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自在に泳ぎまわるターコイズグリーン!父から息子へ託された1996年式ポルシェ911カレラ(993)

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自在に泳ぎまわるターコイズグリーン!父から息子へ託された1996年式ポルシェ911カレラ(993)

2月某日…都内某所。

石畳の小径に、深海のような色合いの美しいタイプ993と呼ばれるポルシェ911(993)がやってきました。

1989年式ローバーミニに愛を捧ぐ。モノを大切にする30代男性の等身大なカーライフ

ボディカラーの名称は“ターコイズグリーンメタリック”。

1996年製のポルシェ911カレラ(以下、993)から降りてきたのは、なんと31歳という若さのT.K.さん。

逆算すると、彼が小学校低学年のときに製造された空冷ポルシェということになりますが、いったいどのような経緯でこのクルマを手に入れるに至ったのでしょうか?

T.K.さんがクルマに目覚めたきっかけとは?

もともとこの993は、スポーツカー好きのお父様が所有していたクルマです。
子供のころから、当たり前のように実家にあった存在ですが、最初にクルマに目覚めたきっかけは、別段この993というわけではなかったそう。

「大学生のときに、クラスメイトが親のベンツに乗ってモテていたんです(笑)。ならば自分は…とBMWの購入を決意しました。けれど予算的にボロボロの318is(E36)しか買えず、しかもマニュアルというオチ…。でもあとから、このクルマは“ドイツのハチロク”と言われるほどの名車であると知り、さらに購入先が“走り系”のショップだったこともあり、そこから間違った方向(?)へと目覚めてしまいました」

キャンパスが郊外だったこともあり、思いのほか大学にはクルマ好きが存在したようで、318is購入後は自然と“モテ”より“走り”へ目的がシフトしたというT.K.さん。

仲間が増えるにつれ、おすすめのコースを教えてもらうようになり、バイトをしてはショップに入り浸り、そして走りに…という生活が定着したのだとか。

「車高調も入れて、内装もドンガラにして…。1300kgあった車重が1100kgくらいになりましたね。今思えばよくやったなぁと(笑)」

T.K.さん、学生ながらにしてさっそく気合い満々です!
ちなみにこの318is生活ですが、モディファイのほかにも、実は同モデルを4台乗り換えるなどもしており、バイト代はほとんどクルマに費やしていたそう。

「少しでも程度のいい個体が見つかるたびに乗り換えました。なるべく高く売れるようにオークションに出品して…。新しく買った車両に装着していたパーツも全部移植して、このころはそういう作業も仲間に手伝ってもらって自分でやっていましたよ」

大学時代のエピソードは今から約10年前の話ですが、当時でもすでに『若者のクルマ離れ』なんていうことが囁かれていた時代。

T.K.さん自身、大学の立地が都市部だったらここまでクルマにのめり込むことはなかっただろうと語っていました。

それに加えて、きっとお父様がスポーツカー好きだったという潜在的な記憶も影響していたのかもしれません。

レース活動に励んだ20代


(写真提供:T.K.さん)

そこからT.K.さんのカーライフはますますディープになっていきます。

クローズドコースにも興味をもつようになったT.K.さんは、ある日サーキットでワンメイクレースの練習走行をしていたオーナーさんと知り合うことに。

「オーナーさんに話しかけて、このクルマは何ですか?って尋ねてみたんです。そうしたらこれは“ワンメイク”っていう、ナンバーもついていなくて、レース専用の“N1車両”だということを教えてもらって…『何なんですかその世界は!』と衝撃を受けました」

さっそく興味を持ったT.K.さんは、ご自身もワンメイクレースの世界へと足を踏み入れたのです!

