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【新型スズキ・スペーシア試乗 標準NAvsカスタムターボ】乗り心地を含めて走りで選ぶならカスタムターボ一択。デザインは標準仕様の圧勝だが…。

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【新型スズキ・スペーシア試乗 標準NAvsカスタムターボ】乗り心地を含めて走りで選ぶならカスタムターボ一択。デザインは標準仕様の圧勝だが…。

パレットの後継車として2013年2月に発売されたスズキの背高軽ワゴン「スペーシア」が、2017年12月に2代目へフルモデルチェンジされた。今回試乗する機会を得たのは、NAエンジンを搭載する標準仕様の上級グレード「ハイブリッドX」と、エアロ仕様「カスタム」のターボエンジン搭載グレード「ハイブリッドXSターボ」だ。

直接のライバルとなるホンダN-BOXとダイハツ・タントに、販売面でダブルスコアの大差を付けられていた状況を打破するため、スペーシアは4年10ヵ月という短い期間で世代交代。2代目となった新型スペーシアにおける最大の変更点は、「先代は没個性的なうえ大きさのアピールが弱かった」とスズキの経営陣・開発陣が自ら認めたそのデザインだ。

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スーツケースをモチーフにしたというその内外装は、フラットな中に真っ直ぐな凹凸が入れられた面と、スクエア基調ながら角が丸められたフォルムで構成。特に2トーンのボディカラーでは、ドアサッシまわりをルーフと同色に塗装するモデルが多いところ、敢えてボディ同色とすることで、スーツケースのハンドルのような造形を強調したため、その強烈な個性がより一層際立っている。それでいて、特に標準仕様は嫌みがなく、老若男女問わず親しみやすいデザインとなっているのは、スズキデザイナー陣の力量に脱帽するより他にない。

このスーツケースデザインを採用したことで、パッケージングにも少なからず変化が出ている。具体的には、フードの高さを上げ、各ガラスの角度を起こし、さらにベルトラインを高く設定。全高を50mm、ホイールベースを35mm伸ばし、室内幅を25mm、室内高を35mm広げた。さらに前後席のヒップポイントを各30mm、15mm高めて前席のカップルディスタンスを30mm、ショルダールームを25mm拡大している。

その結果、よりスクエアなフォルムとなり、ドライバーにとっては車両の四隅が把握しやすくなった。だが同乗者にとっては、サイドウィンドウの下端が上がり、囲まれ感が強くなっているため、特に小さな子供からは不評を買う可能性が高そうだ。

なお、スーツケースのモチーフをインパネアッパーボックスでも表現したことで、小物をそのまま放り込めるスペースが激減しているが、裏を返せばフタ付きの収納にしまうことで、緊急回避時や事故の際に小物が飛散するのを防ぐことができる。またディーラーオプションで、全6色から好みの色に変えられるのも嬉しいポイントだ。

全高1785mm、室内高1410mm、ホイールベース2460mmにも及ぶ新型スペーシアで、ヘッドクリアランスおよびニースペースに不足があろうはずもないが、むしろ肝心なのはシートサイズ。身長174cmの筆者には、前席は背もたれが若干短いものの座面はちょうど良く、ホールド性も過不足ないレベル。

だが、荷室側からもスライド可能になり、格納方法もワンタッチダブルフォールディング式となった後席は、やはりシートアレンジ優先で、特に背もたれは小ぶり。肩まわりが完全にはみ出てしまううえ、ヘッドレストを最上段にセットしても、支えるのは頭ではなく肩。身長160cm以下の小柄な女性や子供でなければ、追突時にむち打ち症になる危険性が高い。

一方で荷室は開口高と荷室高が拡大されたうえ、後席が軽い操作で素早く格納・復帰できるよう進化。さらに開口部下部のガーニッシュにガイドが設けられたことで、フラットなラゲッジフロアに自転車を積みやすくなっている。

最初に試乗したのは、NAエンジンを搭載する標準仕様の上級グレード「ハイブリッドX」。ゆるやかなS字や石畳路を含む市街地と、高速道路を中心としたコースを走行した。

新型スペーシアのR06A型エンジンには、最長10秒間のモーターによるクリープ走行を可能にしたマイルドハイブリッドと、約5kg軽量化された新型CVTが、ターボ車を含む全車に組み合わされている。

このマイルドハイブリッドが100rpmから50Nmものトルクを生み出し、4000rpmで60Nmを発する658ccNAエンジンの細い低速トルクを積極的に補ってくれるのだが、いざ発進し交差点を一つ曲がろうとすると、その際のアクセルオン・オフでギクシャクしやすいことに気付く。

