現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 儚く散った小さな高級車!? トヨタ ブレイドの理想と現実 【偉大な生産終了車】

ここから本文です

儚く散った小さな高級車!? トヨタ ブレイドの理想と現実 【偉大な生産終了車】

掲載 更新 13
儚く散った小さな高級車!? トヨタ ブレイドの理想と現実 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

【絶好調? それとも瀬戸際?】欧州では瀕死も日本では絶好調 ディーゼルの現状と今後

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ ブレイド(2006-2012)をご紹介します。

●【画像ギャラリー】国内専売車のためお買い得な一面も! トヨタ ブレイドの画像をギャラリーでチェック!!!

文:伊達軍曹/写真:TOYOTA

■オーリスの兄弟車として新たな魅力を目指した「洒落た大人の高級ハッチバック」

「大人しくない大人に、ショート・プレミアム」とのうたい文句を伴って2006年に登場した、いわゆる「小さな高級車」。

 しかしながら、さまざま部分が「同クラスの欧州車にはまるで及ばない」と酷評され、2012年に1代限りで販売終了となってしまった5ドアハッチバック。それがトヨタ ブレイドです。

奥行きのあるバンパー開口部、横バーの厚みと奥行きに変化を持たせたグリル、L字型ヘッドランプによる「格の高さ」を感じさせるフロントビューをはじめ、先進感あふれるデザインを目指した

 2006年の暮れに2.4Lエンジンを搭載してデビューしたブレイドは、トヨタ オーリスの兄弟車にあたります。しかしオーリスには欧州仕様や豪州仕様もあったのに対し、こちらブレイドは国内専用車でした。

 オーリスの搭載エンジンは1.5~1.8Lでしたが、こちらブレイドは前述のとおり2.4Lの直列4気筒DOHC。

 リアサスペンションには路面追従性に優れるダブルウィッシュボーン式が採用され、ボディの一部とブレーキも車格に見合った強化がされました。

 そして装備やインテリアにも、「小さな高級車」にふさわしい(と、当時のトヨタが考えた)ものがブレイドには投入されました。

 具体的には、ダッシュボードの表皮はスエード調となり、上級グレードには運転席8ウェイパワーアシスト付きのアルカンターラ張りシートが採用されています。

座り心地の良さと車両との一体感をもたらすホールド性を両立させたシート。世界トップブランドのスエード調人工皮革「アルカンターラ*」と本革とのコンビネーションタイプを採用した(Gグレード)

 デビュー翌年の2007年8月には最高出力280psをマークする3.5L V6を積んだ「ブレイドマスター」を追加し、2009年12月にはマイナーチェンジを実施。

 このマイナーチェンジでは内外装のデザインが小変更されたほか、パーキングブレーキを足踏み式に変更。

 そして3.5Lエンジンの6速ATには、レクサス IS Fにも採用された「SPDS」がトヨタ車としては初めて採用されました。

 ちなみにこのSPDS (Sport Direct Shift)というのは、トルクコンバータのオイルを介さずロックアップクラッチが直結することで、エンジンの回転力をメカニカルに伝達する機構です。

 このように「小さな高級車」として新たなポジションを獲得すべく意気揚々と発売され、そして商品力を向上させるためのマイナーチェンジや小変更も受けたブレイドでしたが、その人気は一向に高まることがありませんでした。

 そのためトヨタは2012年3月にブレイドの生産を打ち切り、同年4月には販売のほうも終了と相成りました。

■ゴルフ 1シリーズ…輸入ベンチマークモデルとの比較で見えてくる当時のトヨタの姿

 トヨタ ブレイドが1代限りで販売終了となってしまった理由。

 それは、酷な言い方にはなりますが「走りがイマイチだったから」ということに尽きるでしょう。

 とはいえブレイドは決して欠陥車ではありませんので、ごく普通に走ることは(当たり前ですが)可能でしたし、極端に悪い部分があったわけでもありません。

 ですが「小さな高級車」を標榜すると、どうしてもライバルは国内の大衆ハッチバック各車ではなく、ドイツのフォルクスワーゲン ゴルフやBMW 1シリーズあたりになりますので、ユーザーはそれら欧州車とブレイドを直接比較して考えることになります。

