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スーパーGT:大荒れ第1戦岡山からの復活劇。6台のGT300マシンたちが修復されるまで

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スーパーGT:大荒れ第1戦岡山からの復活劇。6台のGT300マシンたちが修復されるまで

 いよいよ5月3日から、富士スピードウェイを舞台にスーパーGT第2戦が幕を開ける。4月14日に決勝レースが行われた第1戦からは1ヶ月ない間隔でのレースだが、雨のため大荒れとなったレースでクラッシュに見舞われてしまったチームのマシンたちは、全車が富士に集った。彼らが第2戦を迎えるまでにどんな“ドラマ”があったのだろうか?

■チーム同士の助け合いで復活。HOPPY 86 MCとEXE AMG GT3の場合
 まずスタート直後、1コーナーでイン側のコンクリートウォールにクラッシュしてしまったHOPPY 86 MCだが、フロントのストラクチャー、サブフレーム、カウル、ラジエター、サスペンションアームを破損してしまった。

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 第1戦を終えた直後、土屋武士監督は新品のパーツを受け取り持ち帰ってきたというが、月曜に「“神”からの電話がありました(笑)」という。アップガレージの河野映彦から電話がかかってきたのだ。電話の内容は、昨年までTEAM UPGARAGEが使用していた86 MCを「ぜひパーツ取りに使って下さい」というものだった。

 土屋監督は、一度は「ありがとうございます」と電話を切るが、その後ストラクチャー等、自チームで作れないパーツの価格を見て再度河野社長に電話をする。すぐに86 MCを東京都町田市のアップガレージに積車で受け取りにいき、神奈川県藤沢市のつちやエンジニアリングへ。86 MCからパーツを外し、HOPPY 86 MCに装着。見事“復活”を果たした。

 現在、まだアップガレージの86 MCはつちやエンジニアリングでバラバラな状態。今後、HOPPY 86 MCの使えるパーツを使って「形にしてお返しします」という。車両こそ変わったが、今季もライバルであることは間違いないアップガレージの心意気に、土屋監督は今回、感謝の気持ちを込めてフロントフェンダー後方に『Thanks! UPGARAGE』のロゴを貼ってレースに挑むことになった。

「今年は実は、予算的にかなり切迫している状況なんです。これで1戦分くらいは出られるラウンドが増えたかな……」と土屋監督は語った。今回、HOPPY 86 MCはタイヤも新たにヨコハマとともに作り上げてきており、感謝の思いとともに上位進出を狙っている。

 同様に、他車からの助けを受けたのは二度目の赤旗直前にクラッシュしたEXE AMG GT3だ。リヤを突き上げるかたちでクラッシュしてしまったが、これでカウルの多くの部分が割れてしまった。ただ、割れていただけに自チームでの修復を決断。伊藤宗治監督が「1年分くらいカーボン貼りました(苦笑)」という作業を続けて、パッと見には何事もなかったかのようにカウルが復活した。

 ただ、どうしても取り寄せなければならないパーツがあった。しかしヨーロッパでは4月21日にイースターがあったり、日本ではゴールデンウイークが重なってしまったりで、間に合わないことになってしまった。そこで、ピレリスーパー耐久シリーズに参戦するSATO-SS SPORTS AMG GT3からパーツを「借りる」ことで参戦が実現したのだという。

■大きなダメージを受けつつも、国産の強みで復活したGT-R勢
 第1戦岡山の13周目。モスSで発生してしまった多重クラッシュ。このアクシデントでは、3台のニッサンGT-RニスモGT3の2018年モデルと、D'station Vantage GT3が大きなダメージを負ってしまった。最も大きな被害を受けてしまったのはGAINER TANAX triple a GT-Rだったが、なんと4月24~25日の鈴鹿メーカーテストに登場した。

「シャシーは全損の状態でした」というのは、GAINERの福田洋介氏。ただ、なんと明けて4月15日の月曜日からすでに組み付けが始まったという。実はGAINERには昨年使用していたGT-Rのフレームがあり、ニスモにあった新品を待っていてはテストに間に合わない……という判断からこれを修復。クラッシュした車両のうち無事だった車体後半からパーツを外し、新しいフレームに装着が始まった。

 多くのパーツがニスモから到着し、使えるパーツがないかのチェック等も経て、公式テストまで使用していたエンジンを装着。「メカニックが本気でかかれば、多少はハードワークになりますが、時間的な問題はまあなんとか。国産メーカーだから間に合ったというところです」とのこと。

 また、鈴鹿テストにはカラーリングもしっかり復活して走行した。「かたちになっただけではスポンサーの皆さんにも申し訳ないですからね」とのことだった。

 同様にフレーム交換となってしまったのはエヴァRT初号機 X Works GT-Rだ。「残念ながらダメージは大きかったんだ。運悪くタイヤに思いきりヒットしてしまったし、他のマシンにもヒットしていて、フレームにダメージがいってしまった」というのは、当時ドライブしていて、チームを牽引する立場のマーチー・リー。

「でもチームが素晴らしい仕事をしてくれて、クルマを短時間で修復してくれた。富士テストでは僕たちもいい調子だったし、今週末こそ僕たちの実力をみせたいね」

 一方映像ではあまりダメージが映っていなかったが、大きな修復が必要だったのはRUNUP RIVAUX GT-Rだ。「うしろから来られたのを避けて、サイドの前からうしろまでダメージがありました。他のクルマに比べたら軽傷でしたが、もう泣きたいくらいです(苦笑)」というのは田中篤だ。

「基本的にはカウルだけでしたが、とは言え金額的には……ねぇ。ホイールもダメージを受けていましたし。レースだから仕方ないですけど……」

■特例でのスーパーGT“復帰”。D'station Vantage GT3の場合
 この多重クラッシュで大きなダメージを受けていたD'station Vantage GT3は、こちらも全損のダメージを受けていたが、GT-R勢とは事情が異なる。国産のGT-Rの場合は、横浜のニスモからすぐに輸送が可能だが、アストンマーティン・ヴァンテージGT3の場合はイギリスから。またヴァンテージGT3自体リリースが始まったばかりで、新しいシャシーはなかった。

 そこでチームでは、本来他シリーズを戦ったマシンはスーパーGT用で使用することはできないが、GTアソシエイションに嘆願書を提出して、ピレリスーパー耐久シリーズに参戦していたD'station Vantage GT3を転用することになった。もともとこのマシンはスーパーGT岡山公式テストまで走っていたシャシーナンバー16A-004-1だ。

 その決断が下されたのは、4月27~28日のスーパー耐久第2戦SUGOの前。もしスーパー耐久で何かクラッシュがあったら、スーパーGTにはいよいよ出られなくなる。「(スーパー耐久に参戦する)星野敏選手、近藤翼選手、そしてダレン・ターナー選手の3人が、チームが置かれている状況をよく理解してくれて、すごく慎重に戦ってくれました。特にオーナーでもある星野選手は気を遣ってくださいましたね」と武田敏明監督が語るとおり、きっちり完走しながら3位表彰台をもぎとってみせた。

 チームは月曜日に御殿場のファクトリーに戻ると、すぐさまスーパーGT仕様に変更。S耐ではグリーンのラインがAMRイエローに変更され、富士スピードウェイに運び込まれることになった。

 ゴールデンウイークの一戦で、多くのファンが訪れるスーパーGT第2戦富士。チームはそれぞれの創意工夫や試行錯誤、そしてチーム同士の助け合いを経てマシンをサーキットに持ち込んでいる。第3戦鈴鹿までの間隔も近いこの週末は、すべてのマシンが無傷でレースを終えることを願うばかりだ。

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