まずは学生時代に慣れ親しんだBMWのカップから、トヨタ・スターレット(EP82)やホンダ・シビック(EK9)のワンメイクレースなどなど…就職後も人生のすべてを投げ打つ勢いで、レース活動に投資する日々が続きました。勤務先でも、レース活動の機会がある自動車部に入部されたそう。

車両はレンタルで、ショップさんにも多々助けられてはいたようですが、毎回新品のタイヤを用意したり、油脂類も交換したりと、このころはお金もすごくかかったのだとか。

ここで国産車の名前も挙がりましたが、T.K.さんは輸入車に限らず国産スポーツもお好きなのだそう。

「一時期は318isを手放して、ホンダ・S2000(AP1)に乗っていたこともありました。就職してから今も、993ともう1台スバル・レガシィを所有しています」

ちなみに卒業後の進路は?…と尋ねると、サスペンション部品製造の会社に就職されたとのこと。もうどっぷりとクルマに浸かってしまったようですね(笑)。

“好き”を仕事にすると、どうしても葛藤や嫌いになってしまいかねない部分も垣間見るもの。それでもT.K.さんとクルマの関係は、そんな障壁をも乗り越えられるほどの強い絆があったに違いありません。

ひとまずレース活動は27歳のころにほぼ見切りをつけたそうなのですが、それまでは休日はもっぱらレース、寝る間も惜しんでクルマのことばかり考えていたようで、実に濃厚な20代を送られていたことがうかがえました。

そしてついに993オーナーに!


自己所有・レースカー・走り仲間のクルマも含め、国内外さまざまなクルマを経験してきたT.K.さん。

20代半ば過ぎ、ついにお父様からターコイズグリーンの993カレラを譲り受けるときがやってきました!

「大学時代の話に戻りますが、初めて仲間と首都高へ出かけたとき、辰巳や芝浦のパーキングエリアにはたくさんのポルシェ集団がいたんです!あの日のことは今でも忘れられない思い出ですね…。その後2014~2015年ごろ“空冷911ブーム”が来たりもして“あれ?よく考えたらあのクルマ実家にあるじゃん!”って思ったんですよ(笑)」

学生時代は、どちらかというと改造し尽くされた派手なクルマがお好きだったT.K.さん。

当時お父様が所有していた993は、定期的にエンジン回りの整備をしているくらいでまったくのドノーマル。

ゆえにそこまであまり関心がなかったみたいなのですが、帰省の際に「ちょっと乗ってみるか」くらいの気持ちで走らせたら思いのほか面白いと感じたそう。
…と同時に、経年劣化によってスポイルされてしまっている部分があることにも気が付きました。

「過去に乗っていた318isなどと比較して、各部ブッシュやサスペンションの劣化が目立っていたんです。経験上、チューニングの基礎はリフレッシュだと学んでいたので、手始めにポルシェ純正部品を使ってアーム・サスペンション・マウント類をリフレッシュしたんです。かつ、サーキット向けに仕上げたかったので、純正部品は993RSのものを選択しました。自分でお金をかけてあれこれ勝手にやってしまいましたが、特に父も何も言ってきませんでしたね(笑)」

こうしてお父様の993が“なんとなく”な流れですっかりT.K.さん仕様に大変身!

ハッキリと譲られた瞬間はなかったそうですが、きっとお父様も息子さんが自分のクルマに愛着を示してくれたことが嬉しかったのではないでしょうか?

こうして2世代目に受け継がれることになった993は、その後T.K.さんの人生を導いてゆく存在となるのです…。

ポルシェを通じて変わったこと

現在、T.K.さんが完全に993を維持するようになって、約5年が経ちました。
その間、生活や心境に変化が起こったりしたことはあったのでしょうか?

「なんと仕事がクルマ屋になりました(笑)。最初に就職したサスペンション製造部品会社は6年間在籍していたのですが、もっとエンドユーザーに接する仕事がしたかったのと、すっかりポルシェが大好きになりすぎて…。今までクルマは何台か乗ってきましたが、人の仕事まで左右させるクルマはなかなかないのではと思います」

これは…驚きです!!

人が生活をしていくうえで、ましてや男性にとって、転職は簡単に決められる事柄ではないはず。
しかし、クラシックポルシェの魅力をより多くの人へ伝えたいという想いを胸にしたT.K.さんにとって、これこそ“天職”たるものだったのかもしれません。

「最新のポルシェは最先端のテクノロジーが詰まっていて、パワフルです。ですが、空冷時代の古いポルシェにしかない味もいっぱいあると思うんです。エンジンの鼓動や、電子制御がないことにおいてはクルマと対話して走らせる醍醐味がありますし、乗り出す前の“暖機”も、最新式のクルマにしか乗ったことのない人にはあまり馴染みのない儀式なんじゃないでしょうか。それからポルシェの強みとして、部品供給の長さがあげられます。あくまで『走る』ことに特化したものなので、あまりにも古いモデルの内装などは廃盤してしまっているモノもありますが、いまだに356のドラムブレーキも入手できたりしますからね!90年代以降のモデルに関しては、ほぼ揃うと言ってもいいでしょう」

…356って、約70年前のクルマなのに…?!