 また途中から登場した280psの3.5L V6エンジンを搭載する「ブレイドマスター」に至っては、3.2LのV6エンジンを搭載したイタリアのアルファロメオ147GTAという本格ホットハッチなどとも比べられました。

 そういった欧州製ハッチバックと比べてしまうと、トヨタ ブレイドの足回りというか、走りの全体的な感触は、決してホメられたものではありませんでした。

エンジンはオーリスが直列4気筒の1.5Lと1.8Lを用意するのに対して、ブレイドは2.4LとV型6気筒の3.5Lを搭載。全高は1500mmを超え4名乗車にも適した。車名のブレイド(BLADE)は刃(やいば)を意味し、「人を魅了する鋭さを持ったクルマ」の意味を込めて付けられた

 エンジンパワーはそこそこあるのですが、それを操るステアリングやサスペンションに今ひとつ締まりがないため、速度を上げる気になれない……というのが正直なところだったのです。

 またエンジンパワーといえば、2007年8月に追加されたブレイドマスターの3.5L V6エンジンは「最高出力280ps!」という触れ込みでしたが、実際に乗ってみると「……これ、本当に280psも出てるの?」というニュアンスの“カタログ番長”でした。

 このあたりも、ブレイドという車のイメージが悪化した遠因だったかもしれません。

 いずれにせよトヨタ ブレイドは、当然の道理として不人気車となり、そして当然の道理として「廃番」になった車だと言えます。

 この時期のトヨタは、ソツのない車を作らせたら上手だったのかもしれませんが、「走りの良さを標榜する何か」を作るのは不得手なメーカーだった――ということなのでしょう。

 しかしその後、時代もトヨタも変わりました。豊田章男社長の号令が効いたのか、新型ヤリスなどの「走りの面でもグッとくる車」が数多く登場しています。

 ということで、ブレイドの記憶は忘却の川へと完全に流し去り、「新しいトヨタ車」たちに期待していくというのが、自動車愛好家としての生産的な姿勢であるはずです。

■トヨタ ブレイド 主要諸元
・全長×全幅×全高:4260mm×1760mm×1515mm
・ホイールベース:2600mm
・車重:1490kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、2362cc
・最高出力:167ps/6000rpm
・最大トルク:22.8kgm/4000rpm
・燃費:13.4km/L(10・15モード)
・価格:277万2000円(2008年式G バージョンL )


●【画像ギャラリー】国内専売車のためお買い得な一面も! トヨタ ブレイドの画像をギャラリーでチェック!!!

