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ラッピングバス、どうやって作る? 全長10m、3時間の作業に密着 写真40枚

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ラッピングバス、どうやって作る? 全長10m、3時間の作業に密着 写真40枚

もくじ

ー 「ラッピングバス」とは?
ー 下準備は入念に… 協会の審査も
ー 職人技が光る 貼り込み作業
ー 大仕事は一息に
ー ラッピングしたのはどんなバス?

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「ラッピングバス」とは?

クルマで走っていると、車体全体に広告が施されたバスを目にしたことがあるだろう。

一般的に「ラッピングバス」と呼ばれているもので、乗客、沿道の人々、まわりを走るクルマにもアピールできる動く広告塔として広く認められている。車体全面に趣向を凝らしたデザインやカラーリングが施され、シンプルな文字だけでアピールするものもあり、見ているだけでも楽しい。

しかし、大型バスともなると全長は10m余り。どのように製作するのかバス好きならずとも気になる。そんな折、東急バスが新たなラッピングバスを製作するとの情報を得て、AUTOCARはその作業現場を取材する機会を頂いた。

昔から全面広告が施されたバスは存在したが、ごく一部の車両に留まった。当時は塗装で表現していたので、手間と費用がネックとなったのだ。その後、糊付きのシートに写真や文字をデザイン・印刷してボディ面に貼り付ける工法が開発。あわせて2000年に東京都屋外広告条例が改正され、都内の路線バスに全面広告を掲出することが可能になったことから、一躍ポピュラーな存在になる。

ちなみにラッピングバスの名は、フィルムで車体を包むという意味の「ラップ」が由来。

ラッピングできるのは原則としてバスの車体側面(屋根はショルダー部分まで)と後面に限られる。複数のバス会社が同じ路線を運行することがあり、前面まで貼ってしまうとどのバス会社か分からなくなるため、元のカラーリングが残されるのが一般的だ。

それでは最初に、今回のラッピングバス用に準備された図面をご覧いただこう。

下準備は入念に… 協会の審査も

ラッピングの貼付け作業に取り掛かる前段階として、ラッピングシート製作会社がバスの正確な図面をもとに、クライアントの意向を盛り込んだデザインの制作を行う。バスのタイプによってドア位置やホイールアーチ、エンジンルームのグリルの位置や形状が異なるため、そこにデザインが掛らないように調整するのだ。

また事前にラッピングするバス会社と、(社)東京屋外広告協会・車体利用広告デザイン審査委員会の審査が必要で、承認されたデザインだけが掲出ができる。これらをクリアしてから印刷に取り掛かるわけだ。

ラッピング広告の商材として扱われるダンロップ・タイヤは、以前から東急トランセ・バスの弦巻営業所所属のT1534号車でラッピングバスを掲出してきた。今回ミニバン用に新発売された「エナセーブRV505」をアピールするため、東急バス目黒営業所所属のバスにラッピングが施されることになった。

同バスに使用されるのはスリーエム ジャパン製のラッピングバス専用フィルムで、耐候性と貼り易さが考慮された特製品である。

フィルムの横幅は約1200mmあり、デザインはこの幅で正確に分割してインクジェット・プリンターで印刷され、貼り付けの時を待つ。

計3人で作業 リア、左面、右面で分担

貼り付けるのはなんと営業中のバスである。今回は午前9時30分に営業所に戻ってきたところでそのまま作業を開始。貼り込みを担当するのは3人のスタッフで、リア、左側面、右側面をそれぞれ1人が受け持つ。

9時40分。営業所のメカニックが車両を作業場に収めたところで、スタッフが持ち場に付き、ラッピングの際に邪魔になるパーツを外して行く。

リアの担当は、後面にある広告枠を取り外し、続いてテールランプのレンズ、エンジンフードのハンドルも外す。一見すると平面な構成に思えるバスだが、仔細に見てゆくと車体側面にはサイドマーカー・ランプやフットランプ、車外スピーカーなどいろいろな付属品の凹凸があり、簡単には貼り付け作業に掛かれないことが知れた。

職人技が光る 貼り込み作業

筆者もその昔にレーシング・マシンのマーキングを手伝ったことがあるが、予想以上に手強かった。パッと見平面に見える部分でも緩やかな3次元曲面で、ゼッケンサークルのサイズでもそのまま貼るとしわが出てしまい、引っ張ったり、気泡を抜いたりで苦労させられた記憶がある。

