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シボレー カマロ試乗記 クルマ本来の楽しさを持っている

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シボレー カマロ試乗記 クルマ本来の楽しさを持っている

元ホンダでいろいろなクルマを造ってきた繁浩太郎さんが、アメリカンの象徴ともいえるシボレー・カマロに試乗。実際にクルマを造ってきた人の目に映った最新のアメ車とは?!<レポート:繁浩太郎/Kotaro Shige>

■マッスルカー・カマロ

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カマロは初代が1967年に登場してから、2017年で50周年を迎えた。カマロが登場した頃は、全長が6mもあるようなアメリカンフルサイズカーの全盛期だった。それが今では、大きくても全長5m前後と小型化している。そのキッカケは、オイルショックだった。

1979年には、小型化の象徴的なクルマとしてシボレー・サイテーションが登場した。FFで全長が4488mm、全幅1735mmとボディは小さくなって登場したが、部品は急には小さくならず、また設計者もFFでギチギチに詰める設計に慣れていなかったのか、開発や品質で苦労したと聞いている。

カマロが日本に正式輸入さたたのは、小型化の波が押し寄せる前で、70年にモデルチェンジした2代目からだ。迫力のある大きなボディに大きなエンジンとその排気音からか「マッスルカー」として評判になり、カマロはそのコンセプトをずっと守りとおしてきた。

■カマロのサイズ

今回、試乗したカマロは、全長4780mm、全幅1900mm、全高1340mm、6.2LのV8となる。2.0L 直4ターボのモデルもラインナップされている。そのサイズは、排ガス規制や燃費規制を乗り越えて、またユーザー価値観の変化もあって、現在は当初のモデルより全長で約100mmマイナスしているが、今の眼で見ると十分大きい。しかし、全高は1340mmと低い。サンルーフ設定がありながらこの数値は相当低いといえる。

余談になるが、ホンダの初代CR-Xはもともと燃費カーで全高を1300mm以下にするためにフロア高を極限まで下げ、シートの取り付けも工夫し、結果ヒップポイントを下げて、ルーフ高を下げた。サンルーフはルーフ内にしまい込めないため、外だしスライドサンルーフが開発されたくらいだ。

しかし、ヒップポイントをいくら下げても、エンジンが入っているボンネットも下げないと前方視界がとれない。FFの場合はエンジンを寝かせるが、カマロの場合はV8のバンク角を広めの90度としエンジン高を下げ、視界を確保している。

カマロのサイドシル高さとシート位置の高さを見てもらえば、相当低いヒップポイントなのがわかる。

■カマロのデザイン

カマロに限らずアメリカ車は、70年代から80年代にかけて、大きなボディに大きなエンジンだったので、日本の道路環境や使い勝手などから「無用の長物」的なイメージがあった。
特にそのイメージは、ユーザーの間で燃費が話題になってきた80年代頃から加速したようだ。また、デザインも当初からアメリカンの大胆なものであったこともあり、いわゆるアメ車は一般的な日本人には馴染みにくかったと思う。

これに反するようだが、今回試乗したカマロのデザインは、初代をよりマッシブにしたようなデザインで迫力がある。しかし、よく見ると意外とシンプルな感じがし、受け入れやすいデザインになっているように感じた。

それは、デザインがシッカリとした造形で裏付けされており、付き物でそれらを表現しているのでないからかもしれない。国産某社・ミニバンのメッキ多用での迫力のあるデザインとは質が異なるのだ。つまり、アメ車ファンでなくても素直に迫力のあるいいデザインと思えるのだ。

さらに、インテリアのデザインは高価さの表現を求めて絢爛豪華に走るのでなく、あくまでも安全に運転できることをファーストに考えた真面目なデザインだ。それは、メーターやディスプレイの位置、さらにスイッチ類の操作性の良さからわかる。

よく使うスイッチ類は大きく使いやすくなっている。ヘッドアップディスプレイの表示も、視界域の下側に遠慮がちに表示され、決して運転を邪魔するものではなかった。

このように、安全に運転できることをファーストにしたインテリアとなっており、そのクルマ造りの姿勢は評価できる。

■カマロの試乗結果

数年前から各社の試乗会では、小排気量ターボの凄さに驚かされたり、EVの走りに驚かされたりと、環境対応の結果の技術には驚くが、クルマとしての個性や楽しさに驚かされる試乗会は少なかった。

今回はカマロが持っている個性や楽しさに改めて驚かされた。メーカーはクルマの楽しさ~クルマ造りの本質を知っているのだろうと思う。

全体的には、現代のクルマらしく「静か」で「安定的」なドライビングができるが、アクセルをちょっと踏み込むと「ブロロロ~ン⤴」とV8サウンドが目覚める。これは、他のどんなスポーツカーにも高級車にもない、まさにカマロの感覚で官能的だ。

またその加速は、スルスルとスムーズに加速する速さではなくて、勿論速さに変わりはないのだが、発進の一歩からお相撲さんが後ろからドスコイドスコイと押してくれているような力強い加速で一気に高速までいってしまう。他に類をみない加速感なのだ。

ハンドリングは、直進で落ちつき良く、切っても過敏な反応ではなくドライバーの気持ちに忠実なスムーズさで、クルマは方向を変えてくれる。また、タイヤの四隅の位置がわかるような運転感覚でコントロール感もある。このようにスポーティだがクルマの安定性は良いので、ドライビングの安心感は大きい。

また、フロント P245/40ZR20リヤP275/35ZR20と扁平タイヤのためか、パターンノイズが少し聞こえるが、走行騒音は全体的に静かと言えるレベルだ。

■まとめ

カマロは永く造ってきただけでなく、排ガス規制や燃費規制を技術で乗り越え、他の時代性をも取り入れながら、魅力的な良い部分は残すという全く老舗のものづくり、つまりアメリカン大排気量車ブランドを守ったクルマ造りをしてきた。

しかも、価格的にはほぼ同サイズのマセラッティ・グラントゥーリズモスポーツの1/2~1/3、アストンマーティン DB9の1/4程度という安さである。

高価な高級車となるヨーロッパ車は販売量も少なく、より高価になる。それに対してカマロは、まさにアメリカらしくV/M(バリューフォーマネー)を具現化したモデルで、ユーザーフレンドリーといえるだろう。

クルマ本来の楽しさを持っているカマロは、熟年は勿論、若い世代のクルマ好きにとって、いい選択と思う。

■価格

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