こんな記事も読まれています

マツダの「2シータースポーツカー」何が魅力? めちゃ楽しいMT搭載&軽量オープンがスゴい! 登場35年も変わらない「楽しさ」とは
マツダの「2シータースポーツカー」何が魅力? めちゃ楽しいMT搭載&軽量オープンがスゴい! 登場35年も変わらない「楽しさ」とは
くるまのニュース
トヨタ新型「“最小級”ミニバン」発表! “大胆”顔&5速MT設定もアリ! アンダー250万円の「ルミオン」印に登場
トヨタ新型「“最小級”ミニバン」発表! “大胆”顔&5速MT設定もアリ! アンダー250万円の「ルミオン」印に登場
くるまのニュース
2024年初出走のソルド「マシンに戻れてとても嬉しい」/WRC第5戦ポルトガル 事前コメント
2024年初出走のソルド「マシンに戻れてとても嬉しい」/WRC第5戦ポルトガル 事前コメント
AUTOSPORT web
自転車のマナー最悪! 2026年までの導入じゃ遅すぎる! 反則金を支払う青切符の導入を早くせよ! 
自転車のマナー最悪! 2026年までの導入じゃ遅すぎる! 反則金を支払う青切符の導入を早くせよ! 
ベストカーWeb
カワサキ「Z900RSカフェ」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
カワサキ「Z900RSカフェ」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ
新車購入時、「欲しいクルマ」「高く売れるクルマ」どちらを選ぶべきか? 人気中古車高騰のいま考える
新車購入時、「欲しいクルマ」「高く売れるクルマ」どちらを選ぶべきか? 人気中古車高騰のいま考える
Merkmal
魅力的な電動スポーツカーだ!!! 伝統の[MG]から復活への回答!! ゲームの世界から誕生した2シーターオープン[サイバースター]日本メディア初試乗!
魅力的な電動スポーツカーだ!!! 伝統の[MG]から復活への回答!! ゲームの世界から誕生した2シーターオープン[サイバースター]日本メディア初試乗!
ベストカーWeb
イジりすぎてもはや原型がわからん! [フルモデルチェンジ]が凶と出た!! やらかしカー4選
イジりすぎてもはや原型がわからん! [フルモデルチェンジ]が凶と出た!! やらかしカー4選
ベストカーWeb
ロングシートは二段ベッドにもなる! 大人数で楽しめるトヨタ ハイエースがベースのキャンパー
ロングシートは二段ベッドにもなる! 大人数で楽しめるトヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
[新型ムーヴ]発売まだなん!? 発売するなら[N-BOX]窮地か!? だってスライドドアだし軽最強の先進装備なのよ
[新型ムーヴ]発売まだなん!? 発売するなら[N-BOX]窮地か!? だってスライドドアだし軽最強の先進装備なのよ
ベストカーWeb
1本になったりしたけど…21世紀の技術をもってしてもダメ!? ワイパーは未来永劫今のままなの!?!?
1本になったりしたけど…21世紀の技術をもってしてもダメ!? ワイパーは未来永劫今のままなの!?!?
ベストカーWeb
バニャイア、一歩先を見据えて別セッティングに集中「低グリップのトラックに焦点を当てた」/MotoGPヘレステスト
バニャイア、一歩先を見据えて別セッティングに集中「低グリップのトラックに焦点を当てた」/MotoGPヘレステスト
AUTOSPORT web
悲願のF1初優勝。レースマネジメントに長け「成熟した」ノリスをマクラーレン代表が手放しで称賛
悲願のF1初優勝。レースマネジメントに長け「成熟した」ノリスをマクラーレン代表が手放しで称賛
AUTOSPORT web
海外からも注目のファンイベント「ルノーカングージャンボリー2024」10月27日開催
海外からも注目のファンイベント「ルノーカングージャンボリー2024」10月27日開催
グーネット
激変の空力パーツにも「変わらないと感じた」と中上。ホンダ勢4人に不評のバイクの次の一手は/MotoGPへレステスト
激変の空力パーツにも「変わらないと感じた」と中上。ホンダ勢4人に不評のバイクの次の一手は/MotoGPへレステスト
AUTOSPORT web
マセラティ 新型「グランカブリオ トロフェオ」国内オーダー開始!価格は3120万円から
マセラティ 新型「グランカブリオ トロフェオ」国内オーダー開始!価格は3120万円から
グーネット
トヨタから登場の[3輪車]!? しかも100万円って安すぎ!!!! 2025年登場濃厚のリーン3
トヨタから登場の[3輪車]!? しかも100万円って安すぎ!!!! 2025年登場濃厚のリーン3
ベストカーWeb
三菱「ギャラン」に「ランエボ」「パジェロ」のラリーカーが勢揃い! 篠塚建次郎氏の追悼展示は三菱モータースポーツの歩みでもありました
三菱「ギャラン」に「ランエボ」「パジェロ」のラリーカーが勢揃い! 篠塚建次郎氏の追悼展示は三菱モータースポーツの歩みでもありました
Auto Messe Web

みんなのコメント

13件
  • 世の中がエンジンのダウンサイジング化に向かう過渡期ということもあって、狙いが外れたのが大きいですね。
    室内は当時のトヨタ流の高級車然としていて、なかなか快適だったが、乗り心地、いわくつきのエンジン、CVTの変速感など走りに関する不評を拭い去ることが出来ませんでしたね。
  • 日本でこの手のクルマに2.4とか3.5だの需要あるわけない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

230.0330.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

20.298.0万円

中古車を検索
ブレイドの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

230.0330.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

20.298.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村