こんな経験があるだけに、ラッピング作業は興味津々だった。

まずはボディをクリーニングしたのち、デザイン図面と見比べてラッピング・シートの位置を確認し、仮止めしてゆく。

しかし、上下方向の位置を決め終わるなり、そのまますぐに貼り始めたのには驚かせられた。

スキージ(ヘラ)をリズミカルに操りながら、あっという間に貼り終えてしまう。聞けばシートの糊面には細いラインが刻まれてあり、気泡を逃がし易い構造になっているという。それでも素人が貼ったら気泡だらけになってしまうに違いない。

10時40分。車体側面の平らな部分が1時間ほどの作業であっという間に終わる。ただ、残されたホイールアーチの部分は樹脂製のオーバーフェンダーが付いているため手強い。しかし、ここも慣れた手つきであっさりとクリアしてしまった。

腰板部分の全作業が終了するのに要したのは1時間半ほど。と、ここで作業員たちが脚立を持ってきた。

大仕事は一息に

最大の難関といえるのが、車体のコーナーからルーフに至る部分である。それまでは2次元だったのが3次元の面になるからだ。

まずは脚立2台と足場板を組み合わせ、車体の高い所に手が届く足場を作る。

作業自体はラッピング・シートを細くカットして伸ばしながら貼り込んでいく流れ。

伸ばしきれないところは熱を加えるのだが、細かな修正などなく、一息でフィットさせていく手際の良さには感心した。プロの技を目の前で見せてもらうと嬉しくなってしまう。

最後の1ピース

昼休み明け、最後の仕上げに入る。バス会社名や社番、案内ステッカーを貼ると、バス本来の姿に戻っていく。続いて、テールランプのレンズといった最初に外したパーツ類を取り付ければ、とうとうエナセーブRV505ラッピグバスの完成である。

段差のあるドア部分も自然に見えるように丁寧に処理されている。図面と見比べると、ダンロップのロゴやタイヤの写真部分ももちろん設計通りの位置にあった。

ここまで要した時間はわずか3時間あまり。もし編集部員が真似事をして貼り付けに挑戦したら、1日掛けても終わらなかっただろう。作業したスタッフに伺ったところ1日2台はこなせるそうだ。

こうして装いを新たにしたM1608号車はしばし休憩しただけで、営業運転に戻って行った。まさにタイトなスケジュールの中での貼り付け作業だったのだ。プロの技が無くしてはできない仕事なのである。

ラッピングしたのはどんなバス?

ダンロップ・エナセーブのラッピングを施されたのは東急バス目黒営業所に所属するM1608号車。日野自動車が大型路線用バスとして用意するブルーリボンの標準尺車(全長10.5m、ホイールベース5300mm)KV290N1型で、2016年度に導入された。

日野ブルーリボンはいすゞエルガとの統合モデルで、内容は共通でエンジンもいすゞ製が使用されている。2015年にデビューし、従来型に比べてホイールベースを延長して前中ドア間のノンステップ・エリアを拡大したのが特徴だ。

リアに搭載されエンジンは、前モデルのKV234型で使用されていた260psを発揮するNA6気筒7790ccの6HK1-TCCユニットから、ダウン・サイジングされた直列4気筒5193ccの4HK1-TCH型が採用された。

このエンジンは高圧・低圧2種類のターボを制御する2段過給ターボチャージャーと電子制御式コモンレール燃料噴射システムを組み合わせ、最高出力は240psを発揮するとともに、厳しい排気ガス規制である「平成28年(ポストポスト新長期)排出ガス規制」に適合。良好な燃費性能を実現している。

ボディは日野自動車といすゞ自動車の合弁会社である宇都宮にあるジェイ・バスが制作するもので、両車のデザインは共通となっている。姉妹モデルとなるいすゞエルガは2015年度グッドデザイン賞に選ばれている。

なおこのダンロップ・エナセーブのラッピングを施した東急バスM1608号は、目黒駅と渋谷駅から、東は東京駅、西は二子玉川駅、等々力駅、南は大井町駅を結ぶ路線で使用されるため、都心や都内西部で目にすることができることだろう。

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