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フォード・フィエスタST 2018年モデル試乗 新型、操舵/乗り心地は洗練

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フォード・フィエスタST 2018年モデル試乗 新型、操舵/乗り心地は洗練

もくじ

どんなクルマ?
ー 真面目に作り込まれたホットハッチ
ー ヘリカルLSDも

フォード 北米でフィエスタや複数サルーン廃止 2020年までに

どんな感じ?
ー 興味深いサスペンション
ー 乗り心地と運動性能を両立
ー 気筒休止付き3気筒エンジン
ー 類まれなボディコントロール
ー トラクションも向上

「買い」か?
ー 以前よりも魅力が増した

スペック
ー フォード・フィエスタSTのスペック

どんなクルマ?

真面目に作り込まれたホットハッチ

ホットハッチが採算度外視のモデルだった時代を覚えているだろうか。三菱ミラージュ・サイボーグRやシトロエンAX GT、ルノー・クリオV6のような、変わり種やイメージリーダーが生まれた時代だ。時代は変わり、今ではそのようなクルマは作られていない。

最近の、そのようなモデルの後継モデルもファン・トゥ・ドライブだが、おそらく真面目に作り込まれたクルマだ。そして、ビジネス的には高付加価値モデルでもある。メーカーからすれば、ホットなスーパーミニはブランドのイメージリーダーのひとつで、このクラスのモデルの販売台数は、ヨーロッパでは5年前の2倍にもなっている。

3代目フォード・フィエスタSTは社内のチューニング部門であるフォード・パフォーマンスによってチューニングされたクルマだが、そのスペックや開発に費やされた多くの時間と努力からは、商業的な期待が透けて見える。

ヘリカルLSDも

7代目フィエスタ・ハッチバックの発表から1年が経ち、新しいSTモデルは多くのハードウェア・アップデートとパフォーマンス上の特徴を備えて登場した。ノーマルからの改善の度合いは、チームRSが作った2002年の名作、フォーカスRSと比べても多い。

3代目フィエスタの一大ニュースは、フィエスタとして初めて、駆動輪である前輪にヘリカルLSDを選択できるようになったことだろう(実際にはオプション設定で、クワイフ社から供給される)。

それではテストを始めよう。

どんな感じ?

興味深いサスペンション

STモデルを作るにあたって、フィエスタのホワイトボディには重要な部分に補強が加えられ、標準車に比べ14%強度が向上した。フォードのパフォーマンスカーの中で、最も速いステアリング比と硬いトーションビームを搭載しているが、サスペンションは特に興味深いので少し紹介しよう。

テネコ製のダンパーは細かく設定が変更でき、コンベンショナルなパッシブダンパーよりも低周波、高周波を問わず、衝撃をうまくいなすダブルバルブ式である。アダプティブ・ダンパーは装備されない。

さらに、リアアクスルの上には、あえてアシンメトリーの指向性スプリングが装着される。通常求められる耐荷重性はもちろんだが、効率よく曲がってリアアクスルに追随し、リアホイールに水平方向の力を加えて安定させる機能も備えている。

ホットハッチにツインビーム式リアサスペンションを採用する場合、効率的なリアアクスルの配置とハンドリングの精密さを追求することになる。すると、かなり硬いサスペンション・マウント・ブッシュを装着する必要があり、もちろん、乗り心地は悪化するのが常である。

しかし、新型フィエスタSTは特殊なスプリングを用いることで、この問題を解決したのだ。

乗り心地と運動性能を両立

フォードいわく、この「トルク・ベクタリング」サスペンションは、ワットリンク式サスペンションと同じような効果があり、かなり柔らかいブッシュの装着も許されるようになる。そのうえワットリンク式よりもかなり軽量な点も見逃せない。

フィエスタSTは、かなり練られたフロントハブのデザインを持つが、これはこのセグメントでも一般的になってきた。おかげで、あまりフロントサスペンションのロールセンターを落とさずに車高を落とすことができ、フロントのキングピン角とホイールのオフセットをコントロールし続けることができるようになった。これはトルクステアやバンプステアを出さないために必要なポイントである。

このクルマは全般的に、スプリングレートが通常よりもわずかに高いが、シャシー開発担当のエンジニアの話によると、新しいダンパーとブッシュを組み合わせることで、何よりも重要な、ハンドリングのバランスと、カミソリのようなレスポンスの楽しさを実現しつつ、より円熟した角の取れた乗り心地になった。あまりにも評価が高すぎるかもしれないが、本当の話だ。

前述のエンジニアは他のことも教えてくれた。現行フィエスタSTも愛しているが、不作法で社会に楯突くような乗り心地なのは間違い無く、新型にこの部分を受け継ぐのは許されなかった。これを軟弱だと思うかもしれないが、実はこのクルマを作ったエンジニアたちは、フィエスタの開発途中で、もともと採用予定だったパイロット・スポーツ4Sをミシュランに送り返し、パイロット・スーパー・スポーツのグリップ性能の高さにこだわったことも知ってほしい。

