「3列シートのMPVが欲しい」と奥さんから希望され、車種選びに悩む車好きのダンナさんは少なくないだろう。夫婦円満を保つにはMPV(マルチ・パーパス・ビークル=広義のミニバン)を選びたいが、走りの妥協もしたくない。そこで注目されるのがBMW 2シリーズグランツアラーだ。BMW初の3列のシート7人乗りのMPVにして価格は393万円から。大きさはホンダ ジェイドに同車は、“オヤジの希望”を叶えるミニバンに仕上がっているのか? 218d xDriveラグジュアリー(487万円)を試乗した。
文:渡辺陽一郎
ベストカー2018年1月26日号
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“同乗者の意向”を左右する乗り心地と燃費はどうか?
BMW初の3列ミニバン、2シリーズグランドツアラー。全長4565×全幅1800mmというサイズはノア、セレナ等と比べて「ショート&ワイド」だ
まず運転姿勢がピタリと決まる。前輪駆動を基本としながらペダル配置に無理がなく最適に調節できる。座り心地はしなやかで、肩まわりの支え方も優れているから、着座姿勢が乱れにくく、長距離の移動でも快適だ。
218dが搭載する直列4気筒2Lクリーンディーゼルターボは、動力性能が力強い。発進直後の1700回転付近から余裕のある駆動力が発揮され、フル加速時には、ATがDレンジでも5000回転まで引っ張ってシフトアップする。3Lのガソリンエンジンと同等の感覚で加速できた。
ATは有段式の8速だから加減速が機敏で、走行状態に応じて適切なギアを選べる。アクセル操作による細かな速度調節も行いやすく、上質な運転感覚を満喫できる。
しかもJC08モード燃費20.0km/L、本誌計測の実用高速燃費も18.2km/Lと優秀だ。軽油価格の安さも含めると燃料代は1.3Lのコンパクトカーと同等だから奥さんに対する説得力も強い。
国産ミニバンと一線を画す安定性
コーナーをゆくBMW 218d。その走りは売り文句どおり、「実用性一辺倒」のミニバンと言わせないレベルにあるのか?
そして、最も注目されるのが操舵感と走行安定性だ。試乗車は前輪駆動をベースにした4WDだが、操舵感は3シリーズなど後輪駆動のBMWに近い。ハンドルを切り始めた時から車両の向きが正確に変わり、滑らかにカーブに進入していく。
走行安定性も優れ、全高が1645mmに達する車内の広いボディながら、唐突に傾く印象がない。操舵角どおりに曲がって旋回軌跡を拡大させにくく、峠道などを走る時も反応の鈍さが生じにくい。ここまで攻めた走りが行える3列シートMPVは珍しい。
BMWのセダンに比べれば、カーブを曲がる時のボディの傾き方は大きいが、挙動の変化が滑らかだから違和感が生じない。むしろ、適度に姿勢が変わることで、車を操る実感が強まる場面もある。グランツアラー特有の楽しさがあるわけだ。
また、全長が4565mmに収まる視界の優れたボディは、駐車場での取り回し性も良好だ。毎日の買い物にも使いやすい。
2列目&3列目の居住性はどうか?
BMW 218dの2列目。前席の裏側は写真のとおり、えぐられていて、2列目乗員の膝元が収まりやすい設計としている
MPVとしての居住性もチェックした。2列目シートは床と座面の間隔に余裕があり、1列目の下に足が収まりやすい。座り心地が快適で、3列目を使う時にスライド位置を前方に寄せてもさほど窮屈に感じない。
そうなれば3列目の足元空間も確保しやすく、ワゴン風のMPVながらも多人数乗車時の快適性を高めた。
そしてBMWらしいのは、シートアレンジが実用的で、操作する時の手応えもしっかりしていることだ。2/3列目のシートはワンタッチで畳めて、フラットな荷室に拡大できる。フルに畳むと就寝できるほどの広さになる。
装備も充実させ、カメラ方式の衝突回避・被害軽減ブレーキが備わるから、歩行者も検知して緊急自動ブレーキを作動できる。ストップ&ゴー機能付きアクティブクルーズコントロールも用意され、長距離移動時の疲労をさらに抑えられる。
このようにBMW 2シリーズグランツアラーは、今の車選びで優先順位の高い安全性と環境性能が優れ、快適な居住性とBMWのDNA=走りの愉しさを忘れない3列7人乗りのMPVだった。
唯一の懸念は3列目の広さ。大人が座ると、膝は持ち上がる形になってしまう。3列目の使い方によってこの車の価値は変わってきそうだ
■BMW 218dグランツアラー ラグジュアリー
・全長×全幅×全高:4565×1800×1645mm
・ホイールベース:2780mm
・車重:1690kg
・エンジン:直列4気筒ディーゼルターボ、1995cc
・最高出力:150ps/4000rpm
・最大トルク:33.7kgm/1750-2750rpm
・JC08モード燃費:20.0km/L
・価格:487万円
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