モーターによるトルクアシストが大きい分、アクセルオンの際には加速力が瞬時に立ち上がり、逆にアクセルを抜くとそのトルクが急激に抜け、さらにCVTがギヤ比を下げ強力なエンジンブレーキを掛ける。そのため大きな前後動を誘発しやすく、アクセル操作に気を遣う必要がある。

さらにハンドリング・乗り心地は、背高軽ワゴンの標準NA車としては思いのほかスポーティ。操舵レスポンス良く弱アンダーステアで旋回する一方、155/65R14 75Sのエコタイヤは特に冷間時、低速域で路面の凹凸を正直に伝えてくる。先代より50mm上がった全高に対応し安定性を確保するため、サスペンションも硬めにセッティングされており、特にリヤが跳ねやすい傾向が見られた。

なおプラットフォームは、現行アルト以降の各軽自動車に採用されている軽自動車用「ハーテクト」に一新されている。そのためボディ・シャシー剛性が先代より向上しているのは体感できるものの、車重はむしろ10kg増加し870kgに達しているため、昨今のスズキ車に多く見られる“驚きの軽さ”は感じられなかった。

高速道路に持ち込むと、さすがに楽々……とまではいかないものの、NAながら流れに充分乗れるだけの加速性能を見せる。また、エンジンとCVTを高回転に保つのに加えてモーターのトルクアシストも増強される「パワーモード」が、この新型スペーシアから新たに実装されているが、低回転域ではほぼ変化が見られないこのモードは高速巡航時にこそその本領を発揮する。低速域では硬さが目立つ乗り心地も、速度が上がるほどその硬さがむしろマッチしていくのが印象的だった。

だが、「カスタム」のターボエンジン搭載グレード「ハイブリッドXSターボ」に試乗すると、同じ車種とは思えないほど走りの完成度が圧倒的に高いことに驚かされる。

スズキ開発陣によれば、サスペンションのセッティングは標準仕様とカスタム、またタイヤの14インチと15インチで違いはないとのことだが、165/55R15 75Vタイヤを装着するカスタムターボは、高速域での高いハンドリングと安定性の良さはそのまま、低速域の乗り心地が圧倒的に優れている。

98Nmの最大トルクを3000rpmの低回転で発生し、さらにマイルドハイブリッドを組み合わせるそのパワートレインが、軽自動車としては重い900kgのボディを余裕で加速させるのは言うまでもないが、NA車に見られたアクセルオン・オフに伴うギクシャクした動きは見る影もない。新型スペーシアの中から走りのベストグレードを選ぶならば、全ての面において「ハイブリッドXSターボ」ということになりそうだ。

しかしながら、新型スペーシアが最大の美点とする、極めて個性的な内外装デザインは、メッキとクリアレンズ、大型グリルで押し出し感を強めたエクステリアと、黒を基調にシルバーと赤のアクセントを加えゴージャス感を演出したインテリアを持つカスタムでは、その魅力が半減する。

しかも、競合他車が標準仕様にもターボ車を設定するのに対し、新型スペーシアにはそれがない。NAエンジン・14インチタイヤ装着車の走りが熟成されるにはマイナーチェンジを待たねばならないが、標準仕様ターボ車を追加するのは、マイナーチェンジほど多くの工数を必要としないはず。商品としての競争力強化という観点からも、標準仕様ターボ車の一刻も早い追加を強く望む。

Specifications
スズキ・スペーシア ハイブリッドX(FF・CVT)
全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm ホイールベース:2460mm 車両重量:870kg エンジン形式:直列3気筒DOHC 排気量:658cc ボア×ストローク:64.0×68.2mm 圧縮比:11.5 エンジン最高出力:38kW(52ps)/6500rpm エンジン最大トルク:60Nm(6.1kgm)/4000rpm モーター最高出力:2.3kW(3.1ps)/1000rpm モーター最大トルク:50Nm(5.1kgm)/100rpm JC08モード燃費:28.2km/L 車両価格:1,468,800円

スズキ・スペーシアカスタム ハイブリッドXSターボ(FF・CVT)
全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm ホイールベース:2460mm 車両重量:900kg エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ 排気量:658cc ボア×ストローク:64.0×68.2mm 圧縮比:9.1 エンジン最高出力:47kW(64ps)/6000rpm エンジン最大トルク:98Nm(10.0kgm)/3000rpm モーター最高出力:2.3kW(3.1ps)/1000rpm モーター最大トルク:50Nm(5.1kgm)/100rpm JC08モード燃費:25.6km/L 車両価格:1,787,400円

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