気筒休止付き3気筒エンジン

フィエスタSTに搭載される新しいエンジンは、以前すでに紹介したことのある。オールアルミニウムの3気筒1.5ℓターボで、馬力とトルクは旧型のモデルに搭載されている1.6ℓ4気筒と全く同じだ。しかし、負荷が軽いときには中央のシリンダーを停止する機能を搭載している。2気筒でも機能する3気筒エンジンは自動車業界初である。

試験値では、燃費とCO2排出量は旧型のSTに比べ20%向上している。しかもエンジン自体も軽量化されているのだ。

新型は、ドライビングモードを選択できる初のフィエスタでもあり、ノーマル、スポーツ、トラックの3つから選択できる。モードを変更すると、アクティブ・エグゾーストとエンジンサウンドシンセサイザーが協調して豊かなサウンドを響かせる。とはいえ、初代STは5気筒を搭載していたため、エンジンの吠え方や中回転帯でのトルキーな感覚は全く異なる。

高回転ではクランクシャフトの回転が鈍るが、これには納得がいかない。3気筒エンジンは低速でもスムーズに回る必要があり、バランスシャフトが必要なのは理解している。

しかしどうしても、これをなくせば回転数がどれくらいまで上がるのか、そしてどれくらいパワーが発生するのかとわたしは想像してしまう。ただ、これはわたしが気になるだけであり、中回転でのトルクを除けば、適度な緊張感や個性、回りたがる特性を持った良いエンジンだろう。

類まれなボディコントロール

他にも、フィエスタSTは旧モデルと多くの面で共通点がある。しっかりしたギア比固定式のステアリングは巡行ペースに関係なく扱いやすい。類い稀なるハンドリング・レスポンスとボディコントロールも健在だ。

しかし、乗り心地はまた違った話だ。テストトラックを走っただけでは、英国のB級路でどのような挙動を示すかはわからない。

ただ、旧型よりも柔軟性と俊敏性が増しているのは間違いない。ランプやバンプに差し掛かると、旧モデルならダンパーが荒ぶったものだが、新型のサスペンションはうまくいなして乗り越える。

おそらく最も肝心な点は、旧モデルなら路面の状況によっては同乗者に謝らなければいけない場面もあったが、おそらく新モデルではそれをしなくて済むことだろう。これはクルマ好きにとって天啓のようなものだ。彼女や母親から低速域の乗り心地に文句をつけられないホットハッチの誕生だ。

トラクションも向上

ハンドリングも同じくらい素晴らしい。フォードのパフォーマンスカーへの高い期待値を超えてきた。新型フィエスタSTのステアリング・レスポンスは、旧モデルよりも少々正確性が増した。さらにキビキビとターンインして、グリップ力も増し、リアに水平方向の力がかかっても、狙った通りのラインを保てるようになった。

コーナリングスピードは確実に上がったが、これはクワイフ製のLSDを搭載したことで、コーナリング中盤のスタビリティが改善され、脱出時のトラクションも本当にわずかではあるが確実に向上したためだ。

だが、退屈なのではないかと恐れることはない。スタビリティ・コントロールを解除しリアアクスルを開放すれば、楽しい時間が待っている。アクセルを僅かに残した状態でオーバーステアを簡単にコントロールできるので、どんなスーパーミニよりも安心して積極的にオーバーステア状態に持ち込める。

ハンドリングのバランスと微調整のしやすさは本当に抜きん出ていている。今時の前輪駆動のパフォーマンスカーの中には、アクセルオフ時のオーバーステアは必要ないと考えていたり、そういった状況でのコントロール性に関心のないエンジニアが作ったようなクルマも多いが、幸運なことに、フォードはそうではないようだ。

「買い」か?

以前よりも魅力が増した

このニッチなマーケットは旧型のフィエスタSTが覇権を握っていたが、最近ではかなり多くのライバルが進出している。加えて今回のテストは短かったため、新型フィエスタSTが次世代のクラスリーダーになれるのかという判断は差し控えたい。

とりあえず今言えるのは、新型は旧型よりも少しばかり魅力が増し、わたしが今まで運転したことのあるSTモデルと同様に素晴らしい出来で、相変わらずドライバーズカーであることだ。

ルノースポーツやミニ、トヨタ、スズキ、フォルクスワーゲン、セアトの新モデルもじきにレビューするが、どのクルマもフィエスタSTと比べられるだろう。

今年の最も手頃なパフォーマンスカーは軒並み重くなり大型化する中で、シリンダーは少なくなっても、フォード・フィエスタSTは健闘するはずだ。

フォード・フィエスタSTのスペック

■価格 1万8995ポンド(281万円)
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 232km/h
■0-100km/h加速 6.5秒
■燃費 23.4km/ℓ
■CO2排出量 114g/km
■乾燥重量 1379kg
■パワートレイン 直列3気筒1500ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 200ps/6000rpm
■最大トルク 29.5kg-m/1600-4000rpm
■ギアボックス 6速マニュアル

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