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MINIジョン・クーパー・ワークス クラブマン、新型は“オトナ”になった【海外試乗】

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MINIジョン・クーパー・ワークス クラブマン、新型は“オトナ”になった【海外試乗】

MINI JOHN COOPER WORKS CLUBMAN

MINIジョン・クーパー・ワークス クラブマン

MINIジョン・クーパー・ワークス クラブマン、新型は“オトナ”になった【海外試乗】

足まわりのセッティングは先代から大幅に改善

MINIといえばゴーカート・フィーリングである。まるでレーシングカートのようにダイレクトでクイックなハンドリングのことをMINIはゴーカート・フィーリングと称しているようだが、その表現の仕方は2013年にデビューした3代目で大きく変化したと私は捉えていた。

初代と2代目は、ラバーコーン・サスペンションを搭載していたクラシック・ミニよろしくサスペンション・ストロークが短く規制されており、なるほどレーシングカートを彷彿とする俊敏な動きを見せたが、それゆえに足まわりは常にヒョコヒョコとして落ち着きがなかった。

先代モデルで感じたネガは払拭されたのか?

それが3代目ではサスペンション・ストロークを大きくとった現代的なシャシーに生まれ変わったものの、このままだとステアリングを切った途端にキュッと向きを変えるあの感覚を再現できない。そこで採用されたのがブレーキトルクベクタリングを大胆に用いる手法。これはMINIのジョン・クーパー・ワークスでとりわけ顕著だったが、私はこの、ビタミン剤を大量に飲ませて無理やりスポーツマンに仕立てたような味付けがあまり好みではなかった。

ウルリッヒ・リューヘも、過度なブレーキトルクベクタリングは好きでないという。リューヘは3年ほど前にMINIのシャシー・デザインを統括する立場に就任したエンジニアである。私はマイナーチェンジを受けたMINIジョン・クーパー・ワークス・クラブマンの試乗会でリューヘと意気投合し、様々なスポーツカーについて議論するうち、彼も強すぎるブレーキトルクベクタリングについて否定的な立場であることが明らかになった。

話がかなり回りくどくなったが、新しいMINIジョン・クーパー・ワークス・クラブマンの足まわりはリューヘの考え方が色濃く反映された仕立てに改められていたのである。

フロントアクスルにトルセンLSDを採用

まず、キャンバーを0.5度強めて操舵初期の応答性を改善。アンチロールバーにプリテンションをかけて姿勢変化の初期から所定のロール剛性を発揮するようにした点も、ステアリング・レスポンスを鋭くするのに役立っているはずだ。さらに前車軸にトルセン式の機械式リミテッド・スリップを採用し、コーナリング時のトラクションを確保した。

「こうすることでブレーキトルクベクタリングを弱くした」とまでリューヘは明言しなかったものの、彼の目標がそこにあったことは間違いないだろう。では、実際に試乗してみるとどんな印象なのか? フランクフルト郊外のワインディングロードに繰り出してみることにした。

硬いフィーリングと鋭いレスポンスはまさにJ.C.W.

ジョン・クーパー・ワークスだけあって、乗り心地ははっきりと硬い。ただし、その硬さにもダンパーがしっかり利いている感触があるので、安っぽさは感じない。「質の高い硬さ」といっていいだろう。

ステアリング・レスポンスは確かに鋭いが、予想外の挙動を示すわけではない。ただ、ステアリングを操作するほんのわずかな手の動きにも的確に反応するだけの話。おかげで次々と迫るコーナーをリズミカルに駆け抜けることができた。

パワーだけでなく官能性も備えた直4エンジン

そうやってコーナーをいくつかクリアするうち気づいたのが、新世代に切り替わった直4 2.0リッターターボエンジンの完成度だった。新型は圧縮比を下げるとともに過給圧を高め、先代に比べて+75psと+100Nmの306psならびに450Nmを発揮するハイチューン・エンジンに生まれ変わったが、まるで自然吸気かと見紛うほどの正確なスロットル・レスポンスを披露する。

低速域での力強さからしてフラットなトルク特性に仕上げられているはずだが、それでもエンジン回転数を上げるにしたがってドライバーの心拍数も徐々に高まっていくような官能性も手に入れていたのだ。基本的にBMWのX2 M35やM135iと同じユニットだそうだが、パワー、ドライバビリティ、官能性、さらには環境性能までバランスよく仕立てた名機といっていいだろう。

一方、これと組み合わされる8速ATは、エンジンのパフォーマンスをフルに引き出そうとしてギヤチェンジを高速化した結果、ときとしてシフトショックを生み出すことがあった。しかも、それがハードコーナリング中だとショックとあわせてステアリングが左右に振られる傾向が現れて、やや煩わしい。もっとも、その程度はさして重くないほか、これがどうしてもイヤであればマニュアル・シフトに切り替え、ハードコーナリング中はシフトをしなければ問題も起きないはずだ。

LSDの影響でコーナーではオーバーステア傾向

コーナリング中のクセといえば、たとえば緩い上り坂のコーナーを攻めているとき、先が見通せた段階でスロットルを強く踏み込めば通常はアンダーステア傾向になるはずだが、MINIジョン・クーパー・ワークス クラブマンでは反対にオーバーステア傾向を示した。これは前車軸にLSDを装着している影響だが、シフトショックの件同様その程度は軽い。

一方で、この特性をあらかじめ頭にたたき込んでおけばラインの修正をスロットルで行えるメリットが手に入る。しかも、コーナリング中に強大なトラクションが得られるのは当然のこと、トルセン式ゆえに反応が穏やかで、LSD特有の神経質な動きを見せないところも魅力的といえる。

“オトナになったMINI”は好感触だ

こうして半日ほど散々ワインディングロードを走り回ったものの、ブレーキトルクベクタリングがわざとらしく介入したことは皆無だった。新型MINIはビタミン剤ではなく、自らの筋力を鍛えてパワフルなコーナリングを手に入れた。そしてそれはまさにリューヘが狙ったシャシーの方向性だったといえる。

試乗会が終わりに近づいた頃、MINIのゴーカート・フィーリングが3代目から大きく変わったことをリューヘに指摘すると、彼はにこやかな笑顔を浮かべながら、私にこう打ち明けてくれたのである。

「アナタはゴーカートに乗ったことがありますか? (私が頷くのを確認してから)30分でクルマ酔いしてしまうような乗り心地ではお客様に受け入れていただけません。MINIももう20歳です。オトナになるのは、当然でしょう」

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

【SPECIFICATIONS】

MINIジョン・クーパー・ワークス クラブマン

ボディサイズ:全長4266 全幅1800 全高1441mm

ホイールベース:2670mm

トレッド:前1553 後1555mm

車両重量:1550kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ

総排気量:1998cc

ボア×ストローク:82.0×94.6mm

圧縮比:9.5

最高出力:225kW(306ps)/5000-6250rpm

最大トルク:450Nm/1750-4500rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:AWD

サスペンション形式:前シングル・ジョイント・マクファーソンストラット 後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:前後225/40ZR18

燃料消費率(EUサイクル 総合):7.4-7.1L/100km

【問い合わせ】

BMWカスタマー・インタラクティブ・センター

TEL 0120-269-437

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