昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「日産 マーチターボ」だ。
日産 マーチターボ(K10型):昭和60年(1985年)2月発売
1982年(昭和57年)10月に登場した初代マーチは大ヒットとなった。リッターカーながら走りの方もなかなかのもので、全日本ラリー選手権でもクラスチャンピオンを獲得する実績も残した。ただ、そのエンジンはお世辞にもパワフルとはいえず、当時のライバルであるシャレードやカルタスがターボ化するなどして、立場は厳しくなったのも事実。そこで日産が1985年2月に投入したのが、マーチターボだ。
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搭載されるエンジンはNA(自然吸気)のマーチと同じ1L 直4 SOHCのMA10型。そこに日立製MT97ターボを装着した結果、NAエンジンから28psアップの85psという最高出力を発生した。当時のコンパクトカークラスのターボ車では、燃料供給装置はキャブレターが主流で制御が難しかった。だが、日産は上級車と同じ電子制御のECCSを使用したのもポイントで、これによってよりターボの性能を十分に生かした。排気系では、エキゾーストマニホールドのデュアル化や大径フロントパイプ、メインマフラーの構造変更により、性能とともにサウンドもチューニングしている。
マーチターボは3ドアハッチバックの最上級スポーティ版として設定された。ボディ前後にはエアダム一体式の大型エアロスポーツバンパーが装着され、フロントには丸型フォグランプが埋め込まれた。見た目でもNAのマーチとは一線を画すとともにCd値も0.37と良好なものだ。
サスペンションは、フロント:ストラット/リア:4リンク式とNA車からの引き継ぎだが、ターボ車のリアにはスタビライザーを装着してロールを抑制している。スプリングレートやブッシュを適正にチューニングすることにより、街乗りからワインディングまで安定した走りを実現している。
ブレーキは、前輪はベンチレーテッドディスクで、パッドにはセミメタルを採用し制動力と耐フェード性をアップ。リアはリーディングトレーリング式ドラムだが、車重の軽いマーチでは十分だった。タイヤは165/70HR12が標準装着だが、8ビート感覚を表現したというアルミホイールと175/60R13のポテンザRE86装着車も設定した。
実際に乗ってもスポーティな印象が際立つものだった。パワーフィールは洗練されているとは言いがたいが、それなりにパワフルでアクセルを踏み込めばグンッと押し出される感じ。ただ、ダート路などを走るとミッションマウントの問題なのかシフトポジションの位置が曖昧になり戸惑うこともあった。操縦性はNAのマーチの美点を引き継ぎクセがない素直なものだ。ブレーキを残し気味にして若干オーバースピードでコーナーに進入するときれいにテールが流れる。FFだけにさすがにドリフトをキープするのは難しいが、それでもドライビングの基礎を学ぶにはパワー、サイズと合わせてちょうどいい感じのクルマだった。
マーチは自動車レースを趣味とする人気アイドルの近藤真彦をイメージキャラクターにしたことで有名だが、マーチターボは日産が近藤のために作ったマーチスーパーシルエットのイメージとも重なり、当時の若者層に大いに注目され人気を集めたクルマとなった。
日産 マーチターボ G 主要諸元
●全長×全幅×全高:3730×1570×1385mm
●ホイールベース:2300mm
●重量:710kg
●エンジン型式・種類:MA10T型・直4 SOHCターボ
●排気量:987cc
●最高出力:85ps/6000rpm
●最大トルク:12.0kgm/4400rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:165/70HR12
●価格:114万5000円
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みんなのコメント
出た当時、昭和があと4年も無いとは思わなかった。