよりは遥かに安い。2018年、英国のオークションに出品されたDB4ザガート2 VEVは、1010万ポンド(13億4330万円)!で落札されているのだ。どんなひとが入札したのだろうか。
AMWを率いるポール・スパイアーズによれば、DB4 GTザガート・コンティニュエイションの購入者は、レプリカの参加も許されるヒストリックカー・レースに参戦する可能性が高いという。オリジナルの良さを悪化させない程度に、オーナー好みで塗装したり装飾トリムを変更できるそうだ。
アストン マーティンはオリジナルモデルのオーナーへ、4.7Lの6気筒エンジン単体の提供もするという。熱く走りすぎて、当時のエンジンを壊すことがないように。
忠実に再現しつつ、装備はモダナイズ
このDB4 GTザガートは、多くの国で公道の走行は許されない。英国でも同様で、今回試乗させてもらったのは、シルバーストーン・サーキットとなった。ここの一部、ストウ・サーキットはアストン マーティンが独占的に借用している。当然のことながら、DB4 GTザガートの試乗はとても特別な体験だった。
運転席からの眺めは、基本的には先に復刻されたDB4 GTと同じもの。黒いダッシュボードにはクロームメッキで縁取られた計器類が並び、美しいウッド製のステアリングホイールが伸びている。装飾はシンプルで控えめ。
復刻版となるDB4 GTザガートには、レース参戦を前提に、現代的な安全装置も付いている。ロールケージにバケットシート、ハーネスと消化器、バッテリーの保護装置。燃料タンクもレース仕様だ。だが残りの部分は基本的にオリジナルを忠実に再現している。
走りも充分に速い。アストン マーティンによれば、最高出力は控えめに見て385psとのこと。ピットからスタートダッシュを決めると、ホイールスピンを発生させるのに不足ないパワーが放たれる。直6エンジンは、ゆっくり走ろうとすると振動を発しギクシャクする。だがスピードを上げればすぐに滑らかになる。
復刻版DB4 GTと同じく、このDB4 GTザガートにも4速ドグミッションが付いており、確実に操作する必要がある。シフトダウンをスムーズに決めるには、エンジンの回転数も合わせる必要がある。
これだけの中毒性のある運転する喜び
1961年当時の技術力の高さを示すように、ブレーキは4輪ともにディスク。パッドがしっかりディスクに噛み付くが、ダンロップ製レーシングタイヤのグリップ力が限定的なこともすぐにわかる。前輪をブレーキングでロックさせることは簡単だ。
強くブレーキングするたびにDB4 GTザガートはぐっと沈み込み、数ラップするとわずかに振動も生じるようになった。車内は加熱したブレーキパッドが発する刺激臭で満たされた。
控えめな限界点といえるが、コーナリングではそれが長所に代わる。クルマの性能を存分に引き出しながら運転に没入できる快感は、現代の同等の性能を持つクルマでは得られないものだ。
ステアリングにはパワーアシストが備わらないぶん、レシオもスロー。だが手応えは鮮明でタイヤからのフィードバックも濃い。フロントタイヤのグリップがギリギリだということを、しっかり教えてくれる。
アンダーステア状態にもなりやすいが、ステアリングを少し戻してアクセルペダルを踏み込めば、姿勢のバランスは改善。そのままリアタイヤをスライドさせ、オーバーステアへと切り替えせる。
すべてのコーナーが冒険的な体験だった。狙ったラインにDB4 GTザガートの乗せるには、手と足とを複雑に操らなければならない。だが細かな操作にもしっかり反応してくれる優れたレスポンスを備え、運転する喜びには中毒性があるといっても良いだろう。
あるべき姿で走らせる強い心も必要
この印象は、暖かい日の乾燥した路面状態でのもの。濡れて滑りやすい路面や、他のヒストリックカーと並走するような場面では、よりシリアスで恐ろしくもある体験になるだろう。
このアストン マーティンDB4 GTザガートのオーナーになる人は、クルマを本来あるべき姿で走らせることを恐れない、相当に強い心も必要だといえる。サーキットでの勇姿を、ぜひとも見てみたいものだ。
ジャガーに引き続き、復刻モデルの生産を手掛け始めたアストン マーティン。このトレンドは、他のメーカーにも波及する可能性がある。AMWの場合は、ジェームズ・ボンドが駆ったDB5の復刻も25台予定している。特殊装備も備えたカタチで。そのほかにも復刻モデルの計画はあるようだ。
だが、このDB4 GTザガート・コンティニュエイションほどに特別なクルマはないと思う。また、セット販売されるDBSスーパーレジェーラ・ザガートも興味の湧くクルマではある。
アストン マーティンDB4 GTザガート・コンティニュエイションのスペック
価格:600万ポンド(7億9800万円・アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ・ザガートとのセット価格)
全長:4267mm
全幅:1557mm
全高:1270mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1230kg
パワートレイン:直列6気筒4670cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:385ps/6000rpm
最大トルク:49.6kg-m/5000rpm
ギアボックス:4速マニュアル
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