今でもオフィシャルで部品が用意されているなんて…筆者も思わず感嘆の声をあげてしまいました!
T.K.さん自身、純正部品の対応年数や供給の充実ぶりにはいたく感心していて、この点もポルシェブランドに惚れこんだ要因なのだそう。

パーツの充実性に加え、T.K.さんの濃厚なカーライフによって培われた“自動車”に対する知識と経験が合わされば、これ以上に頼もしい存在はないでしょう。
きっとこれからも、T.K.さんに導かれ、晴れてクラシックポルシェオーナーとなる方々がたくさん増えていくのですね!!

現在他に気になるクルマって、ありますか?

ワンメイクレースでのフィードバックから、“クルマを自分に合わせる”ことよりも、“自分がクルマに合わせた走りをする”ということを学んだというT.K.さん。

そんな若くして経験豊富な彼に、自社・他社問わずで気になるクルマを3つあげてもらうことに。

「まずは再びいつかBMW 318isに乗りたいですね、またドンガラにして(笑)。それからポルシェ911カレラRS(964RS)、これは自分が思う最高のポルシェです。憧れや究極といった存在ならば、ランチア デルタ・HFインテグラーレEVOでしょうか」

インテグラーレ エヴォルツィオーネときました…。やはり走りの魂を宿すオトコなだけあって、セレクトがどれもとがっています(笑)。

それでも今の愛車である933は『自分のすべて』と語ってくれたT.K.さん、今後は3代目に受け継がれていったりなんかしてもおもしろいな…とひそかな夢を抱いているそう。

そのころには993も完璧クラシックの域に入っていることかと思いますが…。英才教育・部品供給共々バッチリですね!

取材後記 ~ターコイズグリーンの回遊魚~


インタビュー中、他にも国内外さまざまなスポーツカーの名前で盛り上がり、筆者の悪ノリや脱線クルマ談義にもお付き合いくださったT.K.さん。

レース活動の際のエピソードを語ってくれた際も、「カート上がりでもっと若いころからドライビングに慣れ親しんだ人がたくさんいて、20代で始めた自分は遅い方」と、やや謙遜気味だった彼。

31歳という年齢を加味すれば、一般的な見解でいえばドライビング歴はまだまだ若手の部類に入るのでしょう。

しかし、公私ともどもたくさんのクルマを経験してきたT.K.さんの会話からは、ジオメトリや車両コンディションの見解など、決して机上の空論なんかではないセンスの高さが伺えました。

図々しくも助手席体験をさせていただいた筆者が感じ取ったのは、T.K.さんとクルマはまさしく人馬一体であったこと。
一見、雄々しく駆っているようでありながら、そのアクセルワークはとても繊細で、まるで993が気持ちよさげに泳いでいるかのよう!

今でも目をつむると、あの時のリズム感と躍動感が蘇る……

深海のようなボディカラーに包まれて、大海原を回遊した心地よさをしばらく忘れられそうにありません。

オーナープロフィール


お名前: T.K.さん
年齢:31才
職業:会社員
愛車:ポルシェ 911(993カレラ)
ミッション:6速MT

[ライター・カメラ/細谷 明日葉]

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みんなのコメント

2件
  • 1996年式カレラって、「父から子へ」っていう美談としては年季・歴史が足りないよなあ。と思ってたら何のことはない、この31歳男子が大学生の時に家にあったっていうんだから、親父だって⒑年落ち中古車として持ってただけの可能性が高い。

    記事タイトルから「1996年から長年大切にされていた美車、ついに父から子へ引継ぎ!」のように印象操作されてるけど、「いい歳した社会人が、親の乗ってた中古車くすねました」ってだけのしょーもない話。
  • 申し訳ないが金持ちのボンボンの自慢話にしか思えなかった
    大学生は勉強するのが仕事だ
    私も若い頃はレースをしていたが、随分と違うもんだなぁと思った
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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